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それからも壱馬は、玲於が心を寄せた相手を、慈しもうとした存在を執拗に狙い
誘惑し、寝取っていったという。計5人も。
奪われたのは恋人という形あるものだけじゃない。
玲於は人に対する信頼も、自尊心も、娯楽として踏みにじられたということだ。
「俺の周りの人間を、片っ端から食い荒らしてマウントを取るのがあいつの趣味なんだよ」
玲於がそこで一度言葉を詰まらせた。
喉の奥で何かが閼伽えるように、いつもの飄々とした口調が嘘のように途切れ途切れになる。
「だから大学に入ってから逃げるようにここへ来たけど……まさかあいつがそんな姿でまた近づいてくるなんて」
玲於は白くなるほど拳を握り込み、俺の肩を壊しそうなほど強く抱きしめてきた。
その指先は凍えるように冷たく、震えを隠しきれていない。
「霄まで穢されたら、俺、本当に気狂うと思う……だから、お願いだからもう二度と会わないでほしい。分かってくれるでしょ?」
その、祈りにも似た切実な懇願。
俺の胸は締め付けられるように痛んだ。
玲於がなぜ、俺の行動を把握したがるのか。
飲み会で少し遅れただけであんなに理性を失うほど怒ったのか。
その歪んだ執着の根源にある、底無しの恐怖と傷跡が、今ようやく腑に落ちた。
「わ、分かったよ。会うの辞めるっていうか、もう配信も見ないし……まず俺そんな尻軽じゃないし! 寝取られるとかないから!」
「霄くん…」
「それに、推しは推し、彼氏は彼氏だし、そんな最低なやつならもう関わる気ないし、玲於のことしか見てないから」
俺は必死に頬を膨らませて抗議した。
玲於の不安を少しでも払拭したくて。
玲於は数秒間、俺の顔を凝視していたが
やがて少しだけ表情を緩め、憑き物が落ちたようにふっと安堵の息を吐いた。
「ならいいけどさ……。霄くん無防備だし、本当に心配なんだよ」
そう低く呟きながら、玲於は俺の腰に手を回し、磁石のように自分の方へと引き寄せる。
そのまま俺の顎を指先で軽く掬い上げると、吸い付くように、貪るように唇を重ねてきた。
「んんっ……ぅ、だ、だいじょぶだって……んっ」
甘く、それでいて激しい独占欲が溶け出したようなキス。
俺の口内を支配し、所有権を主張するような熱い感触。
「霄くんだけは……俺以外にこんな顔見せちゃダメだからね」
玲於の熱い吐息が肌を打ち
俺を完全に支配しようとする視線に意識が真っ白に染まりかけた
その瞬間だった
「──ふーん。それが今のレオの彼氏くんなんだ?」
背筋が凍りつくような、聞き覚えのある低く甘い声。
それが「あの男」の声だと脳が認識した瞬間、玲於の体が石のように硬直した。