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◇Scene 1:朝の教室にて
◇Scene 2:放課後・廊下
◇Scene 3:街の路地裏・ノイズ出現
チャイムが鳴る少し前、教室の窓から強い朝日が差し込んでいた。
ユユは席に座って、机の上にほほをつけていた。
昨日のノイズとの対峙。そして、ムノと一緒に歌ったこと。
夢だったんじゃないかと思うほど、現実味がなかった。
ユユ(心の声)「昨日のノイズ…あれ、僕の声でほんとに消えたのかな……」
そのとき、ポケットに入れていたイヤホンから微かに声が聞こえる。
クラネイス(イヤホン越し)「それが現実だ。…お前の歌は、確かに届いていた。」
ユユは少しびくっとしながら、思わず声を潜めた。
ユユ「……でも、怖かったんだ。僕、怖かったよ……」
ほんのわずか、教室の後ろの影が揺れた。
誰にも気づかれないように、クラネイスはその中から応えた。
クラネイス「それなら、無理はするな。…でも、“歌”は、お前の意志そのものだ。」
下校の支度をしていたユユの前に、ひとりの少女がふわりと現れた。
白い髪。不思議な赤と青のオッドアイ。──セカイ。
セカイ「今日の授業、少し難しかったね。君、居眠りしてた。」
ユユ「うぅ……バレてた……」
セカイはふっと笑い、少し寂しそうに目を細める。
セカイ「クラネイスってね、昔──」
???(クラネイス)「やめろ。お前、それ以上話すな。」
空気がぴんと張り詰めた。
セカイは肩をすくめて言った。
セカイ「No.140。過去の“エラー”は未来に繋がるかもしれないんだけど?」
クラネイス「……それでも、まだ話す時じゃない。」
ユユ「……クラネイス……?」
その空気を、セカイが静かにほぐすように続けた。
セカイ「でも、あなたに伝えておくね。“願い”は、“歌”になる。あなたが持っているのは──そういう“音”だから。」
ユユは帰り道、ふと小さな公園の横道を通った。
風が止まり、空気がひやりと冷たくなる。
──ジリジリ……ジリ……
空の色がわずかに歪んだように感じた次の瞬間。
ノイズ「ジジ……ジリ……」
人影のような、けれど形を持たない“ノイズ”が現れる。
ユユ「……っ、また……!」
周囲に人影はなく、誰にも助けは呼べそうにない。
ポケットのイヤホンに手を伸ばそうとしたその瞬間。
ノイズが急接近してきた。
ユユ「ひ……!」
声が出ない。身体がこわばって、息さえ詰まりそうだった。
──そのとき。
クラネイス(背後から)「お前の中に、“伝えたい”気持ちはあるか?」
ユユ「……!」
クラネイス「ならば、恐れるな。…音を信じろ。」
ユユは震える手で、胸の前を握りしめる。
深く息を吸い込み、小さな声で──でもまっすぐに、歌い始めた。
ユユ「きっとどこかにある……終わらない夢の先……だから今、響け──僕の音……!」
ノイズがひとしきりうねったあと、ふっと光に包まれて、消えていく。
ユユは力が抜けて、その場にしゃがみ込んだ。
ユユ「……また……歌えた……」
クラネイス(影から見守りながら)「……それでいい。お前の“今”が、少しずつ答えになる。」