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ruruha
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横で快が呟く。
「…スーツ?」
「恭也、行くよ」
陽雅さんは上機嫌にそう言い、俺の腕を掴んで歩き出す。
「ちょ、ちょっと」
外に出て歩き出すと、陽雅さんが問う。
「お友達が心配?」
「まぁ、少し」
「今からは俺と恭也の時間でしょ? だから俺に集中してよ」
笑顔ながらも、少し寂しそうな顔をする陽雅さんに俺は頷く。
「分かりました。ところで、どこに行くんですか?」
「それは着いてからのお楽しみ」
陽雅さんはニコッと笑って歩く速度を早めた。
「え〜、教えてくださいよ〜」
「ダメだって〜」
楽しそうにそう言う陽雅さんに俺はついて行った。
_________
恭也と陽雅さんが出て行き、俺と零斗さんだけが残る。
零斗さんはただ立ち尽くして、俺を見つめている。
ため息をつきつつ、零斗さんに近づく。
「何突っ立ってるんですか」
その時、零斗さんの感情が見えた。
好意と罪悪感と困惑のオーラ。
好意のオーラがすごく強い。
それにこの好意は、俺に向けられた好意。
分かるんだ。フィールズには。自分に対しての好意はお酒みたいに、酔いそうになるから。
「あ…っと…」
零斗さんは、真っ直ぐ俺に体を向けた。
「この度は失礼な事をしてしまい、大変申し訳ございませんでした」
零斗さんは深々と頭を下げる。
「あっ…そんな律儀に謝らなくても…」
俺の言葉を聞いて、零斗さんは顔を上げる。
「でもほら…悪ぃ事したから…ちゃんと謝らねぇとって…」
「それでスーツですか?」
「誠意を持って謝るならスーツだろ? だから買ったんだよ。昨日」
「買っ…」
(わざわざこの為に?)
「ホント、悪かった」
零斗さんは再び頭を下げる。
「いいですよ。お腹空いてたんですよね。なら、しょうがないです」
会うまではそんな事思ってなかったのに。
しょうがないなんて絶対思わなかったのに。
この人からの好意のオーラのせいで気が緩んでしまった。
「…ありがとな」
零斗さんの口元が緩んだ後、二人の間に沈黙が走る。
「じゃあ、そろそろ…」
そう言いかけた時、俺の言葉を遮るように零斗さんが言う。
「ケーキ、あるんだけど」
「ケーキですか?」
「お詫びの…ケーキ」
零斗さんは冷蔵庫からケーキを二つ持ってくる。
「あの…良かったら一緒に…食べねぇか?」
そう言う零斗さんの頬は少し赤い。
「…いいですよ」
期待と不安のオーラが見えて、断れなかった。
ソファーで並んで座り、ケーキを頬張る。
テレビを付けていてくれたから気まずさは薄れていたけど、やっぱり少し気まずい。
何か話すべきか悩んでいると、零斗さんが口を開く。
「あおとはいつからの付き合いなんだ?」
「えっ?」
「こんなとこ乗り込んで来たし、″幸せになって欲しい″って言ってただろ。相当仲良いんだなって」
「あぁ…小学校からずっと一緒なんです」
「は? そんな昔から?」
「はい。入学してから、ある程度グループとか出来始めたんですけど、俺、人見知りだったから誰にも話しかけれなくて。自分の席で俯いてたら、恭也が話しかけてくれたんです」
「そうなのか」
「はい。まぁ、恭也は自分が話しかけたって覚えてないみたいですけど。俺、あの時すげぇ嬉しくて。小学校の事とか全然覚えてないのに、その事だけ鮮明に覚えてるんです」
零斗さんは俺の話を黙って聞いている。
そんな零斗さんを見て、続けて言う。
「それから大学までずっと一緒で。まぁ、高校と大学は俺が勝手に同じにしたんですけどね」
ニコッと笑うと、零斗さんは無愛想に言う。
「そうかよ」
嫉妬のオーラ。
自分から話振ったのに。
「まぁ、最近は陽雅さんばっかりで全然構ってくれないんですけどね」
俺が苦笑いすると、零斗さんがボソッと呟く。
「…俺がいつでも構ってやるよ」
「え?」
「…なんでもねぇよ」
照れのオーラ。
恥ずかしくなって取り消したのか。
耳が赤くなっている零斗さんの横顔を見ていると、ふと思い出す。
そういえば俺も、謝らなきゃいけない事があったんだった。
「…あの、この間は陽雅さんと間違えて怒鳴り散らかしちゃってすみませんでした」
「あぁ。別に気にすんなよ。その後熱吸っちまったし」
「熱ですか?」
「あぁ。俺、サーモって言って人の感情の熱吸って生きてんだよ。この間はお前の怒りの感情を吸った」
感情の熱。
確かにあの時、怒る気が失せていたかもしれない。
俺は感情が見えるけど、この人はその感情を吸うのか。
なんだか少し、似ている。
「そんなに美味しかったですか? 俺が動けなくなるくらい吸ってましたよね」
「まぁ、怒りの熱だからちょっと辛かったけど、お前の熱は美味かったわ」
零斗さんの口元がほのかに緩む。
「そうですか」
ケーキを頬張ると、横から何かオーラを感じる。
ふと目を向けると、空腹のオーラが見えた。
(熱の話したからお腹空いちゃったのかな…)
零斗さんは、俺をじっと見て、何かと葛藤しているようだった。
(もしかして、また俺の熱吸おうとしてる?)
早くケーキ食べて帰ろう。
俺はケーキをばくばくと食べ、完食する。
ふと零斗さんの方を見ると、零斗さんと目が合う。
零斗さんは俺の口元を見た後、こっちへ寄る。
(やばい…吸われる…!)
ぎゅっと目を瞑ると、口元に零斗さんの指が触れた。
目を開けると、零斗さんの顔が近くにあった。
「…クリーム、付いてたから」
零斗さんはそう呟いた後体を戻し、手をティッシュで拭う。
「…ありがとうございます」
もう帰ろうとしてたのに、何故か帰る気にならない。
零斗さんのオーラが見える。
好意と空腹と我慢のオーラ。
(帰った方がいいのに、放っておけない…)
「…吸います? 俺の熱」
「は?」
自分でも何言ってんだって思う。
でも、何だか放っておけなくて。
「…少しなら、いいですけど」
「ホントにいいのか?」
零斗さんが食い入るような目で俺を見る。
「いいですよ。でも、少しだけですからね」
「分かった」
零斗さんが俺の傍により、顔を近づける。
俺が目を瞑ると、少しして、俺の唇に柔らかい感触が当たった。
零斗さんの喉からゆっくりゴクゴクと何かを飲む音が聞こえる。
少しして、零斗さんの唇が離れた。
目を開くと、間近で零斗さんと目が合う。
逸らそうとしたのに、何故か目が離せない。
次の瞬間、再び俺の唇に零斗さんの唇が触れた。
また吸われると思ったのに、口の中に零斗さんの舌が入り込む。
「んっ…」
キスだ。しかも、深いキス。
抵抗する気は、不思議と無かった。
多分、この濃い好意のオーラのせいだ。
酔ったみたいに体に力が入らなくて、今なら何でも受け入れてしまいそうだ。
「んっ…」
零斗さんの手が、俺の服の中に入り込む。
肌に手が触れた瞬間、俺は我に返った。
そして、零斗さんの体を押して立ち上がる。
「俺、帰ります」
そう言い残し、俺は慌てて家を出た。
心臓がバクバクと音を立てる。
(やっぱりあんな所、行っちゃダメだったんだ)
俺は深呼吸をして、歩き出した。
コメント
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灯依さん、第15話「お詫びのケーキ」読ませていただきました! 零斗さんがスーツを着てちゃんと謝罪したシーンにぐっときました。誠意を見せようとする不器用さが素敵です。そして「クリーム、付いてたから」って...あの距離感、心臓に悪かったです(笑) フィールズの能力で好意のオーラに見惚れてしまう主人公の心理も良かったです。最後の「俺、帰ります」で現実に引き戻される感じ、続きが気になります!