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キルシュトルテ視点
青々とした木々の中、風が吹いて地面に咲く草花が揺れる。奥の方からさらっと草を掻き分ける音がする。魔物だろうか。こんなに魔物が近くにいて危険ではないのかと思うが、当の本人が言うにはここらの魔物はみんな弱いらしく、クエストを稼ぐのに丁度いいのだとか。だからと言って、こんなところに住まなくてもいいだろうと思ったりする。
そんなことを考えていると、いくつかの種類の木で組まれた家が見えてくる。勇者としての活躍に反して、やけに質素だ。
ニキが右手でコンコン、と戸を叩く。
「弐十ちゃーん」
弐十の名前を呼ぶが、特に返事はない。
代わりに、室内からドタドタと早足の音が聞こえる。
ちゃんといた。よかった。
肩に入っていた力が、少しだけ抜ける。
茶色く錆びたドアノブが下がり、ミルクティーベージュの髪が覗く。
「え、おはよう…?」
気の抜けた声で、戸惑いながらも挨拶をされる。
目の下に隈が出来ている。
「は、何お前、寝てないの?」
「いやー、討伐のあとで生活習慣終わっちゃったんだよね」
「隈えぐいよ」
「え、まじか」
「勇者さんしっかりしてくれよ〜」
いつも通りの弐十くんで、ほっとする。
ほら、やっぱりあの噂は本当にただの噂だったのだ。
「………弐十くん」
シードが口を開く。
大丈夫だ。こいつが人を殺すわけない。
「ん?」
否定の言葉を期待して、問いかける。
「勇者が、人を殺したってーー…」
弐十くんの顔が僅かに強張る。
「……俺。」
「は?」
気づいたら、距離を縮めていた。
右手が、強く胸ぐらを掴む。
「もっかい、言って。」
こいつが人を殺した?そんな訳ない。
お前なんかに、人が殺せるわけないのだ。
そうだろう、なあ。
しかし、弐十くんは俺の意思に反して、ケロッとした様子で答える。
「勇者が、人を殺したこと、でしょ。」
「ー俺がやった。」
「は?お前さー…」
「ストーップ!一旦まって…」
ニキが俺らの間に割って入る。それを合図に俺も我に返る。
頭に血が上ってしまい、衝動的に動いてしまった。
「えーっと…、弐十ちゃん…?」
「ん?」
ニキが弐十くんに問いかけると、にっこりと口角を上げて返事をする。
何笑ってんだよ。
「なんかのドッキリやったり、せんの…?」
「ごめんね」
「まじで言ってんの?てか、何笑ってんの?」
「結構重大だよ?」
「…ごめん」
「謝ってばっかじゃ分かんないんだけど、」
「っごめん、俺この後やることあるからさ」
「は、おま…っ」
会話を強制的に終えられ、ドアを閉められる。
ガチャリと音がなり、鍵を締められたのだろうか。
「…何が起こっとるん」
「弐十ちゃんが…?嘘やんな…」
「いや嘘だろ」
「え!?!?」
爱 . @ 新垢
桜奈
ニキがこちらを見て驚く。
何面白い顔してるんだ。そんなに驚くほどでもないだろう。
「なんか変じゃねあいつ。絶対何かしら隠してるだろ」
「嘘だよ嘘。」
「そんな簡単に分かるもんなん?」
分かるよ。こん中でいちばん弐十くんとの付き合い長いの俺だからな。
「まあでも、確かにさっきの弐十ちゃんはちょっと引っかかるとこあったな。」
「キルが言うなら結構信憑性あるわ。」
ニキ視点
弐十ちゃんちに行ったら、本人が人を殺したことを認めた。
弐十ちゃんがそんなことをするとは思えなかったので、俺はめっちゃびっくりした。
まじか〜とか思ってたら、キルちゃんが「嘘」と言い切ってしまったので思わず声を出して驚いてしまった。
「何かしら隠してるだろ。嘘だよ嘘。」
キルの目はまっすぐで、本当に弐十ちゃんが人を殺していないと信じているようだ。
別に弐十ちゃんのことを疑いたい訳でもないが、ここまで言い切るのを見ると少し驚く。
「…っぱ大好きだよなぁ、お前。」
「ん?ニキくんなんか言った?」
「ん、なんでもない。やっぱ弐十ちゃんはやってないよね」
「そうだよ!変な嘘吐きやがって。」
「でもなんであんな嘘吐くん?ふつうに違うって言えばええのに。」
「確かに。今聞く?」
そう言ってシードが弐十ちゃんの家をドンドンと叩く。力加減が下手くそなのか、ドアが少し揺れてる。壊れたらどうするんだ。
「弐十くーーん?」
返事はなく、どうやら俺たちと話す気は更々無いようだ。
「くそ、シカトしやがって」
「まあまあ。どうする?結構日落ちてきたよ?」
「この時期の夜、結構魔物出てくるよ。」
「俺ら市場来ただけだからめっちゃ手ぶらだし、遭遇する前に帰った方がいいよね」
「だよな。しゃーない、帰るか」
空も赤くなってきて、冷たい風が肌を撫でる。
ボビーの持っていたライトで足元を照らし、適当な会話をしながら帰路を辿る。