テラーノベル
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〜注意事項〜
・一話参照
◇◇◇
カリカリ、コンコン…。
夜中、小さな物音にshpは目を覚ました。
顔に被っていた布団を退けて、音の方へと顔を向ける。
そこには、隠し扉があった。
扉が、カタカタと動いている。
ciだ。
shpは棚に置かれているランタンの灯りを灯し、ベットから起き上がった。
扉に手を添えて、耳を澄ます。
丁度扉越しに、手が合うような感覚がした。
shpはしばらくその小さな物音を聞いていた。
これが、ciの拒絶の音だと思っていたからだ。
現に、今までciは夜中扉を手で叩いていた。
足を鎖で繋がれていても、動く分は動かして暴れていた。
そうして、扉にもたれかかりながらまた、寝ようと瞼を閉じようとした時だった。
「 …sh、p、 」
「 …!! 」
微かだった、幻聴かと思った。
小さな声が、扉越しに聞こえてきた。
それは確かにciの声だった。
shpは瞼を完全に上げて、扉へと手をかける。
ゆっくりと扉を開けると、目の前に水色の髪の毛があった。
「 …ci、?? 」
「 shp、 」
「 ci…っ!!!!! 」
まだ眠たそうだが、こちらを捉えるとciはshpの腹に抱きついた。
震えている。
こんな部屋に閉じ込められて、更には与えられたのはおにぎりと水。
アドレナリンが出ていたとして、改めて考えてみれば食事もろくに摂らずにいたら寒いに決まってる。
抱き寄せて、腕で包み込む。
「 …ci、良かった、ci…!! 」
「 …けが、は、 」
「 俺!? 俺は怪我してへんよ…ほら見て、ほら、動けるやろ?? 」
shpはジンジン痛む肩を平気そうな顔で振り回した。
ciはぼんやりとした視界でそれを見ると、少し落ち着いたのかshpの腕の中に身体を預けた。
「 とりあえず、夜食食べよう。 寒いやろ?? 立て…へんよな。 よし、おぶってやろう。 」
「 おぶ…?? だ、だいじょぶ…あ、あるける 」
「 ダメや。 疲れてる身体無理に動かしたら余計に辛なる。 」
そう言うと、shpはciを背中に背負って、部屋を出た。
もうとっくに消灯時間は過ぎていて、廊下は真っ暗であった。
ciはそれがまた怖いのか、shpの首元に顔を埋めた。
食堂につくと、小さな灯りがぽつんと目立っていた。
そこには、赤いマフラーを首に巻いたtnがいた。
tnは、コーヒーか何かを飲みながら、ぼうっと虚空を見つめていた。
「 …tnさん。 」
shpがそう声をかけると、tnはのそりと振り返る。
そして、shpの背中に乗ったciを見て目を丸くした。
けれど現実から逃げるかのように、目を背ける。
「 tn、?? 」
次にshpの声に反応したのは、ciであった。
ciは顔を上げて、tnを見る。
tnは、呼ばれた自身の名に再度思わず振り返った。
2人の目が合う。
tnはコップを机に放り投げるように置いて、こちらへと駆け寄ってきた。
「 ci、ほ、ほんまにciなんか…?? 」
「 tn…?? 」
「 shpくんっ…どうなったんや、なにが…なにが起きたんや!! 」
いつもはルールやマナーに手厳しいtnだが、今回は慌てたように声を荒らげた。
shpはそんな珍しいtnに笑いながら、答えた。
「 ciが帰ってきただけっすよ。 」
言う事は、ただひとつだよなあ。
そう、shpは微笑んだ。
tnは2度頷き、それからciの頭を撫でて、笑う。
「 おかえり。 」
「 …!! お、おれは…だって、 」
「 俺怪我してへんってば。 見ろよ、こうしてお前を背負っとるやろ?? 」
ciはオロオロとshpの肩を見るが、shpは平気そうに鼻を鳴らす。
繊細な彼は、もし相棒を怪我したと分かれば、また自分を追い込むかもしれない。
これが、いい嘘か悪い嘘かは分からない。
ciは偽善だと思うだろうか。
けれども、shpはそれでよかった。
平気そうな自分と、オロオロする相棒。
それがなんと言ってもしっくりクるのである。
「 ああ、飯食いに来たんやな。 寒かったやろ、なんや、ドリア作ったろうか。 」
tnはハッとして問う。
「 そうっすね。 わざわざいいんすか。 」
「 ああ、ええよ。 」
「 じゃあ…ciは、椅子で座っとって。 俺のジャージ着てええから。 」
そう言って、ciを座らせようとするshpを止める。
tnはshpも座らせて、自分だけエプロンを着けた。
「 shpくんはciとおって。 話したいこと、話してりゃええ。 」
「 …!! あざっす、 」
tnは背後に聞こえる声に微笑みながら、キッチンへと向かった。
それから、具材を取り出した。
一時期はどうなるかと思った。
ciとは、同郷の仲であり、小さい頃から弟のように構ってきた。
軍学校のため、故郷を離れたのは今でも本当に寂しかった出来事だ。
ciが嫌だ嫌だと泣いていたのが、本当に寂しくて、それでもって愛らしかった。
つぎには故郷へ帰ってきたのは、三年後だった。
軍に派遣されることになって、しっかりと別れを告げようと思って帰ったのだと思う。
そこで出会ったciは、昔とは変わり果てていた。
親を犯.罪組織に連れ去られ、仲間も離れてひとりぼっちになっていた。
ciはそんな状況に絶望し、ボロボロの家の中で岩をずっと自身にぶつけていた。
その頃はなにも武器が普及されていなくて、ciには自身を殺すための道具は、岩しかなかったのだろう。
彼を止めるのに1年。
それから、彼の精神を治すのに4年がかかった。
また、そうなってしまうのかと思った。
毎日目を覚ますと、自身の首を絞めているciが、また現れるんじゃないかと。
彼を大切にしたいのに、そんな彼を助けることはできない。
tnはそんな不甲斐なさを今まで忘れようとしていた。
だからこそ、今も現実逃避をしていたのだ。
tnはホワイトソースを作りながら、あれやこれやと思い返していた。
それから、彼に頼れる友人ができたことを、嬉しく思うのだった。
◇◇◇
「 なんや、ciの記憶が戻ったァ!?!?!? 」
「 はい。 今は俺の部屋で寝てますけど。 」
utに昨夜のことを伝えると、咥えていたタバコを床に落として驚いた。
廊下の先に見えるzmがそのタバコを嫌そうに見ていた。
勿論、廊下は喫煙所ではない。
「 そ、それで!! 精神面は安定してるんか!! 」
「 昨夜の時点で、俺とtnさんと沢山話して、嬉しそうにしてました。 多分大丈夫かと。 」
「 えええ、ずるい!! 俺も起きてたんに!!!!! 」
「 どうせ書類終わってなかったんすよね。 」
ギクッ、とutは肩をすぼめた。
足音に振り向くと、zmがワタワタと駆け寄ってきた。
shpの肩を掴むと、前後にブンブンと揺らしながら口を慌ただしく動かす。
「 c、ciがなんやって!?!?!? 」
「 記憶が戻ったって…う”わァっ!! zmさッ、すとっ…すとっぷ!すとっぷ!!!!! 」
激しく揺らされて、shpはうぷ、と口を抑えた。
zmはにんまりと笑うと嬉しそうにガッツポーズをした。
「 行こう!! はよ会いたい!! 」
だが、そういうzmを、utは止めた。
「 ciは夜中まで起きてたんやろ?? 今は寝かしてた方がええんちゃう?? それに、体力も持たないやろ。 」
「 ……utの癖にマトモな事言うやん。 」
「 そりゃ大事な後輩関わってんねんから〜?? 」
zmはしばらく考えた後、頷いてshpの背中を叩いた。
「 じゃあ!! ciが起きたら教えて!! 俺訓練所おるから!! 」
そう言うと、ルンルンとスキップをして去っていった。
emの叫び声が聞こえる限り、恐らく起こっているのは内ゲバであろう。
shpは痛む背中に苦笑した。
「 …はー、じゃあ俺は部屋に戻りますね。 」
「 嗚呼。 ciが起きたら一番に教えてな。 」
「 どうでしょうね。 」
「 なんやねん冷たいのう!! 」
utはプリプリしながら歩いていった。
タバコを拾うのも忘れていない。
そうでなければ、怒られてしまう。
怒られている間にciが起きたら、時間ロスでしかないからだろう。
部屋に戻ると、ベットの上に寝ているciが目を開けてこちらを見ていた。
と、言うよりかは扉が開いたことに驚いて起き上がった、という方が正しいだろう。
shpは、よう、と声をかけるとベットに座った。
「…ci?? 」
「 ……。 」
「 どうした?? ci?? 」
布団をぎゅう、と掴みこちらを凝視するciに、shpは違和感を感じた。
そして、嫌な予感に背筋を凍らせた。
「 さ、触ってもええか、?? c 「 や"だッ!!!!! 」 …!! 」
ciは部屋の角へと逃げていき、shpを睨みつけた。
振り出しに戻ったかのような、絶望感にshpは唇を噛む。
「 …ッ、、 」
喉を鳴らし、震えるci。
shpは静かに部屋を出た。
無理に刺激する訳にもいかなかった。
「 …shpくん?? 」
「 …ッ!! tnさん、 」
両手にココアの入ったコップを持ったtnが歩いてきた。
tnは首を傾げながら、照れくさそうに笑った。
「 昨日2人夜中まで起きてたからさ。 これ飲んでリラックスできたらな思って。 寒かったらあれや思ってな、ホットココアにしたんやけど。 」
「 …tnさん、 」
「 どうした?? もしかしてまだ寝とる?? 」
「 tnさん…ど、どうしよう、 」
shpが俯くのを見て、tnは何か察した。
ciの身に何かがあったということを。
tnは近くの談話室にコップを置き、shpの手を引いて談話室のソファに座る。
「 …tnさん、ciが…ci、が、 」
「 ……そう。 分かった。 お前は休んどき。 」
「 …ッt、n…さ、 」
shpも、色々溜め込んでいたのだ。
目の下にあるクマを、見て見ぬフリはできない。
ぐら、と傾くshpの身体を支えてソファに倒す。
tnは自身のコートを彼に掛けて、ゆっくりと立ち上がった。
「 …もう俺、現実逃避はせぇへんよ。 」
頬を思いっきしに叩き、shpの自室へと深く強く歩き出す。
今回で終わらそうと思ってたんですけどネ
あと思ったよりもハート皆押してくれて😭
すごくうれしい
コメント
13件
はぁぁぁあもうだいすきですありがとうございます😇😇ciくんの愛されてるとこだいすきすぎます!!
あーー😭好き!昼まで意識飛ばしててすぐに見れなかったけど、もう好きすきる!振り出しに戻っときの絶望感がこっちまできてもう泣きそう…