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夜のレッスン場
もう帰ったは仁人の姿を、勇斗は奥の椅子に見つけた
机に突っ伏すように眠っている
そっと近づき、その肩にブランケットを掛ける
触れた指先から、どうしようもない愛しさと同時に、胸の奥に広がる痛みがこみ上げる
勇斗は自分の想いを伝える勇気がなかった
仁人の笑顔を壊すのが怖かったから
けれど最近、仁人が別の共演者と笑い合う姿を見かけるたび、どうしようもなく胸が締め付けられる
眠る仁人の横顔を見つめながら、勇斗は心の中で呟いた
「……好きだよ。」
その時、まぶたを震わせて仁人が目を開けた
「……勇斗?」
かすれた声でそう呼ばれ、勇斗は慌てて笑う
「ごめん、起こしちゃった」
「ううん……。勇斗、今……なんか言った?」
仁人の瞳がまっすぐにこちらを覗き込む
勇斗は喉が詰まりそうになった
言いたい
けれど言えない
その沈黙に、仁人は寂しげに微笑む
「……なんでもないなら、いいよ」
仁人はそう言って、再び目を閉じた
勇斗は胸の奥で叫ぶように思う
――本当は、君に全部伝えたいのに
かけられなかった言葉が、夜の静けさに溶けていった