大勢の仮面を着けた男女が集う舞踏会で、
ひときわ周囲の視線を集めていたのは、三日月だった──。
ブルーグレーのタキシードの裾を翻して、
会場の中央で、誘われたどこぞの令嬢と優雅に踊る三日月を、私は遠巻きに見ていた。
(もっと三日月の反応を楽しむはずだったのに……。
こんなところに来てまで、あの男はちっとも臆することもないだなんて……つまらない……)
思惑がはずれたことで、舞踏会自体にもあまり興味がなくなってしまい、ひとり会場の外にある庭へ脱け出した。
広い庭園には、大きな噴水があって、私はそのへりに足を投げ出して座った。
「つまんない……三日月は、やたらもててるし……ちっとも、おもしろくないんだけど……」
そうひとりごとを呟くと、なんだか悲しくもなるみたいだった。
涙が流れてきそうにもなって、顔を上へ向けると、空には綺麗な月が出ていた。
「綺麗……」
私は、月の浮かぶ夜空を眺めながら、ぼんやりと口にした。
──と、不意に、
「こんなところにいらしたのですか? 理沙…」
聞き覚えのある低い声が上から降ってきた。
「三日月……」
月の光を遮って立つ彼を見上げる。
「なぜ、こんなところにひとりでいるのです……」
「あなたが、相手をしてくれないから……」
寂しさから、ついそんな言葉が口をつくと、
三日月が、「ふっ…」と口元に2笑みを浮かべた。
「理沙…私に、相手をしてほしいのですか?」
手がついと取られて、噴水のへりから立ち上がらされる。
「……違う……別に…そんなことは……」
彼と向き合うようなかっこうになり、私はしどろもどろで言い訳をした。
「理沙、今宵は私はあなたのパートナーとして過ごさせていただくと、そう言いましたよね。
このひとときだけ、あなたを私のものにしてもかまいませんか?」
「えっ……」
見つめる彼の眼差しに情熱的な炎が感じられるようにも思えて、一瞬なんて答えればいいのかがわからなかった……。
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