ほぃっ・3号 様より、昆虫採集する日独親子
日独伊三国同盟…枢軸国…それに属する者らはかつて、悪の枢軸と呼ばれ、世界に脅威をもたらした。
世界規模の大戦を起こし、多くの犠牲を伴った終戦を迎え幾年月。
そんな彼らもまた、親となった。
本日、日帝は久々に盟友と会うが、向こうも子を持ち、それなりに幸せな生活を送れているらしい。
そうであるならば、両家の子たちを会わせて仲良くするのはどうかと持ちかけた。
まだ学校に行く年齢ではなく、そうでなくとも国というのは友人が作りづらい。
どこかしらは必ず不敬だと勝手に騒ぎ立てるので、付き合いは他国がメインになるのだ。
幼いうちに経験する孤独は足を引っ張るものであると、彼らは身をもって知っている。
遠くだとしても友人は必要であるとして、子供らの交流も兼ねるのだった。
「日本、にゃぽん、明日は私の友人とそのお子さんと一緒に出かけるから、今から用意をしておこうな 」
「どこにいくの?」
お昼を食べ終えて迎えた午後、日帝は小さなリュックをそれぞれ、日本とにゃぽんに渡す。
「少し遠くの野原だ。何か持っていきたいおやつや、弁当のリクエストはないか?」
子供たちにそう問うてやれば、にゃぽんは真っ先に手を挙げた。
「はいはい!たまごやき!」
「卵焼きか、いいな。日本は何かないか?」
「うーんと…えーっと…」
「遠慮しなくていいぞ。食べたいものを言え」
「そ、それじゃあ…からあげ、たべたいです」
「からあげ!おとーさん、にゃぽもたべたい!」
「ふふっ、わかったわかった。それなら、卵焼きと唐揚げは絶対に入れると約束しよう。おにぎりの具は何がいい?」
「「しゃけ!!」」
「了解した。それでは、必要なものを詰めようか」
「「はーい!」」
親子3人で明日の用意を終え、その日はいつもより少し早く就寝。
子供たちは楽しみで寝付けなかったようだが、絵本を読めばすぐに寝てしまった。
翌朝、日帝は早起きして弁当の準備を進める。
綺麗な黄色の卵焼きを焼き上げ、日本たちが寝た後に用意した鶏肉を揚げていく。
他にもほうれん草のおひたしや鮭のおにぎりなんかを弁当箱に詰めてゆき、切れ端などの余り物は皿に盛って朝ごはんにした。
「そろそろ起こすか…」
「にゃぽん、日本、起きろ。もう朝だぞ」
「んにゃ…ぅ…?」
「すゃ…んへ…」
「はぁ…全く、この寝起きの悪さは誰に似たんだか。起床ラッパ…は、休日に聞きたくないな…2人とも、起きなさい!」
バサッと布団を退けると、日本はようやく薄ら目を開ける。
にゃぽんは兄の方へもぞもぞと動き、そのままもう一度寝てしまった。
「とぉ、さん…?おはよ、ございましゅ…」
「おはよう日本。もう朝食は出来ているから、着替えてちゃぶ台のところで待っててくれるか?」
「はぁい…」
にゃぽんから逃れて布団から這い出ると、日本はまだ眠いのか、目をこすりながらぎこちなく歩いている。
「にゃぽんもほら、起きなさい。今日はお出かけだぞ。にゃぽんだけ置いて行ってもいいのか?」
小さな体をゆさゆさとゆり起こせば、ん〜と唸りながら起き上がった。
「ん、やぁだぁ…」
「それじゃあ、もう起きないとな。今日の朝食は卵焼きもあるぞ」
稀に出現する卵焼きだが、今日はお弁当にも使ったので用意済み。
ピンと立った大きな猫耳でしっかり聞き取ったにゃぽんは、一気に覚醒した。
「おなかすいたぁ!」
「よし」
任務達成である。
「日本、待たせたな。食べようか」
「はい!あ、おはようございます、にゃぽん」
「おはよ!おにーちゃん!」
「きちんと挨拶ができて、2人とも良い子だな」
両サイドの2人の頭を撫で、日帝は微笑んだ。
そして満足そうな顔をする2人と共に手を合わせ、
「「「いただきます!」」」
仲良く朝食を食べるのだった。
「「「ごちそうさまでした!」」」
「おいしかった〜!」
「とうさん、おでかけはいつですか?」
「もう少ししたらだな。私は忘れ物がないかを確認しておくから、にゃぽんと歯磨きして待っててくれ」
「はーい!」
ご飯も食べてすっかり覚醒した2人の様子を見ながら、昨夜用意した荷物の中身を確認する。
子供たちのリュックにはおやつ、ハンカチ、ティッシュ、絆創膏、水筒などなど、あらかた必要なものが確認できた。
次に日帝が持っていく大きめのカバンの中身。
同じくおやつやハンカチティッシュ、絆創膏に加え、3人分のお弁当、大きめの水筒、その他色々が鎮座していた。
「荷物確認、よし」
兄妹揃いの麦わら帽子も並べて置いてあるし、車の中にはレジャーシートや虫籠と虫取り網もある。
まさに万全の状態だ。
「私も歯を磨くか…」
十数分後、麦わら帽子とリュックを備えた小さな子供2人と、軍服姿の2人の親の姿があった。
「それじゃあ、行こうか」
「「はーい!!」」
行ってきます、と言って誰もいない我が家に鍵をかけ、付近に停めている車の中へ乗り込む。
「結構暑いな…2人とも、水はしっかり飲むんだぞ。熱中症になったら怖いからな」
「わかりましたぁ」
「あついよ〜…」
「すぐ冷房をつけるからな」
1人の時は断固として冷房は使わず、窓を開けて凌ぐ日帝だが、子供たちの安全に比べればそんなプライドはいらないわけで。
リュックを抱えて座る日本とチャイルドシートに乗せたにゃぽんとの様子をその都度確認しながら、待ち合わせ場所へと向かうのだった。
待ち合わせ場所に着くと、そこには懐かしい旧友と、よく似た外見の子供が2人。
「一旦外に出るから、荷物は置いておけ。帽子はどちらでもいいから」
「わかりました!」
車を停めて子供たちと外に出ると、近づいてきた旧友に抱きしめられた。
「久しぶりだな、日帝」
「あぁ、本当にな」
抱き返して挨拶を交わし、離れたのちに旧友の子であろう2人に目線を合わせる。
「私の名は大日本帝国。気軽に日帝と呼んでほしい。今日はよろしくな。この2人は日本とにゃぽん。仲良くしてくれると嬉しい」
「えっと…はじめまして。ボクはひがしドイツです。オストってよばれてます」
「ぼくはにしドイツのヴェスト…です。よろしくおねがいしますっ」
模様が描かれた眼帯をした子は、東ドイツ、反対の子は 西ドイツというようだ。
ヴェストは緊張しているのか、ナチスの服をぎゅっと握っている。
「よろしくな」
親しみを込めて頭を撫でれば、そっくりの顔でにぱっと笑顔を散らせた。
やはり子供の笑顔は可愛らしい。
「私も挨拶をせねばなるまい?初めまして、お2人さん。私の名は国民社会主義ドイツ労働者党。ナチスと呼んでくれ」
恭しくお辞儀をして、ニコリと笑うナチス。
彼もいつもと同じ軍服を着ているが、なぜか硬い印象を受けない不思議な笑みだった。
「にゃぽんだよ!よろしくね!!」
「はじめまして、にほんです。よろしくおねがいします、ナチスさん!」
「さて、挨拶も済んだところで、そろそろ行こうか。時間も勿体無いしな」
「そうだな。今日は世話になるぞ、日帝」
「お互い様だ、気にするな」
新たに3人を連れて車に戻り、大人は前の座席へ、子供たちは皆で後ろの座席に座る。
チャイルドシートはにゃぽんだけなので、安全に関する心配は特にない。
「みんな、シートベルトはしたか?もう出発するぞ」
「日帝、お前すっかりイクメンじゃないか」
「発言には気をつけろ、私の腕は鈍っていないぞ」
「暗に切ると伝えてこないでくれ…悪かったよ」
「みんなしました!」
「了解」
そうして、日本、にゃぽん、オスト、ヴェストにとって初めての異国交流が始まったのだ。
目的地まではまだ先なので、日本は隣に座る2人へ声をかけた。
「オストくんとヴェストくんはそっくりですね!みわけがつかなくなりそうです」
「ぼくとオストはふたごなんだ!オストがにいさんだよ」
「そういうニホンたちだってそっくりだな。ボクらよりわかりやすいけど、すごくにてる」
「そうですか?にゃぽんのほうがかわいくてびじんさんですよ!」
「えへへ、おにーちゃんもかっこいーよ!」
「ぼくはニホンもかわいいとおもうけどなぁ」
「か、かわいくないです!ぼくはかっこいいんです!ね、にゃぽん!」
「うん!」
「それなら、ヴェストだってかわいいぞ。よるはボクといっしょじゃなきゃねないんだ」
「それはいわないでよ!」
一瞬で打ち解けた4人は、きゃっきゃと楽しそうに話を続ける。
その会話を聞いていた日帝とナチスは、良い友達ができたようでよかった、と安心した。
「はぁ〜〜…うちの子尊い…」
「わかる、わかるぞナチス…」
日帝は運転中なので目線を逸らすわけにいかないが、会話だけでその様子は頭に浮かんでくる。
親バカになっていたナチスに少々驚きつつ、見覚えのある道へと車を進めるのだった。
「ふぅ…よし、着いたな」
「お疲れ、日帝。もう降りるぞ、忘れ物に気をつけろよ」
「「「「はーい!」」」」
見晴らしの良い野原と豊かな森林が隣接するこの場所は、枢軸の3人しか知らない。
本当はもっと色々な人物が知っていたのだとしても、他の人間や国を見たことがないので、3人しか知らないことと一緒だ。
「わぁぁ…!!おとーさん、はやくあそびたい!」
「わかった、だがあまり遠くへ行くなよ。私が見えない場所は絶対にダメだ」
「うん!やくそくする! 」
「日本、にゃぽんのことをしっかり見ていてくれよ」
「もちろんです!」
にゃぽんは言うことを聞ける良い子だが、小さいが故に周りが見えなくなりがちで、目を離した隙にどこかへ行ってしまうことが多い。
「ヴェストとオストも行ってきていいぞ。日本クンも小さいしな、危ないだろう」
「…あ、そういえば虫取り網と籠を持ってきているぞ。虫取りでもするか?」
「それはいいな。取ったもので気に入ったやつがあれば、私が標本にしてやろう」
「道具あるのか?」
「割と趣味だから、一応な」
「すごいなお前」
そうして日帝は車から虫取り網と籠を持ってきて、それは日本たちの手に渡った。
「それじゃあ、いってきます!!」
「それで、僕とドイツさんでカブトムシとか取ってたんでしたっけ」
「兄さんとにゃぽんは虫に触れなかったからな…懐かしい」
「ふふ、久々にどうです?今度は標本採集のためにとか。あの時はナチスさんの所業は鬼のようだとか思ってましたけど、今なら楽しめるかもですし」
「標本にする過程は子どもにはあれだったな…まあ、たまにはいいと思うぞ。にゃぽんも誘うか?JKは流石にダメかな」
「来ると思いますよ。土日に合わせればですけど」
「じゃあ、金曜から日曜まで休んでみるか」
「3連休とはすごい決断ですね、賛成です!」
いつ行くかということを話し合い、残る仕事も終えた2人。
ふと、日本がニヤリと笑ってこう言った。
「車はお願いしますね、ヴェストくん♪」
後日行われた昆虫採集は、誰も虫に触れなくなっていたので、ピクニックになったそうだ。
コメント
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尊きかな…✨✨(´-ω-)人
遅れてもうた、、、リクエストに応えていただきありがとうございます!!🙇 最後誰も虫さわれんくなってただのピクニックになったの可愛いのなんなんや、、、! そしてナチさん標本にする過程子供たちに見せたのか、鬼畜過ぎるぞ、、、