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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第71話 〚見られている安心〛
――澪視点
夕食の大広間は、
相変わらず賑やかだった。
カレーの匂い。
お皿が重なる音。
写真を撮る声。
楽しいはずなのに、
私は少しだけ、
落ち着かなかった。
理由は、
分かっている。
——先生の視線。
さっきから、
何度か目が合う。
怒られているわけじゃない。
注意されているわけでもない。
なのに、
胸の奥が
きゅっとする。
(……見られてる)
そう思った瞬間、
心臓が
一瞬、強く打った。
怖い。
でも。
不思議と、
嫌じゃなかった。
むしろ——
(……守られてる、のかな)
そんな考えが、
ふっと浮かぶ。
隣を見ると、
海翔がいる。
スプーンを持つ手は落ち着いていて、
私の方に
少しだけ体を向けている。
近すぎない。
離れすぎない。
「大丈夫?」
小さな声。
私は、
小さく頷いた。
それだけで、
少し楽になる。
視線を戻すと、
また先生と目が合った。
今度は、
さっきよりも柔らかい。
(……怖いのは、
私じゃないんだ)
そう、
気づいてしまった。
先生は、
“何か”を
警戒している。
それが、
私のことじゃないと分かるから、
余計に胸がざわつく。
(知らない方が、
楽なのに)
でも。
知らないままじゃ、
いられない。
私は、
自分が思っているよりも、
もうずっと前から
守られる側に立っている。
その事実が、
少しだけ、
重たい。
けど。
先生の視線がある。
海翔が隣にいる。
玲央たちの声が聞こえる。
——だから。
私は、
スプーンを持ち直した。
カレーを一口。
ちゃんと、
味がした。
(……大丈夫)
怖いけど、
安心。
その両方を抱えたまま、
今夜を越えればいい。
先生の目は、
まだ私を追っている。
でも今は。
その視線が、
“壁”みたいで。
少しだけ、
心強かった。