「明彦と麗が、結婚?」
アメリカにいる麗音は一人、妹の麗から一週間ほど前にきていたメールを見て、スマートフォンを取り落としそうになった。
麗からのメールはいつも麗音を褒め称えるものでしかなく、後回しにしていたため、今確認したのだ。結婚式はもう、終わっているころだろう。
頭が良くない麗からのメールは要領が得ず、おそらく本人も現状がよくわかっていないため意味不明だが、棚橋ではなく明彦と結婚したということはわかる。
(どうしてこうなったの?)
麗は麗音のために、棚橋と結婚させる予定だった。
最初は麗音に来た話だったが、あんな気色悪い爺さんと結婚だなんて冗談ではない。
だが、棚橋の提案してきた資金が家業の存続に必要なのは確か。
だから、自分に心酔する麗の前でわざと怯えながらも気丈に振る舞ったのだ。
当然、麗音の奴隷である麗は自分から棚橋を誘惑しに行った。
あの手の爺さんは、おぼこくて純粋で、人を疑うことを知らぬ愚かな麗を絶対に気に入るとわかっていたし、実際上手くいっていた。
なのに、何故?
「許さない」
それは純粋な怒り。
麗は麗音の物で、使用人で、奴隷なのに。よりにもよって明彦と結婚?
不幸な麗は、いつだって麗音に縋っていなければならないのに、どうして明彦と結婚などするのだ。
「あの子が私を置いて、幸せになんてなっていいわけがないじゃない」
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