午前二時。イギリスの方角にて野営を展開していたサラフィナとザライン、ブロングがミミズク死亡の勧告通知書を受け取った。ブロングは信じない…というような顔で硬直しており、ザラインも同様。サラフィナは、涙も流さず、ただただ驚きの表情でそこに立ち尽くしていた。やがて声を流して泣き始めた。
「ミミズク……、あなたのおかげで…元気を出すことができました…安らかに眠ってください……」
サラフィナ一行のイギリス扉突入があと2時間まで迫っていた。
カムイはミミズクの気配が消えたことをいち早く感じ取って、しかし、それでもスピードを緩めることなく、敵の本陣へと突撃していた。その時、2つの新しく、禍々しい気配が飛び降りた。左は片方しか角が生えておらず、その角が異様に長い。青白い肌は彼が人間以外の人種であることを示しており、ターバンを巻いている。一方右の女は白いフードをかぶっており、深くは見えないが、黄緑色と黒色という独特なオッドアイが覗き込んでいる。
「よぉ…。我らはフクローらの穴を埋めるために六角から推薦をもらい魔王から六角に昇進させてもらった、新裏摩天六角だ!」
白フードの女が右手をあげる。思ったよりもチャラい声で喋る。
「自己紹介させてもらうと、私の名はウルドていいます。ちなみになんか魔王の手下気取ってる若輩のこいつの名前はロクロクです。うーんと…、まあなんですから、」
彼女は、そういった瞬間、背中から折り畳み式の混紡を取り出し、前に突き出すと、戦慄の声で、
「通行違反の首、もらいまっせ」
「ウルド、あんま血走んなよ。あと誰が魔王の手下気取りやて?」
新裏摩天六角。強者なことは間違いないが、その強さは未知数だ。しかしここで遭遇してしまったと言うことは戦闘はもはや避けられない。
「それでは、私からいきましょうかね」
その時、混紡が青い光を発光させ、ウルドを包み込む。その瞬間、青い光が鎧へと変わり、ウルドが鎧騎士へと変わった。
「それ、何回見てもかっけーな」
「私の異名は、死の首刈り騎士。その首をもって、フクロー様たちの弔いとします。覚悟!」
その瞬間、地面をドオン!と蹴り出し、リチナの方向へと向かってきた。それをリチナも剣で受け止める。
「ほお…さすがサクサが認める女ですね」
「ああーずるいぜウルド。俺もカムイとカジと戦いてーよ!」
その時、ロクロクも異能力を発動した。その瞬間、ロクロクは右手をバリボリと食べ始めた。まさに異質の光景すぎて、カジとカムイが呆気にとられる。その瞬間、なくなった右手から、銃が出てくる。
「血銃(ブレッドガン)!」
その銃口から発射されたのは血の弾丸。それはカジの方向へと向かっていく。
「もう……俺は足手まといではない!」
眼前に血の弾丸が迫ったとき、カジは右に回避し、さらに速度を速めロクロクの方向へ向かっていく。そして、銃口が向けられた瞬間、左に回避し、顔に回転蹴りをお見舞いする。ーしかし、そこに入ったのは、一撃ではなく、防御だった。右からの攻撃を、左手一本で受け止めたのだ。
「ふっ!やり投げといくか!」
絶体絶命を覚悟したその時、
「カムイ流剣術24番」
剣を立てに持ち、鍔に手をかけ、刀身をギラリと覗かせる。そして瞬き一つでロクロクの眼の前に立ち、頸動脈に刃を向け、スパッと音を立てて斬る。
「蚯蚓斬!!」
「かハッ!?」
その時、一瞬の沈黙が訪れ、次の瞬間、激しい音を立てながら倒れ、すぐさま虫の息になる。
「ちょっと……ちょっと!!何やってんのよ!ロクロク!何負けてんのよ!……くそっ!!」
その瞬間、ウルドがリチナとの剣戟を避け、王宮の方向へと去っていった。
「この借りは……異界戦争で返す!」
「……大丈夫か、リチナ」
「ええ、」
その時、カムイが剣を磨きながら言った。
「……とにかく、いったん報告だ。」
「帰るぞ」








