夜桜に向けて無言の圧力を強いている店員さん。
さっきまでの営業スマイルどこいったのか。その顔には鬼が宿っていた。ここは知らぬ存ぜぬで傍観していた方がいいだろう。
「何やったんだよ」
会話する気無かったのに気づいたら声に出してた。
あまりにも態度が豹変するものだから一体何をやらかしたのか気になったのだ。
「ナンモダヨ」
「目、めっちゃ泳いでるよ」
「夜桜昨日バイトサボったろ!」
「サボりかぁ」
「サボってねぇよ!」
「アアン!?」
おっと、この店員さんに皺寄せ行ったんだろうな。
「……寝坊しただけですぅ」
睨みつけられて子犬みたいにビビっとる。
さっきまでの威勢いせいは何処へやら、何だかおかしく思えてきた。
「あ、てめぇ月陽ぃ、何笑ってんだよ!」
「えええ、笑ってっ、フフ、ないっ、アハハハ!」
「大爆笑じゃねぇか!」
夜桜が余裕もなく顔を真っ赤にして声を荒らげる。それがまたおかしくて笑ってしまう。
そんな2人を意に返さず、店員さんが夜桜の襟を掴み奥へ引っ張って行く。
夜桜は、何事か意義を申し立ててるがどうやらダメだったようでとぼとぼと引きずられてる。
「……あっ、凄い美味しい」
何やかんやあって、少し冷めて飲みやすくなった珈琲は、苦味がほとんどなく香りのいい珈琲だった。
初めてのインスタント以外の珈琲は、比べ物にはならないくらい美味しくて、思わず溜息が出る程だった。
これが本物。私は他にも珈琲の味を楽しみたい。そう思った。
月陽は知らず知らずのうちに次を楽しみにしていたのだった。
ところで……
「……2人分払うの?私?」
因みに、会計は夜桜持ちになっていた。
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