テラーノベル
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#独占欲
#ワンナイトラブ
「……はい、彰様」
住む世界が違うはずなのに、こんなに怖そうなのに不器用な彰をなぜか可愛いと思ってしまった。
うっかり「はい」と返事をしてしまった私はこの数分後にまた世界の違いを思い知ることになる。
連行されていく大輝と麗香はもうすっかりおとなしく、大騒ぎしているのは麗香の祖父、綾小路商事の会長だけ。
周りの野次馬は相変わらず多いけれど。
「あの、すみません。西園寺様……ですよね? アキサイバーセキュリティのCEOの」
こんなところでお会いできるなんて光栄ですと、スーツの男性は彰に握手を求めた。
男性の会社は有名な自動車会社、しかもその男性はその会社の常務取締役だと名乗る。
「あなたの会社の製品のおかげで、弊社はサイバー攻撃を免れることができました。本当にありがとうございます」
男性と彰の会話は難しすぎてわからない。
クラウド、ランサムウェアという単語はわかるけれど、それがどういうことなのか全くわからない。
「沙紀さん、うちの会社のセキュリティソフトわかりますか? パソコンの右下にマークが出ているやつです」
「あ、はい。有名なソフトですよね?」
小声で冬木に話しかけられた沙紀は、パソコンに詳しくなくてもそのくらいはわかりますよと頷いた。
「アキのアメリカの会社です」
「……は?」
「言ったでしょう? うちの会社は中小企業にしてはありえないセキュリティだと」
いやいや待って、そういうレベルじゃなくない?
ガッチリ腰を掴まれたままの沙紀が横を見上げると、目が合った黒豹のような男はニヤッと笑う。
「正直、吸収合併などしなくてもうちの会社は潰れません。アキのアメリカの会社が好調なので」
他社と合併するくらいなら子会社にして連結決算にしますと冬木はニッコリ微笑んだ。
「……じゃ、人事異動は……?」
「みんなが楽しく働けるように、入社時の希望部署へ誘導しているだけです」
「えっと、私は統括室を希望していないですけど?」
私が希望したのは開発部だ。
そして希望通り開発部にいたのに。
「アキの希望です」
「沙紀ちゃん、かわいそ~」
公私ともにアキに捕まってさ~と笑うハルと、申し訳なさそうな顔をする冬木。
「えっと、……どうして私?」
コワモテ御曹司のごほうびは私!?
どうやらスパダリを手に入れてしまったようです。
私は普通の会社員だったはずなのに――。
「沙紀、悪い奴らを追い出した『ごほうび』をくれ」
彰の唇が自分の口に触れたと思った瞬間、貪るようなキスと甘い吐息が沙紀を襲う。
激しすぎるキスの間に囁かれる「好きだ」の言葉と、優しいキスと激しいキスのリズムに翻弄される。
待って!
ここ、ビックサイトのイベントブースのど真ん中!
しかもライバル会社の綾小路商事のブース!
口を手で押さえながら真っ赤な顔で動揺する沙紀を見た猛獣のような男は「これから毎日ごほうびがほしい」と微笑んだ。
END
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