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西側の塀に向かって歩くと昭容妃が舞っているのが遠くからでも見えた。
近くでも見ていると白色の衣を着て明らかに舞っている。
「、、綺麗だ。」玉緑はぽつりと口に出す。
「はい。」
「昭容妃は───舞よりも琴が得意だったが舞も綺麗だ。」
「彼女は芸をよく教えて貰ったと言っていましたので。」
「そうか。」
「はい、、。」
ここで会話が止まると舞っていた昭容妃が舞を辞めてこちらを見ていた。
「美しかったな。」
「はい、では戻りましょうか。」
「そうだな。」
月明かりが昭容妃を照らして幻想的だった。以前訪れた時は優しく物静かな印象だったが舞っている時は女郎花のようで儚く美しかった。
「玉緑様、どうしましたか?」
花水が不安そうに玉緑の顔を覗き見る。
「別に何も無い。」
「そうですか。でも食事を誘ってくれてありがとうございますね。」
「いや、1人で食べ切れないから助かる。」
「そうですか。」
「、、、」
「玉緑様、あ~んです。」花水は微笑んで水餃子を箸で掴んでいる。
「え、いやだ。」
(こんな事するのは恋仲か親子くらいだろう。)
「ふふ。玉緑様がなかなか食べないので私は食べづらいのですよ。」
「それなら言ってくれるといいのに。」
「さあ、あ~んです。」
「ぇぇ、、。」玉緑は嫌な顔をする。
「あ~んですよ。」花水は圧のある笑みを見せる。
(ここは折れるか。)
玉緑はパクリと水餃子を食べた。その様子に花水はにこっと笑った。
(美味しい♡でも侍女頭が作ったから当たり前なんだけど。)
「ふふ。美味しそうに食べましたね。ふふ。」
「揶揄っていますよね。」顔を顰める。
「そう見えましたか。」
「そう見えた。」
「それはすみませんでした。」
「、、、今日は遅くなったから早く帰って寝ろ。明日は少し遅れるくらいなら良いから。」
玉緑は右下を見て言い放った。
「ありがとうございます。」
「そもそも右丞相としての仕事もあるのに良く働けるな。」
「その言葉そのままお返しします。いつまでその姿なんですか。仕事溜まっていますよね。」真剣な眼差しで花水は言う。
「、、、それはどうにかなる。早く帰れ。」困った様に目を閉じて言った。
「では、失礼しました。」花水は立ち上がり宮から出て行った。
「、、もう少しだけこの姿では駄目なのだろうか、、。」