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黒い雨が止み、森に再び光が戻った。けれど、アクアの心には、ナミとの再会の余韻がまだ残っていた。
アクア「ナミ…ぼく、ずっと忘れてたのに、最後に笑ってくれた」
ミカ「うん…でも、きっとナミは、アクアが変わったこと、ちゃんとわかってたんだよ」
エリン「記憶は、忘れても消えぬ。流れの中に、ちゃんと残っておるのじゃ」
アクア「……ありがとう。ぼく、もっと強くなりたい。流れを守れるくらいに」
そのとき、風がふわりと吹き、どこからか不思議な音が聞こえてきた。それは、風鈴のような、波のような、やさしくて懐かしい音。
ミカ「ん?なんか聞こえる…?」
エリン「この音は…“響きの谷”じゃな。音の精霊たちが住む場所。流れの記憶を音にして、世界に伝えておる」
アクア「音の精霊…!行ってみよう!」
音に導かれるように、3人は森を抜け、なだらかな丘を越えていった。やがて、谷が見えてきた。そこは、岩壁に囲まれた静かな場所で、風が吹くたびに、岩が共鳴して音を奏でていた。
アクア「わぁ…音が生きてるみたい…!」
ミカ「なんか、心が落ち着くね…」
エリン「この谷では、過去の流れが“音”として残っておる。耳を澄ませば、記憶が語りかけてくるぞ」
そのとき、谷の中心にある大きな岩が、ぽうっと光り始めた。そこから現れたのは、透き通る羽を持つ、小さな音の精霊だった。
???「ようこそ、旅人たち。私は“リリ”。響きの谷の守り手です」
アクア「こんにちは、リリ!ぼくたち、流れの記憶を探して旅してるんだ」
リリ「知っています。あなたのしずくの音、ずっとここに響いていましたから」
アクア「えっ、ぼくの音…?」
リリ「あなたが流れを止めたとき、世界の音も静かになりました。でも今、また少しずつ響きが戻ってきています」
ミカ「じゃあ、ぼくたちの旅の音も、ここに残ってるの?」
リリ「ええ。そして、あなたたちに聞いてほしい音があります」
リリが手をかざすと、谷の岩が共鳴し、空間に音の記憶が広がった。それは、かすかな子守唄のような旋律。どこかで聞いたことのある、やさしい音。
アクア「……この音、知ってる。ぼくがまだ、しずくになる前に聞いた…」
リリ「それは、“水の母”の歌。すべての水の精霊が生まれるときに聞く、最初の音です」
エリン「水の母…!伝説では、世界の最初の流れを生んだ存在じゃな」
リリ「その母が、今、眠りについています。流れが乱れたことで、深い眠りに落ちてしまったのです」
アクア「じゃあ、ぼくたちが流れを戻したことで、目覚めるかもしれない?」
リリ「ええ。でも、母の眠る場所は、“時の泉”の奥。そこには、過去と未来が交差する“時のゆがみ”があるのです」
ミカ「また“ゆがみ”…!」
エリン「時の泉…そこが、次の目的地じゃな」
リリ「この“響きのしずく”を持っていってください。母の眠りをやさしく揺らす、音の鍵です」
アクア「ありがとう、リリ。ぼく、必ず水の母に会いに行くよ」
リリ「気をつけて。時の泉では、あなた自身の“もしも”と向き合うことになるでしょう」
アクア「……うん。どんな未来があっても、ぼくは流れを止めない」
こうしてアクアたちは、“時の泉”を目指して旅立った。響きの谷に残された音は、そっと彼らの背中を押すように、やさしく鳴り続けていた——。
つづく