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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第55話 〚離さないでいい場所〛(澪視点)
教室へ向かう廊下。
澪は、無意識のまま——
海翔の制服の袖を、ちまっとつまんでいた。
「……」
自分でも気づいて、少し恥ずかしくなる。
でも、離す勇気はなかった。
「大丈夫だよ」
海翔はそう言って、歩く速さを澪に合わせてくれる。
振りほどかれないことが、今は何よりも安心だった。
教室の前に着く。
深呼吸をひとつして、
海翔と一緒に、扉を開けた。
——その瞬間。
「澪っ!」
「大丈夫!?」
「朝、変な感じだったって聞いたけど……!」
えま、しおり、みさと。
そして、少し後ろから玲央。
さらに——
りあも、真っ先に駆け寄ってきた。
「澪……平気?」
その声には、もう作った甘さはなかった。
素直で、まっすぐな心配。
澪は一瞬だけ驚いてから、
小さく、でもはっきり頷いた。
「……うん。もう大丈夫」
その言葉に、みんな一気に息を吐く。
「ほんと心配したんだから」
「朝から空気おかしかったし」
「海翔が一緒でよかった……」
澪は、つまんでいた袖を見て、
そっと手を離した。
でも今度は、
りあが一歩近づいてきて言う。
「ありがとう、澪」
「え……?」
「昨日も、今日も」
「ちゃんと話してくれたし、逃げなかった」
りあは、少し照れたように笑った。
その瞬間、
澪の中で何かが、すとんと落ちた。
(あ……)
もう、
りあは“敵”じゃない。
えまがにやっと笑う。
「完全に仲間だね」
「人数増えた感じ」
「うんうん」
「前より教室、空気いいし」
玲央も軽く肩をすくめる。
「守る側が多いのは、悪くない」
澪は、みんなを見渡して、
胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
(ここにいていい)
海翔が、隣で静かに言う。
「澪は、一人じゃないから」
その言葉に、
澪は小さく、でも確かに笑った。
——もう、
一人で耐える必要はない。
この教室には、
手を伸ばせば届く距離に、
仲間がいる。
そして、
守ってくれる人が、ちゃんといる。