テラーノベル
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デネス大国に入って三日が過ぎた。今日の昼には目的の山がある領地に入った。 山に入る許可の書類の準備はゼノがしてくれた。領主を訪ねていけば何とかなると軽く考えていた自分が情けない。許可をとる届けが必要なことはわかっていたはずなのに。俺はフィル様のことになると冷静でいられなくなり、正常な判断ができなくなるのだ。
領地に入ってしばらく進んだ頃に、遠くに山の姿が見えてきた。これなら夕方までには着きそうだ。時間もあるし連日走らせて馬も疲れているだろうからと、休憩するために街に寄ることにした。
目の前に見えてきた街へと馬を走らせながら、少し前を行くゼノの背中を見て、俺は苦笑する。
行動を共にするようになった途端に、ゼノが砕けた口調に変わった。俺のことを友のように親しく呼ぶようになった。そして俺にもゼノと呼び捨てにするよう強要してきた。初めのうちは抵抗していたが、あまりにもしつこく言ってくるので面倒くさくなり、今では堂々と呼び捨てだ。
二人になり自分の思うよう動けなくなることを|懸念《けねん》したが、大丈夫だった。
ゼノは馬の|扱《あつか》いが優れていた。俺よりも早く馬を走らせる。俺の馬もゼノの馬につられて足が速くなり、予定よりも早く目的地に着く。ただ馬の体力が心配だったが、元より力を抑えていたのか、俺の馬はどれだけ走らせてもすこぶる元気だった。今までは力を加減していたのかと銀色の毛並みを見て思わず苦笑した。
街に入り、目に付いた広い庭のある宿に行く。出てきた使用人に軽食を頼めるかと聞くと、馬を他の使用人へ預け中へ案内してくれた。
広くキレイな部屋に通されて困惑する。俺たちは軽食を食べて少し休むだけだ。部屋にはベッドまであるが必要ない。その旨を伝えて部屋を変えてもらおうと、出て行く使用人を追いかけた。だがゼノに腕を掴まれて止められた。
「なにをする」
「まあ待てって。部屋を変えてもらうつもりだろ?」
「当然だ。休憩するだけなのに、この部屋は広すぎる」
「あー、まあベッドはいらないけど。でもこれくらいの広さと大きな机は必要だな」
「なぜ?俺たちしか使わないのに?」
「来客がある」
「来客?誰だ」
ここはバイロン国ではない。デネス大国だ。ゼノは誰を招いたというのだ?知り合いがいるのか?
「もうすぐ来ると思うから、とりあえず座って待てよ」
「……」
俺はゼノに疑いの目を向けながら、ゼノに示された椅子に座った。
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