おさら 様より、DV中日
今日もまた殴られた。
「痛いなぁ…また痣ができちゃいます…」
日本は悲しげな顔で傷の手当てをする。
このルーティーンにももう慣れてしまったもので、くるくると包帯を巻き、殴られた箇所を隠した。
彼はひどく嫉妬深い。
日本が自分以外の人物と話すだけで、あり得ないほど怒る。
仕事の話すらできず、最終的には勝手に辞めさせられ、いよいよ家にいるしかないのだ。
今日は買い出しに行ったとき、元同僚に声をかけられたせいで殴られてしまった。
「…もう寝なきゃ」
彼がいるであろう寝室へ向かい、日本は小さな一歩で歩んでいく。
本当は一緒の部屋で寝るのは怖いし、今のうちに逃げ出した方が良いのだろう。
でも、こうして痣が増えていくたびに鎖が増えているような気がしてならなくて、日本が【逃げる】という言葉を浮かべることはなかった。
ギィ…と蝶番の軋む音と共に、暗い寝室へ光が差す。
息を飲んでベッドに近づくと、中国に抱きしめられた。
「…ごめんネ、日本…我、またやっちゃったアル… 」
殴られる前に押し倒される時のような力強さや恐ろしさはなく、雨の日に捨てられた子犬のような悲しい顔で、とても優しい抱擁。
「…いいんですよ。あの人と話してしまった私が悪かったんです、私こそごめんなさい」
「ありがとうアル…日本、今日はもうゆっくり休むヨロシ。明日は我がご飯作るから」
「いいんですよ、働いて私のことを養ってくださっているんですから」
あなたが作ったら、何が入っているかわかったものではない。
そんな言葉を吐けるのならば、日本はとっくに中国から逃げ出している。
もはや習慣付いた言葉をかけて、優しく抱きしめられたまま、ふかふかのベッドへ倒れ込む。
硬い床で転がされている時とは、まるで扱いが違う。
でもやっぱり中国のことは好きだから、密着して眠ることに拒否感はあっても、心のどこかで安心している自分はいる。
「おやすみなさい、中国さん」
「おやすみアル、日本」
ちゅっと額にキスを落とされ、日本と中国は眠りについた。
翌朝、 日本が目を覚ますと目の前には中国がいて、抱きつかれたままだったことを思い出す。
眠っているはずなのに力が強く、抜け出そうとしてもびくともしなかった。
「困りましたね…朝ご飯が作れません…」
日本は 中国の腕を退かそうとするが、どれだけ力を込めても抜け出せない。
なんとかもう少しで隙間が、という時、背後からものすごい力で抱き寄せられた。
「我から逃げてどこに行く気アル?日本…」
耳元で囁かれた言葉からは怒りが読み取れて、日本は心臓がドクドクと早鐘を打ち始めている。
「ち、違いますっ!朝ご飯を作りに行こうって思ったんですけど、中国さんの腕が外れなかっただけですっ!に、逃げるわけないじゃないですか!わ、私は中国さんのことを愛してるんですよ!?」
恐怖で時々上擦りながらも、日本は事実を述べた。
「逃げるわけがない」ではなく、「逃げられるわけがない」と思っているので、本当にその気はない。
中国は黙り込み、背後なので表情がわからなかった。
日本は小さな体を震わせながら、また殴られないことを祈る。
「…そうアルか!そうだよネ、日本が我から逃げるなんてこと、あるわけないよネ!だって我たちは“恋人”だし!疑ってごめんアル。今離すヨ」
ぱっといとも簡単に外された腕は、日本のことを随分締め付けていたらしい。
腕を外された瞬間、とても息がしやすくなった。
お腹を圧迫するほどの力で抱きつかれていたという事実に、眩暈がしてくる。
「それじゃあ、朝ご飯作ってきますね」
「待つアル」
「…はい?」
「今日は我が作るって言ったヨ。お昼はなんとかしてもらうしかないかもだけど、朝食と弁当、夕食は我がやるから」
昨夜の宣言を忘れていなかったらしい中国は、キッチンへ向かう日本の手首を掴んだ。
日本はどうしようか迷ったものの、無理に断っても波風を立てるだけ。
「…じゃあ、お願いします」
「任せるアル!」
流石に毒は混ぜられないだろうと思い、諦めて承諾した。
中国は料理下手というわけではないので、まずいものは出ないはずだ。
「日本は座っててくれアル」
「あ、お手伝いしますよ?」
「大丈夫ヨ。ゆっくりしててほしいアル」
「そうですか…なら、お任せしますね」
にこにこしながら手際良く作業する中国を見ていると、暴力を振るわれる前の優しかった頃を思い出してしまう。
仕事を辞めさせられる前は2人で交互に作ったりして、仲良く家事をしていたのに。
いつかはまた、そうなれたらいいな。
日本はそう思いながら、あの頃と変わらない美味しそうな朝食を口にした。
中国が仕事に行って数時間後。
日本は買い出しに行こうと、エコバッグを手に取った。
「今日は声をかけられないといいな…」
ガチャリと家の鍵を閉めて、日本は見慣れた道を歩く。
今日は中国が作ると言っていたが、買い出しは自分に任せて欲しいと申し立てた。
唯一外に出る方法を奪われることだけは避けたかったのだ。
彼のことだから、中華料理か日本料理を作ってくれるはずと予想して、日本は食材と切れた洗剤なども購入する。
もう少しで無事に買い物が終わると言うところで、日本にとって絶望的な状況に陥った。
「あ、日本さん!昨日ぶりですね!」
「ひっ…」
前日も声をかけてきた、元同僚である。
「日本さん今日もお買い物ですか?真面目ですね〜。俺まとめ買い派なんですけど、昨日買い忘れちゃってて〜w」
決して悪い人ではない。
軽いノリで声をかけてくれて、話題も話しやすいものばかり。
引き出しが多いから、話していて楽しい。
と、以前は思っていた。
今となっては恐怖や焦燥感、吐き気などを感じてしまって、今すぐにでも帰りたいとしか考えられない。
話に応じたら殴られるのだ。
「日本さん?どうしました?なんか体調悪そうですけど」
本当なら無視を決め込み、黙って会計をしなければならない。
でも、優しい日本はそんなことできなかった。
「…大丈夫です、ご心配ありがとうございます。今急いでますので、これで失礼しますね」
「そうなんですか?日本さん無理しがちなんで、気をつけてくださいね!それじゃ!」
これでも精一杯言葉を削っているのだが、中国は絶対に納得しないだろう。
盗聴器を仕掛けられていることには気づいていても、外せばまた殴られる。
彼との会話を終え、店員との会話を避けるためにセルフレジへ向かった。
昨夜の傷が痛んだ気がする。
更に数時間後、日本は震えながら家事を終わらせ、後は中国を待つのみ。
暖かいココアをちびちび飲んで、時計が刻む音を黙って聞いていた。
包帯は足りるかな、買っておけばよかったな、顔を殴られたらどうしよう、また痣が増えるのは嫌だな
ぐるぐる頭に浮かんでくるのは殴られた後のこと。
そのうち玄関から鍵が開く音が聞こえ、カップを置いて玄関まで出迎えに行った。
「お、おかえりなさい…中国さん…」
「ただいま、日本。なんで怒ってるか、わかるよな」
口調が変わり、ひどく威圧的な気配。
昨夜も同じだった。
中国はとても怒っている。
「ひっ…あ、ご、ごめんなさい…」
「俺謝れって言ってない。はぁ…何回も言ってるのに、なんでわからないんだ?お前は賢い子だから、昨日と同じことをするとは思わなかった」
「か、彼の方から話しかけてきて…」
咄嗟に謝って言い訳をしてみても、中国には無駄だった。
「無視しろって言ってただろ。それを破って会話に応じたのはどこの誰だ?」
「わ、私です…」
「そうだよな。俺、約束を破るやつは嫌いなんだ。…こっちに来い」
細い手首を無理矢理掴み、骨が軋むほど強く握られる。
「いたっ、や、やですっ!」
「嫌とかそういう問題じゃない」
怯える日本の手首を無理矢理引いて、中国はリビングへと連れて行く。
日本の頭の中は恐怖で埋め尽くされた。
「うッ…」
リビングの硬い床へ転がされ、その拍子に少し頭を打った。
そして中国が上に乗り、
「なんでお前はすぐ浮気するんだ?なぁ」
鈍い音を立てて、日本の頬を殴る。
「い゛ッ…!や、やめてくださッ」
「何回言っても何度躾けても、お前は人を誑かして…」
容赦のない拳が日本へ降った。
骨が折られそうなくらいに強く、抉るような痛み。
昨夜痣になったところも殴られて、日本は流れる涙を止められない。
「いた゛い゛ッです゛ッ、あ゛ぁッ!もッ、やめて゛ッ! 」
「痛い?そんなの俺が知ったことじゃない。お前が浮気するからは悪いんだ!俺の方が何倍も傷ついた!」
赤く腫れて軋んでいく体が痛くて怖くて、日本は必死に懇願した。
泣き叫んで、やめてやめてと訴えた。
それでもやっぱり、中国が手を止めることはない。
その話を聞いて、韓国はひどく驚いた。
「…じゃあ、今僕と喋ってるのやばいんじゃないの…?」
「はい。かなりやばいですね」
「ねえ、やっぱり別れた方がいいよ。人と話すのがダメって異常すぎ」
「わかってますよ、そんなこと。とっくの昔からね」
「じゃあなんで別れないの?」
日本はコーヒーを一口啜り、包帯やガーゼが目立つ穏やかな顔でこう言った。
「だってあの人、私がいなきゃダメになっちゃいますもん」
中国はひどく嫉妬深く、ひどく臆病な男なのだ。
コメント
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日帝ちゃん敗戦しちゃってフランスに🇫🇷×××されちゃったりしてr18
身長差ありでフランス185センチ設定がいいです。
フランス×日帝いいですか?