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第1章 第9話 「 ― 無念の敗退」
福岡県大会3回戦。
柳城高校は前の試合を勝ち上がり、初めての夏を本格的に戦う。相手はシード校に次ぐ実力と評される「博南学園」だ。打力が持ち味で、1年生主体の柳城ナインにとっては分厚い壁となる。
「プレイボール!」
序盤から相手打線が圧力をかけてくる。
1回表、先発のエース松永は先頭打者を追い込みながらもストレートをはじき返され、ライト前ヒット。続く二番打者には送りバントを決められ、三番四番でタイムリー。早くも2点を失う。
実況「柳城、苦しい立ち上がりです!」
解説(城島監督の恩師である黒田監督をイメージした解説者)「経験の差が出ていますね。松永くんは真っ直ぐは力がありますが、甘いと打たれてしまう。守備もまだ緊張して硬いですね。」
柳城も反撃を試みる。3回裏、一番・矢野が四球で出塁。続く二番・小早川啓介が送りバントをきっちり決め、スタンドが沸く。三番・宮本のセンター前ヒットで一死一三塁。
しかし四番・大久保は外角のスライダーに空振り三振、五番もショートゴロ。あと一本が出ない。
試合は中盤で点差が広がる。松永が捕まり、四回・五回でさらに3点を失った。
6回からはリリーフの木下が登板するが、相手の厚い打線を止めきれない。
終盤
7回裏、柳城はついに1点を返す。
小早川が初球を思い切り引っ張り、ライト前ヒット。続く宮本の二塁打で一死二三塁。
大久保が叩いた打球はショートゴロだったが、相手が送球を焦ってエラー、1点を返す。
実況「柳城、1点を返しました!ようやくチャンスをつかみました!」
解説「諦めない気持ちが大事ですね。こういう経験が必ず力になるはずです。」
しかし反撃もそこまで。終盤は相手投手のテンポあるピッチングに押さえ込まれ、試合終了。
スコアは 柳城 1―6 博南学園。
柳城の初めての夏は、3回戦敗退に終わった。
試合後
ベンチ前で整列するナイン。
涙を流す3年生たちに、1年の小早川は胸を締め付けられる思いだった。
城島監督は整列後、ナインに短く告げる。
「よくやった。だが、このままじゃ終わらん。今日の悔しさを忘れるな。」
グラウンドの隅には、試合前に整えられたベンチ脇の土と道具。
小早川は汗をぬぐいながら、固く誓った。
――「次こそ、必ず勝つ。そしていつか、俺たちの手で甲子園へ。」
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