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#切ない
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※こちらの作品はBL要素があります。
苦手な方は閲覧をお控えください。
約束の日は思っていたよりもあっさり来た。
放課後、いつも通り隣を歩きながら、でもどこか落ち着かない。
理由なんて分かってるのに、考えないふりをしていた。
「緊張してんの?笑」
ふいに笑われる。
「してねーし」
「顔に出てる」
「出てない」
即答すると、くくっと喉の奥で笑う音がした。
「まぁいいけど。別に大したことしねーし」
──その言い方が少し引っかかった。
大したことって、何だよ。
聞き返そうとして、やめた。
家は、思っていたよりも普通だった。
いや、”普通”すぎて逆に違和感がなかった。
「適当に座ってて」
「お邪魔します……」
靴を揃えながら、妙にきごちなくなる。
他の女の子はどうなったのかと考えていると、
リビングに通され、ソファに座る。
少しして、飲み物を持って戻ってきた。
「ほい」
「ありがと」
ペットボトルを受け取ると、指先が一瞬触れた。
それだけで、変に意識してしまう自分が嫌になる。
「なんかさ」
隣に腰を下ろしながら、ぽつりと呟く。
「お前って、わかりやすいよな」
「は?何が?」
「顔」
俺…そんな顔に出てるか…?
「だから出てないって」
「出てるって」
そう言って、こっちを覗き込む。
距離が近い。
思わず息を止めた。
「……何」
「別に」
目を逸らした瞬間、軽く顎に触れられて、
視線を戻される。
「な、に…」
「ほんと、わかりやすい」
その声はいつもの軽さと少し違っていた。
冗談みたいなトーンじゃない。
逃げたいのに、体が動かない。
「嫌?」
そう聞かれて、答えに詰まる。
嫌かどうかじゃない。
“好きなやつに触られてる”って事実が、全部を鈍らせる。
「……別に」
やっとの思いで絞り出した言葉は、 酷く曖昧だった。
「ふーん」
興味なさそうに返すくせに、距離は離れない。
「優しいなお前」
「何が──っあ…、」
言葉を続けている最中に押し倒された。
「お前、たまに可愛いとこあるよな」
「そういうん、嫌いじゃない」
手が色々なとこに触れられ、思わず声が漏れる。
「……っぁ」
その後のことは、はっきりとは覚えていない。
優しかった気もするし、雑だった気もする。
大事にされているようで、そうでもないような曖昧な感覚。
ただ一つ覚えているのは、
「これでいいんだ」
って、自分に言い聞かせていたこと。
好きだから。
好きな人に触れてもらえたから。
それだけの理由で、全てを納得させようとしていた。
帰り道は1人だった。
「またな」
その一言だけで、いつも通りに戻される。
さっきまでの距離も、空気も、何もかもが嘘みたいに。
家に着いて、ベッドに倒れ込む。
身体が重い。
少し熱っぽい気もする。
でもそれよりも、
胸の奥が、やけに空っぽだった。
「……好き」
小さく呟いた声は、誰にも届かない。
あの時間が”特別”だったのは自分だけで。
あいつにとっては、きっと──
その答えを考えるのが怖くて、目を閉じた。