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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第34話 〚役割と温度差〛
修学旅行の話し合いは、
次の段階に進んだ。
「じゃあ、担当決めよっか」
えまの一言で、
自然と机が寄せられる。
……その時だった。
湊が、
急に静かになった。
視線が泳いで、
口を開かない。
(……コミュ障モード)
澪は、
すぐに分かった。
無理に話を振らず、
そっと様子を見る。
その空気を、
破ったのは——
「俺、ナビが良い!!」
真壁恒一だった。
あまりにも急で、
全員が一斉に顔を上げる。
「……え?」
「ナビ?!」
「急に?」
真壁は、
少し得意げに続けた。
「道覚えるの得意だし!
俺が案内したら楽だと思う!」
びっくりはしたけど、
反対する理由もない。
「……じゃあ、ナビね」
海翔が、
淡々と決めた。
そこからは、
早かった。
海翔が班長。
玲央が副班長。
澪は保健。
りあも同じく保健。
えまは記録。
しおりは美化。
みさとは会計。
「よし、決まり」
一瞬で、
役割が埋まった。
真壁恒一だけが、
少し誇らしそうにしている。
海翔は、
そのまま立ち上がった。
「じゃあ、
担任に報告してくる」
そう言って、
教室を出ていく。
残ったメンバーで、
今度はルート決め。
行き先は——
京都。
清水寺、
嵐山、
金閣寺。
定番だけど、
間違いはない。
「ここどう?」
澪が、
清水寺の写真を指さした。
その瞬間——
「俺もそれがいい!!」
真壁恒一が、
即答した。
「澪と同じがいい!」
空気が、
一瞬止まる。
「……」
誰も、
言葉を続けない。
「あとさ!
これも行きたいし、
これ食べたいし!」
抹茶スイーツ。
八つ橋。
団子。
止まらない。
次から次へと、
希望を重ねてくる。
澪は、
困ったように視線を落とす。
えまが、
小さくため息をついた。
しおりとみさとは、
目を合わせる。
りあは、
「……元気だな」と呟いた。
湊は、
さらに黙り込む。
(……幼児みたい)
誰も、
口には出さなかったけど。
全員、
同じことを思っていた。
悪気があるわけじゃない。
でも、
距離感が——
近すぎる。
「……とりあえず、
候補に入れとこ」
澪が、
そう言って話をまとめた。
真壁恒一は、
それだけで満足そうに頷く。
「やっぱ、澪優しいよな!」
その言葉に、
澪の心臓が、
小さく鳴った。
(……まただ)
役割は決まった。
予定も進んだ。
でも——
距離の違和感だけが、
はっきり残ったまま。
修学旅行は、
まだ始まっていない。
なのに、
澪はもう、
少し疲れていた。