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パパイア 様より、ご先祖×ドイツ

※旧国、「赤い飴玉と魅入られた子の話」と「手がかかるほど可愛い子」必読






















5歳の誕生日、それは俺の地獄が始まった日。

ただ信号を歩いていたら、急に大きな車がぶつかってきて、両親と双子の兄が吹っ飛んでいった。

びっくりして腰を抜かしながら放心していると、目の前で倒れる3人から血が流れて、俺の足元で水たまりを作る。

怖いとか悲しいとかすら思えず、ただ困惑していたんだ。

その瞬間はハッキリ見たはずなのに、どうして3人が倒れているのかわからなかった。

「か、母さん…?父さん…?兄さん…?な、何で倒れてるの…?なんで…?」

そのうちパトカーや救急車の音が聞こえてきて、そこからは何も覚えていない。



気がついたらお墓の前で、黒い服を着た親族や召使いたちが祈りを捧げていた。

本当にわけがわからなくなって、大人の静止を無視して雑木林に飛び込んだ。

昨日まで元気だったんだって、探せばみんないるんだって、そんな夢物語を見ていた。

「1人は危ないよ、人攫いがいるからね」

隣で囁かれた気もするし、遠くから叫んでいる言葉が微かに聞こえただけのような気もする。

ただその言葉が耳に入ってきて、俺が本物の地獄へ連れ去られたのは確かだ。







躾と称した虐待の日々を送り、先祖だと名乗る頭のおかしい奴らから全てを教わった。

ある程度日を過ぎた時、こいつらが俺を欲しがって両親と兄を殺害したことも知った。

その時は本当に殺して逃げてやりたくなったけど、 13歳の時のあれがあるから、そんな気は今日まで起こしていない。

確か…そう、日本。日本だ。

あいつがあいつの先祖たちから逃げて、1ヶ月くらい現世の方で過ごしていた。

親と仲良さそうに歩いてて…何というか、殺意しか湧かなかった覚えがある。

なんとか連れ戻したのに殴られて、心底ムカつくやつだった。

というか、あの時のプロイセンも許していない。

悪いのは俺じゃなかったのに、わざわざ鳩尾に重い重い拳を叩き込みやがったんだ。

本当に息ができなくて、あそこで死ぬかと思った。

…まあ、あいつはとにかくバカだったんだと思う。

あいつらから逃げ切れるわけがないんだ。

ガキのくせに行動を起こすから悪いんだ。

俺のように良い子でいれば、あいつらはそこまで酷いことはしない。

殴る蹴るは常習だがな。

俺はもう18になる。

ガキの頃にできなかったことも、たくさんできるようになった。

外で生きて、1人で生活できるだけの力を得たんだ。

逃げる時はいつ最適かといえば、それは今だろう。

持ち運びやすい鞄の中に用意を詰め込んでいく。

詰め込むと言っても、衣服と文房具、そしてこっそり盗んでいた僅かな保存食と飲み水くらいだが。

仕事を見つけるまではこれでどうにかしよう。



夜、俺は家を出た。

窓から飛び降りるようにして外に飛び出し、全速力で駆け抜ける。

着地で足を捻る、石で躓くなんて凡ミスはしない。

だが、流石は世界大戦を乗り越えてきた帝国たちだ。

一瞬でバレてしまったらしく、遠くから追いかける足音と、止まれと指示する声が聞こえる。

「誰が止まってやるかよ!バーカッ!!悪いのはテメェらの詰めの甘さだ!!!」

俺はあの日本ってやつと違って、比較的自由に外へ出ることができた。

出たところで行く宛がなく、子供1人で生きていけるほど世は甘くないと俺自身が知っていたから。

油断しやがって。

大人になれば従順になるだろうとでも思っていたのだろう。

そんなわけがない!



「はぁ…ようやく出られた…」

散々走って煽ったからか、やけに疲れた。

いつもの墓地だが、座り込んだままでは連れ戻される。

ここはあいつら先祖どもが埋められている、いわば奴らのテリトリー。

その最奥があの場所ってわけだ。

「さっさと逃げるが勝ちだな」

土を払って立ち上がり、いつもは遠くから見るだけだった街へ向かう。

日本が脱走して探しに行った時以来、あの場所へは行っていない。

これからは向こうが俺の居場所になる。

そのはずなんだ。












ドンッ!とナチスが机を叩く。

相変わらずのキレ症にため息が出るが、気持ちはわからないこともない。

「なんとしてでも連れ戻す…今度こそ己の立場をわからせてやらねばなるまい」

「それはそうだが、一旦落ち着け。焦ってもドイツは逃げるだけだ」

「チッ…」

血族とは思えないほどに攻撃的で、気性が荒いナチスだが、頭は良いやつだ。

きちんと私やドイツ帝国が鎮めてやれば、大人しくはなる。

態度は悪いが、やはり先代には勝てないことを理解しているのだ。

「そう焦らなくとも、お前には便利な繋がりがあるだろう。以前は我々が手を貸したのだから、今度は彼らに協力してもらえば良い」

落ち着いた声色でドイツ帝国が言えば、ナチスは獣のように鋭い歯を見せてニヤリと笑い、頷いた。

「確かにその通りだ。それでは、私の方から連絡しておこう」

やはり情緒が不安定な子供だな、と私は思う。

ご機嫌な時は良いが、不機嫌な時にはもうそろそろ力加減ができるようになってほしい。

力のやりどころがないせいで、先ほどのように机を殴ったり、ペンを握り折ったりされてはキリがないのだ。

しかしまあ、早いところドイツを取り戻したいのは同じこと。

あの時のクソガキはきちんと役に立つのだろうか?










逃げてから数日、最近妙な気配を感じる。

「ようやく仕事も見つかりそうだってのに…」

襲われたとしてもどうにでもなるが、気配だけ感じるのは気持ちが悪い。

「…追手かな」

その日暮らしで家も定職も金もない。

顔は良いかもしれないが、この先祖代々同じようなギザギザの歯は良くないだろう。

とすると、自分をストーキングする意味があるやつはあいつらの追手なわけで。

5年くらい前に俺もやらされたから、あり得る話だろうとは思う。

まあ、俺はバカじゃないから捕まるわけがない。






今日も今日とて日雇いバイト。疲れはするが、仕事のない今はかなり助かる。

頑張れば手当てはしっかりしてるし、単純作業なら慣れているから、結構向いているかもしれないな。

「ふぅー…後もう一息だ、今日は甘いものでも買って帰るか …」

先輩からもらった缶コーヒーを飲んで休んでいると、帽子を目深に被った人物に声をかけられた。

「あの〜、少しお聞きしたいことがあって」

「…はい、なんでしょう?」

ニコニコと営業スマイルを返し、立ち上がる。

道にでも迷ったのだろうか。

「…どうして、 僕を捕まえておきながら、自分は逃げようとするんですか?」

「…は…?」

グッと掴まれた手が少し痛い。

よほど力を込められているのか、一切振り解かなかった。

「あなたのせいで僕は地獄から抜け出せませんでした。あいつの血液直飲みとか本当に勘弁してくださいって感じです。おかげで吐き癖ついちゃったじゃないですか」

淡々としていながらも、その声には恨みが込められ、足を回して俺を引きずるように走る。

この展開、見たことがあるぞ。

俺が日本ってやつを捕まえた時、同じようにした。

「絶対に…ぜーったいに許しませんから」

変わらない音程でそう言いのけると、おそらく日本であろう人物は俺の手をぐいぐい引っ張って連れ去っていく。

その細い腕のどこからそんな力が湧いているのか、言うまでもなく怨恨だろう。

離せと言っても足を止めても、奴は動じずに俺を引きずり続けた。

「死ななければ何をしてもいいって言われているので、あんたの骨が折れようが四肢がもげようがどうでもいいです」

向かう先は墓地だろう。

「離せ!!!」

「…………」

何を言ってもただ手に力を込められるだけ。

このままでは本当に連れて行かれる…

どうすればこの状況を脱せるのか…




…結局、あの墓地まで来てしまった。

「もうここまで来たら逃げられませんね!さ、あなたのお父様方がお待ちですよ。早く戻りましょ?」

「離せよ…俺ら2人で逃げれば、なんとかなるかもしれないだろ!?なぁ、なんでわざわざこんな…」

「はぁ…そんなの決まってるでしょう?僕の幸せを壊したあなたへの復讐ですよ」

逃走時は暗かった、見覚えしかない雑木林。

「復讐…」

「確かに僕は優秀ですから、数日で捕まった馬鹿なあなたと組んでも逃げ果せることができるでしょう。でも、それでは僕の受けた苦痛は、恨みはどこにやれば良いのです?あなた言ってましたよね、自業自得だって」

塗りつぶされたような黒い瞳に見つめられ、背筋が凍った。

この先はまずいのだ。

この場所はいつでも涼しいというのに、嫌な汗が止まらない。

「どうせあなたも逃げるつもりだったのに、僕を見逃してくれなかったから。わざわざ捕まえるから。5年越しの復讐劇ですよ?私が「自業自得」なら、あなたは「因果応報」です!ザマァないですね!!」

あの時と、同じ。

自分より下を嘲笑い、馬鹿にし、1人抜けを許さない。

カッと炎が燃え上がった。

5年前の日本も同じような気持ちだったのかは知らないが、やることは同じだ。

あの時より成長した拳をギュッと握りしめ、炎が燃え上がるままに目の前のクズを殴る。

「ふざけるな!!!!!」

「ッ…痛いですよ…やっぱり、あなたは馬鹿だ。5年前、喧嘩してどうなったか忘れました?まぁ…あなたがその気ならいいんですけど」

ボソボソと呟き、日本は足を高く上げ、蹴りで重い一撃を返してきた。

小柄で細い体からは想像がつかないほど痛く、炎は更に煽られていく。

「自分が大人だと勘違いするんじゃねえよ!お前だって同じ馬鹿だろ!?やることなすこと5年前と変わってねえじゃねえか!」

「そういうすぐカッとなるところ、ナチスさんとそっくりですね〜。目の前でペンをへし折られて怖かったです。ドイツさんも怒っちゃやーですよ〜?」

完全に見下されている。

まるで幼い子供の相手をするように、余裕ぶって煽られて、1発喰らっては1発やり返しての繰り返し。

あぁわかっている、わかっているからこそ腹が立つ。

自分の沸点が低いところやすぐに手が出るところ…嫌っていたとしてもあいつとそっくりなことくらい、自分が1番 理解している!

もうなりふり構っていられないのだ、こいつを殺してでも…自分は“普通”を生きたいのだ!

「あはっ、またメガネが飛んでっちゃいましたね。見えてますか〜?」

「クソガキが…」

一気に視界がぼやけた。

距離がわからない。

16のあたりから急速に落ちた視力は、こんなところでも足を引っ張ってきた。

だが、あのムカつく顔はありありと想像できる。

「流石に殴られっぱなしも嫌ですし…僕はお咎めなしになりますから!」

「ッぐ… 」

1発、2発、3発。

俺を捕まえられるなら何をしても良いというのは本当らしく、骨が折られそうなくらいの勢いで殴られた。

「クソがっ…」

いくら目が悪いと言ったって、至近距離ならそれなりに見える。

「っ!!」

「うぁああ゛あ゛あ゛っ!?」

ボキッ

殴りかかる日本の腕を取り、そのまま折ってやった。

力は俺の方が強い。

日本は痛みからか蹲り、腕を押さえるような仕草をする。

「ぅ…が…よくも…!!!」

「はっ、お似合いだな!俺はあいつに似てるんだろ?あいつもキレた時は何かしら物に当たるんだ。お前は奴らのだから、つい当たっちまったわ」

「テメェ…」

「化けの皮が剥がれたな?敬語よりそっちの方が、お前みたいなクソ ガキにはお似合いだよ」

睨んでいるであろう日本を煽り返すことができ、かなりスッキリした。

「ふん…別に腕の一本くらい構いません。お前の骨を2本折ればいいだけですので。左腕と両足があるならなんとかなります」

「随分余裕そうだな。片腕のお前なんか、よく見えないくらい丁度良いハンデだ」

ふらふらしながら立ち上がる日本と睨み合い、また殴り合いが始まる。











「止めろ」

「「!!!」」

お互いボロボロになっていたところ、その場に低い声が響いた。

「なんともまあ盛大な喧嘩だ。仲が悪いな、お前たちは」

「チッ…おい、日本の腕が折れているじゃないか。こいつは右が利きなんだぞ、どうしてくれる」

「私が知ったことではないな。ドイツだって足が折られているし、お互い様だろう」

「て、帝国様…ナチスさん…」

「ぁ…」

終わった。

どうやって日本をねじ伏せるかと考えていた頭の中に、その言葉が溢れる。

「いッ…づ…」

「心配したぞ?ドイツ。急に家出なんて」

折れた箇所に布を巻き、応急処置をしながらそう言われた。

ギュッ、と布をキツく締められる。

相当力を入れているのか、とても痛かった。

「日本、その程度問題ないだろ。早く立て」

「は、はいっ」

腕の骨折が1番の大怪我だろうが、馬乗りになって殴っていたせいで、日本の顔はあざや血で汚れている。

なのに問題ないと言い放つ帝国?は残忍な印象を受けたが、コレと知り合いならそのくらいイカれていても不思議ではないと思った。

「ドイツ、日本クンはお前を連れ戻しに行ってもらっただけだ。こんなに喧嘩する必要はなかったはずだが?説明してもらおうか」

「それは…えっ、と…」

「…まあいい、それはまた後でゆっくりと聞かせてもらう。今は謝罪が先だな、早く立って謝りなさい」

「えぁ、はい…すみません…」

応急処置されたとはいえ、足は折れている。

付近の木を伝って折れていない方の足を軸にしてみるが、両足をつけるのは難しそうだ。

「…殴ってすみませんでした」

「……いえ、僕も頭に血が上りすぎました。こちらこそすみません」

「では、謝罪も済んだ。我々は帰る。こんなことで時間を無駄にしたくない」

じゃあ来なけりゃいいのに。

日本もそう思ったのか、不満げに眉を顰めている。

「ドイツ、私たちも行こうか。皆が待っている」

何が「待っている」だ、俺を痛めつけたいだけだろう。

少しの振動でも傷は痛む。

スタスタと先を行く奴の後を追うが、支えもなしに歩けるわけがなかった。

何度も転びながら、必死についていく。

奴は俺を見て笑っていた。

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コメント

23

ユーザー

あぁ…、、やはりドイツSideもいい……✨(uωu*)

ユーザー

わかりました! ほんとに簡単に書いただけですからね?

ユーザー

もし、良ければ簡単に書かせてもらったものがあるですがね? 参考程度に見ます?

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