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💛「……申し訳ございませんでした……っ」
恋人が路地裏で、全裸で土下座をしている。そのあまりにも希少なシチュエーションにこさめは自分の提案と言えど驚きを隠せなかった。
こんなに簡単に言うことを聞くようになるとは思わなかったのである。真っ赤な顔で瞳を潤ませ、歯を食いしばる彼を見てこさめはなんとなく不思議な気持ちを覚える。
と、同時に信じられない程の電撃が身体中巡った。怖気のような鳥肌で包まれ思考停止、余韻で体は思うように動かなかったが気づいたらスマホを構えて写真を撮っていた。
それはあまりにも一瞬の出来事だった。こさめにはよく分からなかったが、とにかくその一瞬の電撃をもう一度味わいたくなった。
🩵「じゃぁ、このままホテル行こ、?」
💛「、え、?」
彼が蚊の鳴くような震える声で嘘でしょ、と呟いたのをこさめは聞き逃さなかった。
路地裏ですら誰か来る可能性があり、そこに生まれるリスクなど計り知れないわけで、このままホテルに戻るというのはどう考えても自殺行為である。
彼の絶望的な表情に、こさめはゆるい目眩を食らった。が、酒に酔っている時のような実に愉快な気分だった。
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一体、どうしてしまったのだろう。
みことは羞恥心に襲われつつも、解決案を導き出すのに必死だった。恋人である彼を怒らせてしまった、__というよりは、壊してしまった。の方が正しいだろうか。
全裸は捕まってしまうから、と彼は自分の羽織っていた大きな黄色のパーカーを差し出し、目の前でみことの服を踏みつけた。これを着ろ、ということである。
そして今。夕暮れの人だかりの中で全裸にパーカーで彼の後ろをちょこちょことついていく。
気のせいであることを祈るが、彼の表情が今までで見たこともないくらいあっけらかんとした笑顔に見えて複雑な気持ちになった。
丈に余裕がないので油断したら見える。その焦りでいつもならくるくる回る頭もどうしようもなく使い物にならなかった。
兎にも角にも逃げたいのだが、さっきの土下座写真が何かに悪用されたらと考えるとぞっとする。さっきの彼の顔を思い出してみことはまた戦慄した。
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彼が土下座の写真を撮った音がして、何かの催眠が解けたようにみことは彼に飛びかかった。
💛「おい、いい加減にっ…!!」
🩵「おっとと、」
まわりを気にして動きが鈍いみことと違い、彼は余裕の笑みでスマホを奪おうとするみことを制した。
いつも可愛い可愛いと思っていた彼に対してこんなにも憎しみが湧いたのは初めてのことである。みことは涙目のままキッと彼を睨みつけた。がその瞬間に彼の指が自分の顎を這った。
🩵「みこちゃんの今の顔、さいこ〜…❤︎」
愛に狂ったような表情でこちらを見つめる彼に、全身から寒気がした。
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