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出産を無事に終え、しばらくして私は保育士として働くべく保育園を探した。
マンションの近くにある小規模保育園に事情を話すと、特別に我が子も入園させてくれることになり、今はすぐ側で見守ることができている。
この状況には本当に感謝してる。
「ママ~」
「お腹空いたの?」
私に駆け寄り可愛く言ったのは、一堂 雪都(いちどう ゆきと)、2歳。
今日は保育園はお休み、2人きりで過ごす公園。
広い原っぱにレジャーシートを敷いて座った。
「お弁当食べようか」
「うん」
「雪都の好きなタコさんウインナー、玉子焼きに、ママ手作りの美味しいミートボールだよ」
「わ~い! ミートボール大好き」
元気よく答える雪都は、本当にあの人によく似てる。
美しい顔立ちをそのまま可愛らしくしたような……
この子のパパは紛れもなく「九条 慶都」さんなんだ。
雪都にはパパのことは詳しく話していない。
ただ……
亡くなってしまったとか、離婚したとか、そんな風には言えなくて。
理由があって別々に暮らしてる……そう伝えてる。
今はパパのことをあまり聞いてこないけど、いつかは九条さんのことを話さないといけないのか……
その時はどういう風に話せばいいのか……
それとも九条さんのことは雪都にも一生秘密にするべきなのか……
子どもの立場に立てば、どうするのが正解なのか?
そんなことを日々悩みながら、今はただ、この子の成長を見守り、好きな仕事をしながら親子2人で頑張って生きていきたい、一瞬一瞬の幸せを噛み締めたい、そんな思いでいっぱいだった。
「ママ、これ美味しい! ママのお弁当大好き」
「ありがとう~嬉しいなぁ。ママ、雪都に褒められちゃった」
「よしよし」
そう言って、小さな手のひらで私の頭を撫でてくれるその仕草が、何ともいえず愛おしかった。
「ママ、あとでボールで遊ぼ」
「そうだね、ボール遊びしようね。さっ、もう少し食べてね」
「は~い」
2人だけのかけがえのない楽しい時間。
私は、毎日、雪都に癒されてる。
何があってもこの子がいるから頑張れる。
いっぱい幸せをもらってるよ。
それに、私は母として、人間として……子育てを通してすごく成長できてる気がする。
そう思うと、自分を産んでくれた母に、今さらながら感謝の思いが溢れ出す。
母は、私が小さい頃に父と離婚した。
体が弱かったせいもあって、体調を崩すことも多く、それでも必死に仕事をして、私を大切に育ててくれた。
その苦労は到底計り知れない。
ある時、そんな母を見かねて、近所の知り合いの人が陶芸教室に誘ってくれた。
昔、学生時代に陶芸に興味を持っていたらしく、母も唯一その教室には喜んで参加するようになった。