テラーノベル
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あれは、小学生の頃。
(ママとパパの言うことを聞かなきゃ、全部私のせいになる)
そんなふうに思ってた。
「言ったでしょ。余計なこと、しないって。どうしてあなたは、いつも私を困らせるの?」
ママの怒鳴る声。
寒いベランダ。傷が痛い。部屋は明るくて誰かいるのに。
その話は、誰にも話したことがない。
「ミョウジって、なんか……空気読めないよね」
「先生に告げ口したんじゃないの?」
学校でも、息をするみたいに嫌われていった。
静かに、気づかれないように、悪意の手がのしかかる。
笑えばバカにされ、黙れば無視される。
誰にでも優しいふりをしていれば、何も起こらないと思っていた。
だから、覚えた。
『大丈夫』って、笑う技術を。
――でも、誰かに見抜かれる日がくるなんて、思ってなかった。
――
『……ふーっ、やっぱ出水先輩と組むと楽だわー。雑魚処理もスムーズ』
「“雑魚処理”って言い方よくないなー。ほら、あいつらだって頑張ってたじゃん?」
『でも、相手トリオン兵だよ?人間じゃないし』
笑いながらそう言って、ナマエは小さく伸びをした。
今日の任務は近場のゲート対応。
ナマエと俺のふたりでサクッと終わらせた帰り道、本部の前の通りを並んで歩く。
「……なあ、ナマエ」
『ん?』
「このあと、ちょっと寄り道しない?近くに、新しい雑貨屋できたって聞いたんだけど」
『え、雑貨屋? 先輩そういうの行くの?』
「いや、行かないけど。……ナマエが好きそうだなーって、思っただけ」
『…………なにそれ。……もしかして、デート?』
ナマエがクスクスと笑う。
その目が探るように細められているのに、俺は笑ってごまかした。
「違う違う。任務後のごほうび、的なやつ?」
『……ふーん。でも、まあいいよ。暇だし、付き合ってあげる』
そう言ったナマエの笑顔は、やっぱり少し“作った”ものに見えた。
でもそれでも、昨日の顔よりは、ずっとマシだった。
(少しずつでいい。無理にこじ開けるつもりはない)
(でも、もうちょっとだけ……ナマエのこと、知ってもいいよな)
そう思いながら、俺はナマエの歩調に合わせて、ゆっくりと歩いた。
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