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#シリアス
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「パパ、私、次のテストで絶対に順位を上げたいの。……特訓に付き合ってくれる?」
思春期の冷戦を経て、ひまりから歩み寄ってきた。
俺の心はマンゴーを切り刻んでいた夜より熱く燃え上がった。
「……おう。任せとき!ワシら黒龍組の全知全能を挙げて、お前を学年のトップへ押し上げたげるわ」
事務所の応接間は、一夜にして進学塾の自習室へと改造された。
「和幸、お前は英語のリスニング担当や。長治、お前は漢文の暗記を徹底させろ」
他の若い衆は、ひまりが集中を欠かんよう、事務所の半径100m以内の騒音を「平和的」にシャットアウト。
俺は、ひまりが解いた数学の採点を担当。
正解するたびに「……見事や」と重々しく頷き
間違えれば「……このxは、裏切り者やな。次は逃がすなよ」と極道流の解説を加えおった。
「パパ、この歴史の年号、全然覚えられないよ……」
夜中の2時。疲れ果てたひまりが机に突っ伏した。俺は静かに、特製の「脳に効く」ココアを差し出した。
「……ひまり。歴史いうんはな、ただの数字の羅列やない。そこにおった男たちの『意地』の記録や。…この平清盛いう男もな、最初は小さな組織やった。それがどうやってシマを広げたか……そう考えれば、ドラマが見えてくるやろ?」
「…ふっ、パパが教えると、歴史がなんだか抗争事件みたいに聞こえるね」
ひまりがクスクスと笑う。
その笑顔を見て、和幸や長治も、教科書を片手に「自分らも『鳴かぬなら、殺してしまえ』の気持ちで暗記しますッ!」と気合を入れ直した。
◆◇◆◇
試験当日
俺はひまりの筆箱の中に、こっそりと「合格」と彫り込んだ特製の鉛筆を忍ばせた。
「…ひまり。結果を恐れるな。お前の後ろには、ワシらがついとる。……暴れてこい」
「パパ、テストは暴れるところじゃないよ! ……でも、頑張ってくるね!」
元気に登校するひまりの背中を見送りながら、俺はふと、自分の手の平を見た。
かつては何かを奪うために握りしめていたこの拳が、今は娘の未来を掴むための「支え」になっていた。
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