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目覚めと違和感
翌朝、サクラは激しい頭痛で目覚めた。体が重く、昨夜の酒宴での失敗を後悔する。
「うぅ…最悪だ…」
彼女は自分の部屋のベッドで眠っていたが、昨夜の記憶は、ワインを飲んだ後の「楽しかった」雰囲気以降、曖昧になっていた。
部屋を見渡すと、机の上に真新しいブランケットがきっちりと畳まれている。そして、その横には小さなメモが置かれていた。
「水差しを3杯飲め。二日酔い対策だ。体調が戻るまで、食事以外で自室を出るな。――E. S.」
エルヴィン団長からのメモだ。彼の筆跡は力強く、相変わらず指示は絶対的だ。
サクラが窓の外を見ると、訓練場から微かに立体機動装置のガス噴射音が聞こえてくる。普段なら自分もいる時間だ。
立ち上がろうとした瞬間、彼女は部屋のドアに寄りかかっている、一つの小さな気配に気づいた。
リヴァイ兵士長だ。
彼は、ドアに寄りかかり、目を閉じている。おそらく、夜通しここで見張りをしていたのだろう。彼の顔には、疲労の色が濃く、普段よりも深く刻まれた皺が見えた。
(兵士長が…なんでこんなところに…)
サクラは、昨夜、自分が泥酔したこと、そしてエルヴィンに運ばれたらしいことを察し、二人の間の緊迫した「何か」が、この状況を生み出しているのだと理解した。
リヴァイの静かな説教と、隠された本音
サクラがドアを静かに開けると、リヴァイはすぐに目を開けた。彼の瞳は鋭く、疲れを感じさせない。
「…目が覚めたか、バカ」
開口一番、リヴァイからの厳しい一言が飛んできた。
「はい、兵士長…昨夜は、大変申し訳ありませんでした」
「謝罪は不要だ。聞きたいのは、なぜ自分の体を管理できないのか、ということだ。お前はもうただの**『迷子』ではない。人類の希望となり得る『兵士』**だ。体が汚れる。思考が乱れる。そして、無防備になる」
リヴァイの説教は、サクラの体調管理を徹底させるためのものだが、その言葉の端々には、昨夜エルヴィンに抱きかかえられたことへの強い怒りと嫉妬が込められていた。
「酒など、もう二度と口にするな。汚いものだ」
「はい…」サクラはうつむく。
リヴァイは、サクラの小さな頭に手を伸ばしたが、すぐに手を引っ込めた。彼の指先は、彼女の髪に触れる寸前で止まった。
「…いいか、サクラ。お前はもう、俺たちの想像を超えた力を持っている。だが、その力を**『無駄な隙』**で失うことは許さん。俺たちは、お前を…」
リヴァイは言葉を切った。彼の目は、サクラの無防備さへの憤りと、彼女を失うことへの深い恐怖で揺れていた。
「俺たちは、お前の**『すべて』**を、この世界で最も安全な状態に置いておきたい。分かったら、もう二度と、俺の目の届かないところで、無謀な真似をするな」
それは、サクラの才能への畏怖と、彼女を独占したいという溺愛が入り混じった、複雑な命令だった。