寂しくて、苦しくて、劣等感に縛られて生きている私。
そんな自分が大嫌いなはずなのに変われない、いや変わろうとしない自分が馬鹿らしく思える。
誰かに自分を理解して欲しいのに自分の内を秘めている。
私なんていなくても世界に不便など欠片も無いのに、それなのに期待している自分がいる。
私の代わりなんて幾らでもいるのに。
暗闇の底で助けて貰えるのを待っている自分に腹が立つ。
けれど変えられないのが現状。
理解して欲しいくせに、理解してもらう努力はしない。
そんな自分を愛してくれる人などいないのだとまた酷く落ち込む。
そうやって頭の中で負の感情をぐるぐるとさせている。
私に救いなど無いのだと、知った途端に笑ってしまう。
前は、そんな感情も美しい風景を見れば何処か飛んでいっていた。
透き通った空を映すように輝く海が大好きで苦しい時はいつもそこへ行く。
そんな私が懐かしくてただ遠くを見つめて考え込む。
いつも通りの朝なのに何度も過ごした朝なのに、今日だけは何かが違う気がしてしまう。
そんな事ある訳ないのに。
少しだけ期待をしてしまう。
「陽菜、」
話しかけられる予定など無いはずなのに、彼は私の肩をぽんっと叩く。
久々に思いもしないことが起き私はびっくりして肩が上がってしまう。
振り向くと奏汰が楽しそうに微笑んでいた。
太陽のような君。
君だけは、この代わり映えのしない世界に唯一違いを見せてくれる。
彼は毎度違う行動をする
初めての繰り返しの時課題を忘れていた彼は次の繰り返しで課題を持ってきていた。
彼が私と同じなのかと考えたがある訳ないなと自分を納得させた。
変わっていく君と変わらない私。
君に追い付きたくて走ってみるもどんどん差は開いていく。
そのうち見えなくなるのだろうかと思うと恐くなる。
君と私は違うから。
私は君に憧れている。
輝く君と暗い私。
君の隣に私は相応しくない。
私じゃなくても代わりはいる。
きっとまた手を伸ばしても届きはしないのだから。
長かった予備校も終わり8月中旬となる。
3日後には花火大会があり、町は賑わいを見せている。
何度も行ったから今回はいいかなと思い私はひとりでご飯でも食べていようと計画を立てた。
兄は彼女さんと出掛けるだろうし母も父も毎年のようにふたりで行くから家にはいない。
ひとりで窓から見える花火を楽しむのもひとつの手ではある。
誰にも邪魔されない私だけの時間。
少し楽しみにありながらも悲しいのはきっと昔の余韻。
風に当たろうとスマホを持ち家を出る。
生ぬるい風が私の頬を撫でる。
波の打つ音が辺り一面に大きく響く。
空は日が沈み始めていた。
黄昏時。
いつかのこの時間帯に私は必ず死ぬ。
今日かもしれないし明日かもしれない。
死ぬ日はいつもまばら。
何もせずに生きていたら溺死。
自ら死ぬ事も出来る。
けれどどんな死に方をしたところで目は覚める。
それも同じ日。
7月29日。
夏休みの初日。
生きられても夏休みの最終日。8月31日。
私は何度過ごしたか分からないこの夏休みを繰り返している。
これが永遠なのならば絶望に変わる。
一生このまま生きるなんて私には受け入れられない。着々と時間は過ぎている。
抜け出す方法などさらさらにないのだからと諦めている私がいる。
本当はこんな人生今すぐに放り投げてやりたい。
いつまでこの生活を続けなければならないのだろう。
そんな事を考えながら歩いている私。
気が付くと私の下半身は海の中だった。
無意識に海の中へ進んでいた。
私はどうしても死にたいみたい。
もういいかと思い足をまた進める。
気を許してしまい私の身体は冷たい水で覆われてしまう。
きっと目覚めればまた戻っているのだから。
私はそっと目を閉じた。
目を覚ますと見慣れた天井。
スマホを開くと7月29日と記載されたロック画面。
あぁ、また戻ってきてしまった。
昨日は、何故死んだのだろうか。
冷たい感覚があったからまた事故で溺死だろうか。
そんなことを考えながら起き、学校の準備をして駅へ向かう。
学校へ着くと奏汰が私に話しかけた。
いつもと同じ。
時間が過ぎていくのを感じる。
けれど一向に「時」の流れは感じられない。
繰り返す時間。
私の時は過ぎていかない。
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