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このビルに来たことは以前にもあったのだが、兄の住む家に入れてもらうのは初めてだった
エレベーターで6階に上がり、コンシェルジュのカウンターの前を通ると、高層階住人専用のエレベーターに、乗り換えて最上階まで行く
無重力のようなエレベーターを降りると、すぐに重厚な玄関が目の前にあった
兄がドアを開けるとピンクのTシャツを着て、髪をポニーテールにした弘美さんが出迎えてくれた
途端に私は後ろめたくなった
どこにも非の打ち所がないすばらしい義理の姉・・・櫻崎家の長男を生んでくれて、父と母とも上手くやっている姉・・・
結婚して夫にこれ以上ないほど愛されて子供も産み、なおかつ仕事も順調な姉・・・・
彼女はまさしく私の理想だった
私はものすごく惨めな気持ちになり、できるなら引き返したかった・・・
でもどこへも行く所がなかった、なんとなく中へ入りずらくて、豪華な玄関で立ち尽くしていた
「あ・・・・あの・・・急に押しかけてきて・・・ごめんなさ・・・ 」
義姉の腕がそっと体に回ってきたので、私は言葉を失った
「ああっ!やっとあなたが私の家に来てくれた、もう随分前からずっと待ってたのよ 」
彼女は柔らかくベビーパウダーの匂いがした、咄嗟に私は身を引こうとしたけど、彼女が放してくれなかった
こんな風に大人の女性に抱きしめられたのは、母でも子供の頃依頼だった
急に喉が閉められ呼吸が苦しくなる、もう私は泣きたくないのに、涙が後から後からこぼれだした
彼女も私を抱きしめながら辛かったねと泣いた
この感覚を私は必要としていたのかもしれない、この人は決して私を妙な色眼鏡で見たりしない、どこまでも大切な家族として私を、迎え入れてくれるんだ・・・・