葬儀から数日が過ぎ去って──
閉院の際に、帰りのあいさつをするために診療ルームを訪れると、
彼は何かを考え込むように、半ば茫然とした表情でデスクに頬づえをついていた。
「先生…お疲れ様です」
声をかけると、ハッとして振り向き、
「ああ…はい…」
と、空返事をした後で、
「ちょっと、待ってください」
帰ろうとする私を呼び止めた。
「これを……」
ペンで何かを書きつけたメモが手渡される。
見ると、そこには──
『駐車場で待っていてください』
と、綴られていた。
戸惑いながらも、「はい…」とだけ、答える。
「お先に失礼します」と、診療ルームを出ると、今頃になってまた、彼は私に一体どんな用があるんだろうと、いぶかしくも感じた──。
もう、あの医師とは、深い関わりを持たないようになって、数ヶ月あまりが過ぎようとしていた……。
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