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チャールズの口から物騒な発言が出てきた。
あのグレンがもしメヘロディ王国にいなかったら、チャールズに殺されてしまうの?
互いに嫌い合っている、というのは本当のことらしい。
「マリアンヌには関係ない話さ。怖がらせてしまってごめんね」
「い、いえ……。私こそ二人の関係を軽い気持ちで聞いてしまって」
「それは構わないよ。俺とあいつの問題だからね」
チャールズは笑っている。
見慣れている表情だというのに、今日のチャールズの笑顔は怖いと思った。
マジル王国の第二王子となると、国内では敵も多いだろう。グレンの家族が政敵であるならば、殺し合いに発展してもおかしくない。
「それで、今日の授業はどうするんだい?」
「どうしましょう……」
私は今、グレンと一緒に授業を抜け出してきた。
それは、私がリリアンたちの企みを先生の前で暴き、犯人を見つけたからだ。
犯人は先生と共に生徒指導室へ連れていかれ、自習となった途端、怒ったリリアンが私に飛びかかってきた。その時、避けることが出来たからここにいるのだけど、もし、リリアンに捕まっていたら大変なことになっていたに違いない。
体や顔を殴られるのは別にいいが、髪、カツラを取られたら、私がマリアンヌではないことがバレてしまうところだった。
「その様子だと、一日出れそうにないね」
「はい……。今日は休もうと思います」
「マリアンヌは今日一日、自由なんだね?」
「そうなりますね」
「なら、トゥーンへ遊びに行かないかい?」
今日の授業をサボって、寮でクラッセル子爵とマリアンヌにそれぞれ手紙を書こうかと予定を立てていた。
予定がないことを聞いたチャールズに学校の外で遊ぼうと誘われた。
トルメン大学校は全寮制で、日用品は学校内にある雑貨屋で購入するよう言われているし、外出するには申請が必要ではないだろうか。それに、お金を持っていない。チャールズの誘いを受けるにしても、一旦、寮に帰って支度をしないと。
「手持ちのお金がありませんの。それに、外出届を申請しないといけなかったと思います。今、申請して、受理されるかどうか……」
「大丈夫! 俺に任せて」
遠まわしに誘いを断ろうとしていたのだが、チャールズは強引に私の手を引き、トルメン大学校から離れ、強制的にトゥーンの町へ私を連れて行く。
まあ、留学生だし、王子様だから大丈夫よね。
色々悩んでいたが、最後には楽観的に考えていた。
こうして、私とチャールズは学校をサボり、トゥーンへ出掛けたのだった。
☆
首都トゥーン。
音楽が盛んなメヘロディ王国は、一流の楽器職人が作った管楽器、打楽器、弦楽器が購入できたり、それらを使った演奏を鑑賞することが出来る。それに、最近は役者を使った歌劇が流行っているとか。
”トゥーンの街並み”という陽気な曲が生まれるくらいに、人の流れが活気に満ちている。
(ここの街並みは久しぶりね)
私は、幼少期王都の小さな部屋で暮らしていた。
お母さんと一緒に。
私にとっては六年ぶりの街並みだ。だけど、広場の風景は変わっていない。
幼いマリアンヌはこの広場の中心でピアノを弾いていた。
(私はトゥーンを知っているけど、マリアンヌはーー)
マリアンヌは特別なことが無い限りはクラッセル領にいる。彼女を完璧に演じるのであれば、何も知らないふりをした方がいいのだが、そこまでチャールズは知らないだろう。
「マリアンヌ、行きたいところはあるかい?」
「えっと……」
幼少期にあったお店はまだあるのだろうか。家の近くにあった手頃で美味しい飲食店でご飯を食べたい。
ロザリーとしてやりたいことは沢山あるが、私の故郷は庶民街と言われるところにあり、他国の王子を連れて行けるような場所ではない。
「お義父さまと、ま……、ロザリーに何か買ってゆきたいわ」
「ご家族にお土産か」
「二人に手紙を書こうと思っているの」
手紙にトゥーンで買った何かを添えて送りたい。
クラッセル子爵は楽器の他に甘いものが好きだったから日持ちのするお菓子を贈ろう。
ロザリーには―ー。
「ロザリー? 君の妹かい」
チャールズが私の事を知らない……?
マリアンヌであれば、私の存在をチャールズに伝えるものだと思っていたのに。
「え、ええ。私の自慢の妹!」
「君の御父上、クラッセル子爵の事は有名だけど、君の家族については初めて聞いたよ」
「そう? 前に話したと思っていたわ」
「いいや、全然。長期休暇の間に忘れてしまったかな?」
「そ、そうね。きっとそうよ」
「家族の土産なら、俺に心当たりがある。そこに向かう間、君の妹について、聞かせてくれるかな?」
私はチャールズに”ロザリー”の話をした。
自分で自分の話をするなんて、とっても恥ずかしい……。