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〈ストーリー〉
ピピピピッと無粋な目覚ましの音が鳴る。スマホの画面を見ると、7時30分。
朝が弱い僕はもう一度まぶたを閉じようとするのだけれど……。
「ねえ、起きて」
頭上から彼女の声が降ってきた。でもまだ頭が夢で覆われている。
「眠い…」
カーテンがしゃっと開けられる。眩しい光を閉じたまぶた越しに感じた。
「起きてってば」
眠たい目をこすり、上体を起こす。
髪の毛に寝ぐせのついた彼女を見て、くすりと笑った。
「そこぴょんってはねてる」
え、と髪を手ぐしでとかす。
「セットしてくる」
立ち去ろうとする彼女を、腕をつかんで引き止めた。驚いて振り返ったその頬に、短く口づけ。
「アイラブユー」
「……ちょっと発音が違うなあ」
英語が得意な彼女はそう笑って、寝室を出ていった。
朝の支度を終えると、シャワーを終えた彼女がリビングに入ってくる。
「朝ごはん何がいい?」
そう問われ、「君が作ってくれるなら何でも嬉しい」
またそれ、と口をへの字に曲げる。精一杯の抗議なんだろうけど、ちょっとおかしい。
「やっぱ一緒に作ろ」
立ち上がりざま、ハグをする。いつもより腕に力を込めると、彼女もぎゅっと抱いてきた。
こんなことがゆっくりできるのも、休日のおかげ。甘くてゆったりとした時間が流れているように感じる。
一緒に作ろうとは言ったものの、彼女が髪を乾かしている間に進める。
パンを焼き、冷蔵庫をのぞいてみればヨーグルトがあったので小さなお皿に分ける。
「わ、珍しい」
髪を乾かし終えた彼女が戻ってくると、進んでいる調理に驚いたようだ。「できるんだ」
「パン焼いただけだよ」
ありがと、と言ってフルーツを取り出し、皮をむく。包丁は使えそうにないから、僕は身を引いた。
そしてダイニングで二人が向かい合う。
テーブルの上のプレートは、華やかなフルーツの色でいっぱいだ。
「いただきます」
目の前でパンを食べる彼女の笑顔を見ていると、オレンジみたいな甘酸っぱさが胸に込み上げる。
たった二人だけで食卓を挟む日常のシンプルな一コマでも、”君”という主演女優がいるから僕にとってはまるで大ヒット映画だ。
もちろんそんなこと、君には言わないけど。
続く