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太中
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何時からだったか
とてもじゃないが思い出せない
朝起きたら寝台に居た
そりゃ当然で、当たり前だった
最近になってから、夢を見なくなった
でも、夢を見ていたかもしれないという感覚だけはある。
彼奴は、太宰は自分の足元から伸びる影のように背後にぴたりと張り付く様に、自分が何処か遠いところに居ても、如何なる時も、必ず俺の前に現れる
其れも当然、双黒という名を馳せた自分達にとって、如何なる時でも隣に居ないとならないのだ
そして今日も、自分の目の前には彼奴が現れる
視界はぐらりと歪み、
同時に痛みが走る
目の前の真っ黒く美しい、残酷な神様の片方の目は目障りそうにこちらを見ていた
其の神様がゆらりと此方に近付き、強く頭を打った俺の頭に手を伸ばした
流血してところどころ黒く染まった髪をくしゃりと鷲掴みし、其の儘何処かに引き摺られる。
海の底に堕ちる様な感覚に襲われる
そうして、神様の御告かのように淡々と、終わりの見えなくて、暗いお話しの繰り返し。
家に帰るときふと思い返すだけで身体がひどく震える
またあの頃みたいに太宰と関われたりすることが出来る日がくるまで、俺はどんなに彼奴にひどく殴られてでも、喜んで其れを望んでただろう。
あれからどれだけの時間が経ったのだろうか
毎日のように太宰は訪れて、今では自分の執務室にでもさえ彼奴は現れる
だって彼奴は俺の影だから
執務室の前で祈る
自身の影がいないことを
太宰の手から抗った
打ちどころが悪くて、気絶して、部下が倒れているところを発見し、医務室に運ばれた
其れから、見えないところにある無数の傷跡から、俺が受けてきた行為を首領に報告するという内容の話が、医務室の扉の外で話されていた
何としてでも阻止しようと思った
これ以上この関係に
取り返しがつかなくなる前に
扉の外の医者ふたりに必死に頼み込んだ
〝報告だけはやめろ〟〝ほっといてくれ〟
と、大声で叫び、いつの間にか医者をつき倒していた
其の俺の背後には太宰がいた
何時も通り片方の目には包帯を巻いて、もう片方の目では、人ひとり殺せるのではないかと思える程の圧迫感を醸し出している。
その場の空気の重力の重さに押し潰され、呑まれそうになる
そして其奴は口をゆっくりと開ける
『いらない』
『いらないから其奴』
空気が固まる
そうして 希望は 終わりを告げる
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お疲れ様でした
『の!』なんかよりずっと前から考えてたものがこの作品です
やっと書けました!
でも、言葉に表すのは矢張り難しいですね
結構好きな作品になれそうです!