テラーノベル
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「ほへぇ……」
帰宅した後、いつも通りサブキャラの方でログイン……したのは良いんだが、思いっきり気が抜けているのが自分でも分かる。
ゲーム内のベンチに座ったまま、何度も呆けた様な情けない息を零していた。
何と言うか、凄かった。
オフ会というものも初めてだったし、年上の方々と遊びに出かけたのだって初めてだ。
お兄ちゃんと出掛ける時とは違って、ちゃんと一緒に遊んでいるって感じだったし。
4cardに関してはボディガードという名目もあってか、保護者って雰囲気は強かったけど。
服を揃えた後は、皆で遊べるような空間へ。
色んな遊びが出来る様な施設へ行ったのだが、とにかく凄かった。
こんなに身体を動かしたの、いつ以来だろうってくらいに動いたし。
リアルでも身体の動かし方を4cardからレクチャーされ、カラオケに入った後はsevenがプロなんじゃないかって程上手に歌っていたし。
それらに圧倒され、此方としてはワーワー言いながら二人に付いて回った感じだったのだが。
でも……凄く、楽しかった。
お金は払わせてもらえなかったので、今度別の形でお礼をしようと心に決める事にはなったけど。
「前にセブンは手料理食べたいって言ってたし、フォーは角煮が好きだって言ってたから……そうなってくると、やっぱりウチにご招待するのが一番だよね……でもお兄ちゃん借りてるマンションなのに、私のお客さんを呼ぶのは違う気が……」
一人でブツブツと呟きながらも、ベンチに座っていた訳だが。
どうやら完全に周囲が見えていなかったらしく。
「よぅっ! シロさん。何やらお悩みかい?」
「ふぁわぁぁっ!?」
「実に良いリアクション、百点満点」
いつの間にか、すぐ隣にロングコートの人が座っていた。
ついでに言うと、ものっ凄くニコニコしながら此方にピースサインを向けている。
「おい“出っ歯”、ちけぇって。ゲーム内だからって距離感バグってるって」
「わははは! 確かに! すまんシロさん、お久し振り!」
そこには楽しそうに笑う出っ歯さんと、呆れ顔を浮かべるグレーさんは立ったまま此方に視線を送って来ていた。
何だか、この二人は久し振りに見た気がする。
というのと、さっきの独り言聞かれてないよね?
思いっ切り賞金首の名前を出してしまっていた気がするんだけど。
「お、お久し振りです。ぇと、今日は……一緒に出来る感じですか?」
とにかく挨拶を交わしてから、ペコペコと頭を下げていると。
グレーさんは「どもっ」と片手を上げ、出っ歯さんに関してはベンチから立ち上がってコートの裾をバサリ。
「最近はそれなりに落ち着いて来たからな! 俺、復活! また共に終焉の道を歩もうではないか!」
「うるっさ……まぁなんだ。そういう事情もあったんだけど、シロさんが“極振り”キャラ育て始めたって聞いてさ、やりたくなっちゃった。今日は俺等もご一緒して良い?」
そんな訳で、本日は二人とも一緒のパーティを組めるらしい。
凄い、今日は本当に一日中誰かと一緒だ。
こんな休日、高校生になってから初めてかもしれない。
「も、もちろんです! また皆で組めるの、楽しみにしてました!」
こちらも元気に声を返して、改めてよろしくとばかりに頭を下げてみると。
二人もニコッと笑ってくれて。
「クロに関しては、何かもうちょっと掛かるみたいだからさ。俺等だけで軽く“合わせて”おこうか、シロさんの新しいステも見たいし」
「超高速シロ、期待しているぞ!」
なんて事を言いつつ、とりあえず三人だけでパーティを組むのであった。
黒沢君、ちょっと遅くなるのか。
ここ最近、件の“訓練”が長くなって来た気がするな。
あんまり気を張り過ぎて、私みたいに変な事にならなければ良いけど……。
◆
「ゴメン、だいぶ遅れた! まだ皆やってる!?」
兄貴からの射撃訓練が予定より掛かってしまい、慌てて皆に連絡を取ってみると。
『おーぅ、おっせぇよクロー。こっちはもう勝手に始めてるぞー?』
通話に応えてくれたグレーが、凄く呑気な声を上げているけど。
それと一緒に、ガルルルッという機関銃の音が聞こえて来るんですが。
もしかして今、戦闘中?
だとすれば、シロさんと出っ歯は此方の声に応えている暇が無いってのは分かるけども。
『シロさん、すっげぇなマジで。NPC相手だと強制的にヘイトを買い過ぎて、出っ歯の生存時間がものっ凄く長いわ』
「それ……シロさんに滅茶苦茶無茶させてない?」
『まぁ確かにこれまでより負担が多いけど、楽しそうだぞ?』
だ、そうです。
とにかくこっちは走って合流ポイントを目指した訳だが……くそぅ。
こういう所でも、前回octopus8に爆破されたバイクの損失がデカい。
修理不可な所まで破壊されてしまったし、そもそも最近はガンサバで金策が出来ていないのだ。
シロさんと一緒にプレイする時間以外は、ほとんど訓練に使ってしまっているので。
あれ高かったのに……こんな事なら、保険のアイテムを出し惜しみせず使っておけば良かった。
なんて、今更後悔してもどうしようもなく。
とりあえずダッシュで現地に向かってみると。
「お、おぉ……これは、また」
「お? 来たかー? 援護よろしく。俺だけだと、前衛周りの敵に向かってバラ撒く訳にもいかないからさ。いや、出っ歯なら当たっても良いか。問題はシロさんだな、あの子に誤射するのは流石に不味いし」
戦場をシロさんが物凄く低姿勢で駆け回り、NPCの敵が必死で銃を向けたり、追いかけようとしているが。
互いの射線に入ってしまうらしく、どうしても攻撃の手が弱い。
その状態で、ロングコードをはためかせる出っ歯が。
「ふはははっ! この為に俺もステ振りしたからな! 高速タッグの前に、沈め!」
どうやらシロさんに合わせて数字を振りわけたらしい彼は、普段以上に素早く動き回って二丁拳銃を連射していた。
意外や意外、ちゃんとキルが取れてる。
しかも彼女が目立ち過ぎている為か、割と冷静にヒット&ウェイを繰り返しているみたいだ。
ただしステータスに感覚が追い付かないのか、度々変な所でコケたりしているけど。
そして後ろから、グレーが着実に前線を押し上げるという。
意外と安定した戦場が繰り広げられている御様子だった。
「ハ、ハハ……シロさん、本格的に上達早いって……」
なかでも、彼女の動きは異質だった。
今までも物凄い速さで動き回っていたのは見て来た。
ゲームならではというか、現実には絶対出来ないでしょって動き。
だというのに、こんなシステムサポートの少ないゲームで。
彼女はそれを早くも自分の物にし始めていた。
ガンサバ内で、そういう動きが有名なプレイヤーと言えば“seven”。
PVやネットに上がっている動画を見た感想にはなってしまうのだが。
今の白川さんには、ソレに近いモノを感じる何かがあった。
方向性の違いはあれど、実現不可能な動きをVR内で自然とこなしている。
実際に賞金首に匹敵するのかと言われると、俺にはちょっと判断が付かないけど。
「クロ、援護。このままだとシロさん囲まれる」
「そ、そうだった! すぐ準備する!」
グレーとそんな会話をしながらも、此方も狙撃銃を準備し始める。
もしも彼女がそういう領域まで実力を伸ばした場合、賞金首イベントに一緒に参加してくれればどれほど心強いか。
けど白川さんの場合は、お兄さんがあの“シックス”である以上……気持ち的には、厳しいのだろう。
そして何より、相手に認められる為に彼女自身の手を借りてしまって良いのか? という思考も残る。
でもここ最近の訓練や、実際にoctopus8と接敵してハッキリと分かった。
俺の実力じゃ……“賞金首”には、勝てない。
だからと言って諦めるつもりは無いし、今後も通用する実力を付ける為に訓練は続けるが。
それでも。
「あぁ……こんなスプリンターが居れば、多分シックスだって普段通りには戦えないだろうな」
呟きつつも、スコープから見える敵の頭を打ち抜いて行くのであった。
何はともあれ、白川さんだけは絶対守る。
キルを取られてしまえば、物凄く気にしそうというのもあるけど。
それ以上に、俺自身が……彼女が怪我をするところを、見たくないって思ってしまっているんだ。
コメント
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わあ〜第87話、読み終えたよ!✨ オフ会の余韻が残るシロさん、めっちゃ可愛い…「ほへぇ」からの一人ブツブツ反省会、分かるわかる!笑 そしてそこに出っ歯さんとグレーさんが登場してからの流れ、もう完全に“仲間”って感じがしてほっこりした😭💕 黒沢くんの視点でのシロさん評、「上達早い」「sevenに近い何かがある」っての、読んでて鳥肌立ったよ…! そして最後の「シロさんだけは絶対守る」「怪我するところ見たくない」、ここでキュンが止まらなかった💘 お話、すごく温かくて楽しい回だった〜! 次も楽しみにしてるね🌸
柘榴とAI

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柘榴とAI

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