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主人公の字幕は→『』 これです。表記忘れましたすみませんm(_ _)m
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兄は嫌いだ。
理由は早い話、兄が私のことを嫌いだから_
「…ノーラン。お前も知っている通り、ヘリス家の者は代々兵士と決まっている。とくに長男はな」
「分かってるって。俺はやるよ、兵士になる」
「でもなノーラン。聞いてくれ。父さんは、お前に無理はさせたくない。辛くなったら戻ってきてもいいし、お前には妹達だっている。託したってあの子は受け入れてくれるだろう。そして第一、百年も平和が続いているんだ。まだ開拓地に行くやつは腰抜けだの世論はあるが兵士の必要性も徐に落ちてくる。本当に、やりたくないのなら…」
「いいよ父さん!やるって言ってるだろ…父さんのようになりたいんだ。それに、あいつらに任せることなんて出来ない。俺がやらないと」
「…そうか。ノーランは優しいな。父さんの杞憂だったみたいだ。もう戻っていいぞ」
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『お兄ちゃん、また話してるね…』
「うん。なんの話だろ?」
『きっと兵士とかの話だよ』
妹のジュニーと二人、地べたに座って待っていた
ドア越しの籠もった声が微かに聞こえる
最近、兄と父が話すことが増えた
それは、当たり前と言えば当たり前になってしまうのかもしれない
兄はもうすぐで12歳
兵士になるか、開拓地へ行くか選ばなければいけない歳だ
そして兄はほとんど選択は決まっているようだった
私達の姓は、父譲りの ”ヘリス”
ヘリス家は代々兵士の道を選んでいた
兄の性格上、そういうことには忠実なのだろう
それを咎めたりだなんかはするつもりない
だって私もそうなのだから
『ねぇジュニー、ジュニーは12歳になったらどうしたい?兵士になる?』
「えっと…兵士かあ…」
『まだ分からない?』
「うん…でも、お兄ちゃんやお姉ちゃんと同じ事やりたい!」
『ん、そっか。嬉しいよ』
私も妹も、勿論兄も、きっと兵士になる
それがヘリスとしての運命なのだろう
不思議と悪い気はしなかった
兵士になる選択は消去法なんかじゃない
憧れなんだ
そして考えてみれば、私の中にはいつも父という兵士がいる
憧れの対象
追いつきたい
追い越したい
絶対的な存在
しかし、明確には知らない
それこそまるで虚像のように
そのような強い想いが、兄や妹にもあるか
それはきっと然程重要ではないのだと思う
自分の為に頑張れるのがきっと一番なんだ
「お姉ちゃん。お姉ちゃん!」
『え?えっ?』
「お姉ちゃんまた何か考えてたでしょ。話しかけても答えなかったもん」
『ご、ごめんね。何?』
「もうお兄ちゃんお話終わったみたいだよって。ほら、後ろにいるじゃん」
『うわっ本当だ?!いつの間に…』
「床に座るなって何回も言っただろ…」
戻るやいなや私達に悪態をつくと
自身は傍にあった椅子に座った
木がギシッと鈍い音を鳴らす
「ミロアも考えてる時は周りの声聞こえなくなる癖そろそろ治せよー、そんなんじゃ兵士になっても苦労するぞ」
兄は椅子から垂れる足を左右に揺らし
机の木目を指でなぞりながら
目も合わせずそんなことを言ってきた
その態度に少しだけ感情が揺れたせいか
『分かってるよ。あたしだって…』
と、否定すら出来ない、情けない言葉しか出せなかった
『もう良いよ。ジュニー、お外行こう』
「うん!」
「待て、ミロア!」
『?』
私が地面から離れた瞬間
兄はらしくもなく慌てた様子で
勢いよく椅子から立ち上がった
そこから4、5秒間止まった後
「…母さんが、お前を呼んでた」
と声を絞り出した
『分かっ…た。ちょっと待っててね』
兄の姿に私もほんの少しの動揺を隠せずにいた
きっと、他になにか言いたいことがあったんだと思う
だけど言えなかった
それは何故か?
その理由を考えられるほど
まだ私は賢くはなかった