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歌が、聞こえたのだ。

鼻歌のような、楽しげな歌が。

いつもなら「あ、なんかやばい奴がいるな」程度で見向きもしないのだが、その日は何故だか、とてつもなく気になったのだ。


思えばそれは、何かの導きだったのかもしれない。

もちろん、地獄への。


いつの間に時間が経っていたのか、モノクロの夕焼けが眩しい路地を歩く。段々と歌が近くなる。


僕はそのとき、女神を見た。


「うん?あちゃ、誰も見えないはずなんだけど…」

電柱の上で、その美しいみつあみにした金髪をなびかせる彼女。特徴的な左だけ長い横髪に、セーラー服が独特のオーラを放っている。

大きな深淵のような瞳に、手にはナイフが握られていた。

「え………」

あの、下田ラーメイと名乗った彼女に、似ても似つかない雰囲気だが、彼女だと分かった。わかってしまった。


そう、色がついていたから。


「やぁ、少年!」

ぱあっと明るく笑った彼女は、すとんとそこから地面に着地した。およそ人間ではないその動きに、僕はびくりと体を震わせる。

「こんにちは!君は誰かな?」

「え、あ、明星夜生、です…」

「へぇ!あの子!なんで私が見えるのかな?今はマスターに見えないようにさせられてるはずなんだけど…」

ち、近い。ぐいぐいと近づいてくる彼女に、僕は心臓の鼓動を抑えながら後退る。

「いや、えと…どういう…」

おろおろとしていると、彼女はにっこりと笑った。

「ま、いっか…面倒だし、見られちゃったからには死んで貰わないと!」

「え?」

高々とナイフを構える彼女。まるでスローモーションのように見えて、僕は頭が真っ白になった。え、僕死ぬの?まじで?


口が勝手に、言葉を紡いでいた。


「好きです!」

「……………………」

「……………………」

沈黙。いつまでたっても痛みは来ず、恐る恐る目を開くと、ぽかんとした表情の彼女がいた。

「………え?」

途端、彼女は真っ赤になる。つられて僕も真っ赤になる。何を言っているんだ僕は。この状況で告白とか頭おかしいぞ。

「…さすがに命乞いで告白は酷い気がするよ?」

彼女に鋭い瞳で見られ、ぐっと言葉につまる。かと思ったら、この口はまだすらすらと言葉を吐いた。

「いえ、本気で好きです。一目惚れしました。顔が良い。それに加えてタイプなんですよ。なんか全てがドストライクというか。えぇ。言い表せないものが貴女にはたくさんあってどれもが魅力的でなんかもう簡単に言うと好きです。」

僕は自分で自分を殴った。完全にあたおか野郎だ。絶対これ殺されるなぁ…。せめてあの漫画が完結するまでは死にたくなかった…。

と、僕は召される準備をしていたが 、彼女の反応は想像とは違っていた。

うつむいている。やはりそのシルエットはラーメイさんそっくりで、あの少女の本当の姿はこんな感じなんだなぁ、とやけに呑気なことを考えていた。

「……な……じ…………うん」

ボソボソと何かを呟いたあと、彼女はばっと顔を上げた。

なんとその顔は、嬉しさと輝きに満ちていた。


その瞬間、僕は彼女への恋を自覚した。


そして、彼女は衝撃の発言をしたのだった。


「じゃあ、今から君は共犯者だ!」


「…………………はい……?」



「速報です。本日午後四時頃、県立美智馬高校の男子生徒の明星夜生さんが行方不明となりました。犯人は、連続殺人事件の犯人と同一人物とされており──────」


次回【厄日と愉快な仲間達】

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