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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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普段から良く喋る奴の言葉は、やっぱり軽く感じるって分かるかな。

それは信用できないって訳じゃない。

どのくらい親しくしているかでも変わるし、その時々で言葉の重みなんてだいぶ違うから。

でも、普段そこまで喋らない奴の言葉ってやつは、貴重だし重みが段違いだ。

誰と誰を比べてるか、もう分かるよな?


「いやー、ふうはやさんプレイスキル高いですね〜」


ペラペラの男がニコニコしながらコントローラーをテーブルに置いた。

マイクラ企画の検証でやっていたPVPはかざね、俺のチームが圧勝に終わった。

少しアイテム差がつき過ぎた所を調整できれば面白い企画になりそうだな。


「アイテム差あったけどなぁ」

「そうね」

「かざねさんもプレイスキル高いよな。俺、勝てる気しなかったんだけど」

「そう?嬉しいこと言ってくれるじゃん」

「悔しいけどほんとに」

「んんんー!なんかさぁ、しゅうとから褒められるって気持ちいいわ」

「なんでだよ」


かざねはそう言って心底嬉しそうに笑った。

それに照れ笑いを返すしゅうと。

チリっと腹の底が疼いた。

その疼きが何を示しているか分かっている。

どうしようもない嫉妬だ。

でも、そんなこと思ったって仕方ないってこともちゃんと分かっている。

そんな物わかりの良い奴になったつもりだった。


「しゅうと、俺は?」

そう言ったのはりもこんだ。

「同じチームの俺にはなんかないの?」

「え?りもこんに?」

「そう、俺に」

「え……えー?なんかって……」

「俺も褒めてよ」


素直にそう言ってしまえるりもこんに、俺は小さな舌打ちを口の中で殺した。

腕を組んで首をひねってりもこんの事を考えるしゅうとに、またジリジリと焼ける様な嫉妬心を覚えるも、表情が暗くならないように振る舞った。


「何もないよなぁ」

「うーん……今のゲームに関して言えば微妙かな……」

「ええー?じゃあ違うことでもいいよ。普段の些細なことで構いませんよ?」

「んん?普段のこと?」

「りもこん、しゅうとを困らせるなって」

「かざねさんはもう褒められてるから良いじゃない。俺だって気持ち良くなりたいのよ」


胡散臭い笑みを浮かべるりもこんに、しゅうとはまたうーんうーんと頭を抱えた。


「んー……実況のとき話が上手い、とか?」

「うんうん、後は?」

「マイクラのアスレチック、上手いよね」

「うんうん!それで?」

「弓も上手い」

「はいはいはい、あとある?」

「あと……あとは。……あぁ、そうだ。りもこんの声、優しいなって思う」

「それ!そう言うのもっと聞きたいなぁ!ゲームとかに関わらない俺の良いところ!」


ええ?

ズルくないか?

かざねだってマイクラの技術を褒められただけだし、俺に至ってはこの会話にほとんど混ざれてすらいないっていうのに!りもこんのやつ、いつもは抜け駆けすんな!とか言ってるけど1番してるじゃねぇか!


「りもこん、お前……」

「しゅうと、他にはある?俺のいいところ」

「ちょ……りもこん、お前なんかおかしくないか?かざねさんっ、助けて!」

「オーケーオーケー!りもこん、これ以上しゅうとを困らせるなら俺もちょっと考えなくちゃならないぜ?」

「えー?だってかざねさんだって分かるでしょ?しゅうとから褒められると気持ち良いって」

「うっ……」

「みんな気持ち良くなりたいんだよ、しゅうと。この意味、分かる?」

「ひっ……」

「しゅうと、ごめん。俺もりもこんの意見に賛成だわ」

「かざねさん完堕ち〜」

「ええっ!かざねさん寝返るの早くない!?」


そのやり取りを傍観していた俺と目が合ったしゅうとは半泣きの表情で助けを求めた。

視線が痛い。

りもこんとかざねの言い分も気持ちもめちゃめちゃに分かるし、俺だってしゅうとに褒められたいし、気持ち良くなりたい。

でも、大好きなしゅうとを困らせるのは違う。

俺はしゅうととりもこんの間に割って入った。


「まあまあ、りもこん。かざねも。しゅうと、マジで困ってるって。やめてやれよ?」

「そんな綺麗事言っちゃっていいの、ふうはや?お前だって同じなんだろ?」

「ん?いや?俺だって褒められるのは嫌な気しないけど、しゅうとを困らせてまで褒められたくないないかな」

「ふうはや……!」

「しゅうと、お前本当にみんなから好かれてるなぁ!定期的に褒めてやってくれよ。それでみんな納得すると思うから」

「……ってか、俺に褒められたからって何だって言うんだよ……」

「あはは!人の価値観なんてそれぞれだろ?」

「……それもそうか。確かに」


興を削がれたのか、りもこんは1つ溜息をついて椅子に深くもたれてそっぽを向いてしまった。

かざねも正気に戻ったように、苦笑いを浮かべて謝ってきた。


「まあまあ、これでOKか?」

「ふうはや、ありがとな」

「んーこれもリーダーの仕事ってことかねぇ」


俯いていた顔を上げたしゅうとと目が合う。

その顔の赤さに面食らって、俺は目を見開いた。

なんなら喉も鳴ってたかも知れないけど、そんなもの意識できる訳もない。


「お前がリーダーで良かった。俺は……そんなお前のこと、尊敬してるし、だ……大好きだ」

「っ!!!」

「……は、恥ずかしいな。これ。ちょ……ちょっと頭冷やしてくる!」


普段ののんびりとした様子とは違う俊敏な動きで部屋を出ていくしゅうとを見送り終わるまで、俺は全く身動き取れなかった。

網膜に残る真っ赤な顔のしゅうとと鼓膜にこびりつく低音。

俺をフリーズさせるには申し分無い威力だった。


「え?ええ?」

「なーんだよ。ふうはやが1番得してんじゃん」

「リーダーはいいねぇ?」

「〜〜あああっ!何で俺の耳には録音機能がついてないんだあああぁっ!!!」

「ざまぁみろ」


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