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俺は昨日、天使型モンスターチルドレンの『コユリ』を仲間にした。
まず、彼女が仲間に加わったことで旅に出るための条件が満たされた。
次に旅の準備が整った。(コユリが一番手伝ってくれた)
そして最後に、異世界へのゲートを開くための必須魔力『モンスターエナジー』が満タンになった。(コユリが一番供給していた)
その日の夜。俺たちは『仲間集めお疲れー!』という不思議な宴を催した。(カレーパーティーである)
ちなみに、その宴の名前を考えたのはミノリ(吸血鬼)である。まったく、俺に頼んでくれれば、もう少しマシな名前になったのに……。
まあ、みんな楽しそうだったから良かったけど。というわけで旅の出発まであと一日となった。
しかし、それと同時に一つ問題があることに気づいた。
それは……旅の目的がまったく分からないということである。
俺は、つい勢いで旅に行くことに賛成してしまったため、何のために旅に出るのかを全く知らない。
だから、俺たちはミノリにそのことを訊こうと、その日の晩にミノリに内緒で話し合って決めた。
____朝八時……。それについての話し合いが始まった。これは俺たちが旅に出る理由、目的、期間、そして、仲間がこれからも増えるのか? などについて知るために行うものである。
では、そろそろ始めるとしよう……。
「えー、これから『旅に出る目的を知りたい勢の、旅に出る目的を知りたい勢による、旅に出る目的を知りたい勢のための話し合い』を始めようと思います。えー、何か質問はありませんか?」
こんな感じで話し合いがスタートした。ちなみに俺たちはミノリの反対側に横一列で座っている。つまり、一対五……である。
しかし、ミノリはキョトンとした表情を浮かべていた。
俺たちに旅の目的を伝えていれば、こんな話し合いが始まることもなかったのだが、当の本人はそんなことなど、これっぽっちも考えていないようだった。
俺がそんなことを考えていると、スッと手が挙がった。
「はい、ツキネ」
ツキネ(変身型スライム)は俺の方を向くと、こう言った。
「兄さん、とりあえず……一発殴ってもいいですか?」
ツキネが俺に対して、なぜそんなことを言ったのか。それはおそらく……いや、確実に『アレ』が原因だろう。
「それは、俺がリン○ーンが『ゲティスバーグ演説』で言った言葉を使ったからか?」
「はい、そうです。ちなみに、最近ではリン○ンというらしいですよ」
どうやら、ツキネはこういう細かいことに関して非常に敏感らしい。まるで、家計をやりくりする主婦のように……。
「それについては謝るが、お前なら、この話し合いのタイトルは何にする?」
事の発端は、俺がこの話し合いのタイトルを決めていなかったせいだ。しかし、ツキネなら、どんなタイトルにするのだろう? それが気になった俺は、ツキネに訊いてみることにした。
「そうですね……私なら……」
ツキネがタイトル的な何かを言おうとした時、ミノリ(吸血鬼)が。
「あんたたち! 話し合いをする気あるの! ないの!」
立ち上がりながら、怒鳴った。
俺たちがそろってミノリの方を見ると、腕を組み、頬を膨らませながら、こちらを見ていた。
どうやら、ミノリは話し合いが一向に進まないことに対して、しびれを切らしたようだ。
俺としたことがつい、本題を見失ってしまった。情けないな……俺は。
俺たちはおとなしく座った。その様は主人の言うことを聞かずに怒られてしまった犬のようであった。(お互いを横目で見た時、そう思った)
こうして話し合いは再開された。まずは旅の目的について……と思ったが少々時間がかかるため、とりあえず今知りたいことをまとめた紙をミノリに渡した。
『………………』
しばらく沈黙が続いた後、ミノリが口を開いた。
「じゃあ、一つずつ説明していくわね」
「ああ、よろしく頼む」
ミノリは、コホンと咳払いをすると話し始めた。
「まず、旅の目的について。あたしたちはこの世界とあたしたちの世界を救うためにここに来た。これは大丈夫ね?」
「ああ、俺は大丈夫だ。けど、みんなは……」
俺がそう訊きかけた時、シオリ(白髪ロングの獣人)がビシッと親指を立てたため、問題ないことが分かった。
どうやら、分からないことがあった時にだけ質問するらしい。
まあ、俺を除いてここにいる全員はミノリと同じ世界からやって来た存在だから、大まかなことは分かるのだろう。ミノリが話を続ける。
「あたしたちの目的は世界を救うこと。じゃあ、どうやったらそれが実現するのか……。その答えは『あたしたちがこの世界の人間と結婚して子供を作ること』よ。そして、それこそがあたしたちモンスターチルドレンの使命であり、存在理由よ」
「…………はあ?」
旅をすることにまったく関係ない内容だったため、俺は思わず声に出してしまった。
俺たちの世界の人間と結婚して子供を作ることが、こいつらの使命……だと?
仮にそうだったとして旅に出る必要があるのか? いや、そもそもその年齢に達していない子どもたちをわざわざこの世界に転移させる必要があるのか? 俺がそのようなことを考えているとシオリが俺の左の頬をつついてきた。
「ん? どうしたんだ? シオリ」
俺がシオリの方を向くと。
「ナオ兄、もしかして私たちがどうしてまだ子どもなのか、分からないの?」
シオリがそう訊《き》いてきたため、そのことについて考えてみた。
俺は少しの間、シオリが言ったことを考えた。その後、俺は少し疑問を抱きながらもシオリの問いに答えた。
「……そうだな。確かに俺は、なぜお前たちがまだ子どもなのか分からない。けど、もっと分からないのは旅の目的と、お前たちの正体についてだ」
俺がそう言うと急にみんなが深刻な顔をした。どうやら俺は訊いてはいけないことを訊いてしまったらしい。
しばらくの間、沈黙が続いた。それはカップ麺ができるのを待つよりも長く、校長先生の話より短く感じた。
「……あんたにはまだ伝えるべきじゃないと思ってたけど、どうやら話さないといけないようね」
「……教えてくれ、ミノリ。お前たちが何のために、この世界にやってきたのかを……」
俺は、まっすぐミノリの目を見た。ミノリは少し気まずそうだったが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
ミノリ、早く答えを……! と俺が思った直後に、ミノリはこう言った。
「あたしたちは普通、複数の子供を産むと一年以内に死んじゃうの。だからそれを少しでも改善できるように考え出されたのは、あっちとこっちの世界を自由に行き来できる装置を作って二つの環境に慣れさせることだった。だから、『ダンボール』という名の別次元転送装置が作られた」
「……………………」
「それから……」
「待て……」
「ナオト、話はまだ終わって……」
次の瞬間、俺は我慢していた感情を表に出してしまった。
「なんだよ、それ……! それじゃあ、まるでお前たちが子どもを産むためだけに生まれてきたみたいじゃないか!! お前たちは死ぬために、生まれてきたんじゃない……。生きるために生まれてきたはずだ。そうだろう!!」
俺はいつの間にか泣いていた。お袋の前以外で泣いたことがなかった、この俺がどうして泣いているのかは自分でも分からなかった。だが、一つだけ理解できたことがあった。それは……。