テラーノベル
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そしてその後カチューシャを購入し、遊園地を楽しんでいた。そして今、おばけ屋敷の列に並んでいる。
「愛斗先輩はこういう所、苦手ですか?」
「そんなことないよ。お化け屋敷って面白いし」
先輩は怖いのは得意なのか。なら俺は。
「え〜。俺は怖いの苦手です〜」
本当は別に苦手じゃないけど。
「そうなの?やめとく?」
「い、いや!愛斗先輩と一緒なら入ってみたいです」
俺は慌ててそう言う。
「そんな可愛いこと言って。あんまり可愛いと幽霊に狙われちゃうよ?」
「その時は愛斗先輩が守ってくれますよね」
俺はそう言って目をキラキラさせる。
「もちろん。翔は誰にも渡さないよ?」
愛斗先輩はそう言って、俺の頭を撫でる。
胸がドキッとした。この人ってたらしなのかな。それとも実は既に俺の事好きだったりしないかな。
そう思ってしまうくらい、俺の心を撃ち抜いてくる。
「…やめてくださいよ。急に呼び捨てとか。文化祭の時も1回呼び捨てにしてましたよね」
「え?そうだっけ?」
「はい。ほら、写真お願いされて、その人がSNSにあげるって言ってた時です。”翔が事件に巻き込まれたら責任取れるの?”って」
「あ〜…それは無意識かな」
「無意識ですか?」
「うん。さっきのも無意識」
無意識に呼び捨て。やっぱり結構俺のこと好きでしょ。
「無意識に呼び捨てなんて照れちゃいます〜」
なんて言ってたら、俺たちの番が来た。
「よし、行こっか」
「はい。愛斗先輩、俺のこと守ってね?」
俺はそう言って愛斗先輩の腕に掴まって体を寄せる。
「任せて。翔くんの事は俺が守るからね」
先輩がそう言ったあと、俺たちは入口に入っていった。
暗い通路を歩いていると、唸り声をあげながら突然人が前を横切る。
「きゃー!怖い〜!」
俺はそう言って愛斗先輩の腕をぎゅっと掴む。もちろん演技だ。
「そんなに怖かった?」
「怖いです」
「そっか。じゃあ、ちゃんと俺に掴まっててね」
「はい。ありがとうございます」
俺はそう言って愛斗先輩の腕にしがみついたまま歩く。
よし。この調子。これでいい感じに距離が縮まるはず。
そう思いながら歩いていると、部屋のテイストが変わる。
そして少し歩くと、暗闇の中にぼんやりと灯りが見える。
その灯りの下には、日本人形が座っていた。
「うわっ…」
俺は思わず先輩に両手でしがみつく。怖いのは苦手じゃないと言ったが、あれだけはどうしても苦手だ。だって、こわいじゃん。あれ。
「あ、あれって動いたりしないですよね」
「え?どうだろうね。行ってみようよ」
「いや、ちょっと待ってください!あの、ゆっくりでお願いします。静かに行きましょう」
俺はそう言って愛斗先輩にしがみついたまま歩きだす。
「ちょっと翔くん。くっつきすぎだよ。歩きずらいじゃん」
「すみません。でも本当に無理なんです。俺の事、守ってくれるって言ってましたよね。全力でお願いしますほんと」
「分かったよ。俺がいるから大丈夫。ほら、行くよ」
「はいっ」
そして、日本人形の横を通り過ぎようとした時、「アハハ」と女性の笑い声が聞こえる。
「わっ!無理無理無理!先輩!怖いです!」
「大丈夫。俺がいるでしょ?」
「はい…」
そして、日本人形の横を通り過ぎると、少し先に再び日本人形が見えた。
「せ、先輩。またあります…」
「ほんとだ。翔くん、怖いなら早く行っちゃおっか」
「そ、そうですね…」
そう言って歩き続けるが、日本人形に近づく度、恐怖度が上がっていき、少し前で足がすくむ。
「翔くん、大丈夫?」
「…すみません。マジで無理かもしれないです…」
「ほんと?えっと…」
そう言って先輩は考える仕草を見せた後、俺に手を差し出す。
「手、繋ぐ?」
「手…ですか?」
「うん。俺がぎゅって握って守るから」
「じゃあ…お願いしますっ」
俺がそう言って先輩の手を握ると、先輩も俺の手をぎゅっと握る。なんだか少し、安心する。これなら怖くても歩けそうだ。
「行けそうかな?」
「はいっ。手、離さないでくださいね」
「もちろん。ちゃんと握ってるから大丈夫だよ」
先輩はそう言ってニコッと笑う。
「…行きましょう」
俺はそう言って歩き出した。
そして、日本人形の横を通り過ぎようとすると、再び女性の笑い声が聞こえる。
「うっ…」
「大丈夫だよ」
愛斗先輩のその声と握られた手のおかげで、少し怖さが和らぐ。そしてそのまま、日本人形の横を通り過ぎた。
「あっ。見て。出口だよ」
「良かった…」
俺はほっと胸をなで下ろす。そして、俺たちは無事にお化け屋敷を出た。
「怖かった…」
「翔くん、大丈夫?」
「はい。もう大丈夫です」
「良かった」
愛斗先輩はそう言ってニコッと笑う。
その笑顔を見て、安心した俺は、ある事に気がつく。
まって。今、俺たち手繋いでる。やばい。
俺の身体がカーッと熱くなる。
「あっ、えっと、て、手も!繋いでくれてありがとうございました!」
俺はそう言って繋いでいた手を離す。すると、愛斗先輩もそっと手を離した。
「翔くん、本当に怖いの苦手なんだね」
「人形は苦手なんです。なんか、動かない物だって分かってるからこそ、もし動いたらって怖くなっちゃって」
「たしかに。ちょっと怖いかもね」
愛斗先輩は余裕そうにそう言う。
「愛斗先輩は全然平気なんですね。1ミリも怖がってなかったですし」
「別に俺も得意って訳じゃないよ。翔くんが凄い怖がってたから、なんか笑えちゃって」
「えー。面白がってたって事ですか?酷いです」
俺がそう言って頬を膨らませると、愛斗先輩はふふっと笑う。
「違うよ。怖がってる翔くんが可愛くてさ。俺が守らなきゃって本気で思ったよ」
なんだそれ。イケメンかよ。普通に照れるって。
「…ばか」
「え?な〜に?可愛いワンちゃん」
「何でもないですよ。高級な猫さん」
「高級な猫さんですよ〜。にゃ〜」
「かわっ…な、なんで急に可愛い路線なんですか」
「翔くんが可愛いって言ったにゃんよ〜?」
愛斗先輩が可愛いを全力で出してる。やば。かんわいい。
「…ちょっと可愛すぎるんでやめてもらっていいですか?」
「え〜。じゃあ可愛いワンちゃんの本気は?」
「俺の本気ですか。任せてください」
俺はそう言った後、子犬のような目をして言う。
「俺が1番可愛いわん」
二人の間に沈黙が走る。周りからの視線も、少し痛い気がする。
「な、なんちゃって。あー。早く次のアトラクション乗りたいな〜。次は何に乗ろうかな〜。あ!あれとか面白そうだな〜」
俺は誤魔化すようにそう言いながら近くのアトラクションを指さす。
そんな俺を見て、愛斗先輩はふふっと笑う。
「翔はほんと可愛いね」
その言葉で俺の体はカーッと熱くなる。
「うるさいです〜!」
広い青空に俺の声と愛斗先輩の笑い声が響いた。
コメント
2件
ちょっとマジで最後の翔くんのあのセリフ可愛すぎるんですけど!!あの、あれはマジで惚れます)))