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その日、タプの携帯にはスタッフからのLINEと通知が山ほど届いていた。
「YOU (Unheard Ver.)」が、わずか3ヶ月で1億回再生を突破したというニュース。
ランキングは世界中で1位、SNSは数ヶ月間“あれはジヨンのことじゃないのか”という考察で持ちきりだった。
でもタプは、ほとんど無表情のままベッドに沈んでいた。
隣にいたのは、ジヨンだった。
裸の背中を向けたまま、スマホでインスタの投稿を編集中だった。
「ほら、たっぴょん。これ匂わせっぽくない?」
そう言ってジヨンが見せてきたのは、
タプのスタジオで撮られた“誰のものとも明かさない”椅子の写真。
角度を工夫して、ブランドロゴもぼかしてあって、でも見る人が見ればわかるように。
「…おまえ、また炎上狙ってんのか」
「狙ってない。愛を共有してるだけだよ?」
いたずらっぽく笑うその顔を、
タプはどうしても憎めなかった。
深夜、ジヨンはタプの書いた曲のコード進行をいじっていた。
“G”のコードにだけ、ゆっくりとフェードをかける。
あからさますぎない、でも意味を込める。
「音でしか言えないんだろ、俺のこと好きって」
そう囁いて、タプの首筋に口づける。
その温もりは、罠みたいで、でも甘かった。
「じゃあ、おまえも曲にすればいい。俺のことを、歌ってみろよ」
そう挑発するようにタプが言うと、ジヨンはふと真顔になった。
「……やってみる」
1か月後、ジヨンが新曲「THEM」を出した。
MVでは白いスーツを着た人物が、黒い影と何度もすれ違う。
誰ともわからない相手。でも、最後に映る手のラインと、首のほくろ。
「これ、タプのことじゃん」
「指、完全に一致してる」
「最近ずっとスタジオ一緒らしいし」
SNSはまたも騒ぎになった。
ファンは気づきかける。
でも事務所は、黙っている。
ジヨンとタプは、また一つ、外の世界と距離を取って、
ふたりだけの部屋で静かにキスをした。
とあるライブのステージ、
ジヨンがMCの最後に言った一言が、ファンの間でバズった。
「誰かさんのこと、ずっと見てるよ。
今も、目の前で、ね。」
そのときカメラには、たまたま(本当に?)タプが映っていた。
飲み物を口にしながら、目線をそらして笑っていた。
一部のファンは“偶然”と笑った。
でも本当のコアなファンは――知っていた。
このふたりは、もうとっくに「芸術の名を借りて繋がってる」のだと。
テラーなれん
第三章〜