テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
腕を掴まれ、勢い良く引き寄せられる。瞬く間に真っ白な空間に閉じ込められ、至近距離で見つめ合う。
「知ってて黙ってたせんぱいに勝手に腹立ってて、絶対冷たくしてやろうって、優しくなんてしてやんないって思ったのに」
「実里くん?」
「バカじゃないの、なんなの一人にできないって。その気もないくせに」
逃げようにも実里くんの手に頭を掴まれていて動けない。
「俺のものになんてならないくせに、ムカつく」
その声は切なげで悲しさを含んでいるように聞こえた。
「……だめだ。どっちにしろ優しくなんてできないや」
実里くんの細くて、けれどしっかりとしている男の子の腕に抱きしめられる。
抵抗しようとした私に伝わってくる実里くんの僅かな震え。
「実里くん……?」
「俺はいつまで可哀想でいないといけないの」
私を抱きしめる実里くんの腕の力が強くなる。
少し苦しいけれど、痛いくらい感じる彼の想いに拒むことができない。
「俺ってそんなに可哀想なの? 周りが腫れ物のように扱ったり、いつまでもあのことを気にするから……俺が一番忘れられないんだよっ! 」
だから潤の願いを泉くんから聞かされたとき、実里くんはショックだったんだ。
「もう嫌なんだ。うんざりなんだ。あの日のことなんて忘れたいんだ。なのにあいつらがいつまでもこだわるからそのせいで」
「実里くん、聞いて」
私は実里くんの腕を掴み、そっと背中から引き剥がす。
いけない。このままじゃ。実里くんの過去は彼は悪くない。
でも、だからと言って、潤達のせいにしていたらいけない。
実里くん自身が前を向けなくなる。今の彼には厳しいことを言ってしまうかもしれない。でも、気づいてほしい。
48