コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
インタビューをどうやってやり過ごすか。降って湧いてきた試練の時にスタンピード討伐よりも大幅に頭を悩ませていたが、
防衛部隊の突撃準備が出来たとの事で、一旦黄泉戦人達を戻そうと思ったが、思い直して全員整列させる。
静まり返った後、メガホンを取り出して、
「傾聴!!これより敵陣に突入後、諸君らに戦働きをしてもらう訳だが、此度の戦にて、皆の者の働きに応じて褒賞を出すことを確約する!!!敵方の化生共を討伐すれば、魔石を始め、様々な宝物が手に入る事は既に承知の事と思うが、この宝物を現世の価値に換算し、100円毎に、今日より黄泉の国で流通する1ペリカ紙幣を支給するものとする!さらに!追加褒賞として1000円分で11ペリカ!
10000円で150ペリカの支払となる!尚、此度の戦にて落穂拾いの類はその一切を認めず!討伐の記録は日本国防衛軍にて行われる故、皆の武功、戦働きは過不足なく記録される!
そして!!!今回の敵大将首を挙げたもしくは討伐に著しい功有りと認められる者には100万ペリカ分の価値がある現世1日外出券も合わせて支給する!!!!!(尚、これに関する軍監:俺)」
ウオオオオオオォォォォォ!!!!!!!!!!
大いに士気が上がっているが、この瞬間彼らは俺を頂点とした小野麗尾経済圏に組み込まれた事をどれだけ理解しているのだろうか。
現在のペリカの使い先は、本日開店予定の千利休(タナカ)師匠が運営する魚屋(トトヤ)のみであり、その商品の仕入元は無論俺である。
彼らの労働の成果を余す所なく奪い尽くす悪魔的な発想……さす千。世界を黒一色に染め上げんとするその黒さは俺程度では及びもつかないところにある。言葉にしてみると師匠の悪の首領感が半端ない。
俺如きにできるのはせいぜい師匠の操り糸に合わせて身を躍らせる程度である。
鬨の声が収まった辺りで彼らとヒメちゃん達を戻す。
他のモンスター達には現状維持で、臨時の現場指揮官にはエインセルとバルクさんを任命した。
丁度良いタイミングでゲート突入班の準備が終わった様で、冒険者証の通知欄に、俺の配属先が贈られてきた。
”Eランク冒険者 小野麗尾 守様はレッドスプライト号への配属になります。”
おい、ここは日本で南極じゃないし、行先はシュバルツバースじゃなくてジャンジャンバリバリデーモン吐き出しまくっているゲートのはずだが!?……あ、よく考えたら大して変わらねーや。
城壁の中にトレーラーで運ばれていた巨大な構造物の外装が外されると、そこには例のデザインの大型兵員輸送車が現れた。
例によってドワーフ達が騒ぎ出すが、今はそれどころではない。
聞かされた作戦によると、4機一組でゲートへほぼ同時に侵入して、ある程度の広さのある場所を確保して人員展開してから攻略を開始する、とのことだ。スタンピードを引き起こしたダンジョンはインスタンス化しないため、バラケて入っても中で合流できるらしいが、モンスターによる分断策への警戒と、過去には出入口付近での高ランクモンスターの待ち伏せもあったらしく、重装甲車による強硬突破を行うそうだ。
車体後部の兵員搭乗口から中に入ると、既に搭乗していた人達が一斉にこっちを向いた。……コッチミンナ。
そして示し合わせたかのように、合わせてまた別の方向を向く。
面倒なので、適当な空いてる席に腰掛けようとしたら、隣の人がビクッ!と反応した。不思議だなー……
バックパックを外して座席に腰掛けてシートベルトを締めて車内を見渡すと、座席20人分の内、10人位が埋まっており、5人くらいは防衛軍の正式装備のデザインの装備を着ていたが、一人だけデモニカスーツデザインの装備を身に着けているのが居て、明らかに浮いている。
……冒険者組の中でレッドクローのコスプレしている俺に人の事は言えないが。
余った席も埋まり、兵員搭乗口が閉じられると、部屋前方に備えつけられていた大型スクリーンにアーサー的なサムシングが映し出された。
スクリーン横のスピーカーから、
「本日は対IFL用戦闘車両レッドスプライト号へのご搭乗、誠にありがとうございます。私、当レッドスプライト号に搭載されております車両制御AI”アーサー”と申します。当機は間もなく発車時刻を迎えますので、ご搭乗された皆様の安全のため、シートベルト装着の再度のご確認をお願い致します。
……それではお時間になりましたので本機は出発いたします。事前の説明通り、
1号車 レッドスプライト号
2号車 ブルージェット号
3号車 エルブス号
4号車 ギガンティック号
の4台編成でゲートへの突入を敢行致します。
当機は編隊の最前列を預かる都合上、他の車両より防御性能を高めに設計されており、Bランクモンスターの攻撃にも耐え、乗員を守れる事が”見込まれて”おりますので、乗員の皆様方に置かれましては、ご安心を」
”見込まれて”って部分に安心感を感じられなかったが、それは……
「それでは発車します」
飛行直前でエンジントラブルを起こした飛行機のネタを思い出したが、何をするにももう遅い。
大型スクリーンの映像がアーサー的なサムシングから車外のカメラの映像に切り替わり、周囲の様子が窺えるようになっていた。
後部には同型の装甲車が続いて3台付いてきているのが確認できた。
そして、前方のゲートから出てきた中型のデーモン型モンスターを轢き潰しながら突入すると、
そこは雪国……だったらまだ良かったんだが。
ホラゲとかエイリアン系サムシングの背景で見かけるような不気味な肉壁で囲われている広場の様な場所だった。
デモニカさんが席から立ちあがり、
「これより、スタンピードダンジョンの制圧を開始します!防衛隊隊員が先行して近辺の安全の確保をしますので、協力者の皆様はまだ車内で待機をお願いいたします!」
後部ハッチが開き、デモニカさんを先頭に防衛隊の皆さんが降りていく。
程なくして、到着した残り3台からも防衛隊隊員が降りてきて、広場の安全が確保された様で、車内の冒険者に声が掛かり、降りてみたのだが。
足を踏み出してダンジョンに降り立った時、グチャッという肉のような何かを踏みつぶした感触が防具越しに伝わり、思わず立ち止まる。
お隣さんも同じだったのか、二人して列の進行を妨げてしまった。
前の人何やってんだ、遅いなーとか思ってごめんなさい。これは止まるわ……
お隣さんも我に返ったのか慌てて先に進む。
血管の様な蔦の様な何かに足を取られそうになりながら前の人に追いつくと、防衛隊隊員のデモニカさんX4が冒険者の振り分けを行っていた。
デモニカさん、各車両に一人ずつ配備されていたのかな?
ランク・クラスを判断基準に振り分けていたようで、俺は後方支援に回されそうだったが、黄泉戦人を展開し、何とか先行調査班に潜り込むことが出来た。
その場にいた誰もかれもが俺に何か言いたげではあったが、関わっている場合ではない。
調査開始と同時に黄泉戦人を先行突撃させる。源氏・武田騎馬隊と並走する薩人マッスィーンの群れと幕末人斬りサークルという摩訶不思議な人外集団を見送った後、残った人内の黄泉戦人に指示して他の冒険者・防衛隊員の皆様と細かいマッピング作業を進めて行く。
程なくして、最初のフロアの敵の駆逐とマッピング作業が終了。
人外集団は既に次のフロアに向かったようだが、俺は直ぐにそちらには向かわず、防衛隊隊員の人から呼び出しを受けてダンジョンの一室に向かう。
向かった先では隊員さんが二人と、泣きじゃくる舞日先輩が。
「うぐっ、ひっく。うえええええぇぇぇぇん。 小野麗尾君、小野麗尾君、二路君が、二路君がぁぁぁ!!!!!」
泣きながら壁を指差す先輩の指先を見ると、何という事でしょう!?
そこには壁に埋め込まれ肉塊と化しつつある鍵留の姿が!!!!!?????
「落ち着いてください、舞日先輩。何があったのか正確にお願いします」
助けるために必要な事です、と付け加えてハンカチを差し出すと、
「うぐっ。チーンッ(鼻をかむ音)今日の朝一で部室で次の新聞の打ち合わせを二路君としていたら窓を壊して悪魔がやってきて私と二路君を掴んでダンジョンに連れてきたっす。そしてこの部屋に入れられると直ぐに変な男がやってきて、私をジロジロ見たかと思うと、「処女なのは素晴らしいですが、こんな貧相な体では素体に不向きですねぇ」とか抜かしてくれたんで、文句を言ってやったら手に持っていた本を開いて呪文を唱えたと思ったら壁に穴が開いて中から触手が出てきて私に向かってきて……動けなかった私の前に二路君が立って、二路君が触手に捕まって壁に引きずり込まれてしまってこうなったっす。引き抜こうとしても全く動かず、私も取り込まれそうになって……」
また泣き出す舞日先輩。あ、ハンカチは処分してもらって結構ですので。
「状況は分かりました。他にダンジョンに連れ込まれた人を見かけませんでしたか?」
「悲鳴が何度か聞こえてきたけど、姿はみえなかったっす」
閉じ込められていたんだからそれはそうだろう。
そして、鍵留は。防衛隊員に、
「すみません、こうした場合の対処法等ご存じでしょうか?」
「いえ、我々もこんなケースは初めてで……」
まぁ、こんな事に何度も遭遇するような事があるとはねぇ。
「わかりました。では私の方で出来る限りの事をしますので」
そういって、この場に黄泉大毘売命の二人を呼び出す。
隊員さん達が二人を見て何故かビシッと敬礼したり、舞日先輩が土下座して拝みだしたりしたが、それは置いておいて。
「二人に相談したいんだけど、ここに取り込まれた俺の友達って助けられる?」
二人が顔を見合わせて、
「はい、「ええ、「問題」「ありません!「ないわよ
と頼もしいお言葉を。
「それじゃ、お願い。俺も何かした方が良いかな?」
「いえ、旦那様のお手を煩わせるような事は」
「そうそう、あんたはそこで待ってなさい。すぐに終わらせるから」
そういうと、二人で鍵留の身体を掴むと、
「「せ~のっ」」
と一息で上半身~腰の辺りまで引き抜いた。
「ちょっと待って!?」
引き抜かれた身体は見た所、怪我の一つも無かったが着ていたであろう制服・下着は溶けていた。
それを見て嫌な予感がした俺は、下半身を引き抜く前に、防衛隊隊員の人に、大き目の布を用意してもらい、上下を覆えるようにして貰った上で、残りを引き抜いてもらうと……
案の定と言うか何と言うか、そっちの衣服も溶かされていた上に、腰の辺りから前後に一本ずつ触手が繋がっていた。
コレハヒドイ。
時折鍵留の身体が腰の辺りでビクンッと跳ねるのが惨さを際立たせている。
流石にこの辺りの処置を女性陣に任せるわけにはいかないので、触手を真ん中あたりで切り離し、広場まで移送する。
後の事を医療班の方々にお任せすると、広場の防衛に残していた黄泉戦人の騎馬組の一隊を率いて最前線に突撃した。
ヤロウ、ブッコロシテヤル!!!!!?????
漆黒の殺意を胸に最前線に辿り着くと、そこは入り口の広場と似たような広場になっていた。
出入口は入口とは違い、反対側にもう一つある様だが、何故か動きが鈍い。
向こうに何があるのか防衛隊員の人に聞いてみると、どうやら向こう側の通路は人の肉壁で塞がれているようで、現状打つ手がないらしい。
そういう事なら、と黄泉戦人に指示を出し、広場内のモンスターを駆逐する。安全を確保した所で、
また黄泉大毘売命に肉壁からの救助活動を依頼して、被害者を保護。
被害者が翌亜琉高校の生徒だけでなく、白人種の外国人が混ざっているのが気になるが。
それはそうと道が出来たのならやることは一つ、
進軍である。
ダンジョンだの危険が危ないだの言っている場合ではない。1分1秒でも早くこのダンジョンのボスは地獄送りにしてやらねばならない。
そして見えるデーモンを全て切り捨て、辿り着いた最奥のボス部屋で俺が見た物は。
全身血塗れで蹲る池流の姿と、
それを背に庇う様に手足を広げて立っている文章先生、
そして向かい合うのは騎士鎧を着た凶人の姿だった。
雪崩れ込んだ俺達を一瞥したそいつが文章先生に向き直ると、急に笑い出し、
「フハハハハハハ!!!!!素晴らしい!!!、まさか我が祖国から遠く離れたこの様な東の果ての島国にて、彼女の器にふさわしい素体が見つかるとは!!!これぞまさに悪魔の導きと言う物!おお、ジャンヌ、我らが聖処女!貴方を神の手から取り戻し、貴方が再びこの世に生を受ける日がようやく訪れたのです!!!」
「来たれ、ソウルイーター!かの器の魂を取り除き、聖処女を迎える素体にするのです!」
などと目を開けたまま寝言をほざいてたので、左腕のクロスボウでヘッショ!して弓持ち勢に一斉射撃を命じた俺は悪くない。