深夜。点滴が終わるころ、𓏸𓏸は冷蔵庫から買ってきたばかりのプリンを取り出した。ぷるんと揺れる小さなカップを持って、枕元に戻る。
「涼ちゃん、ちょっとだけ……これ、食べられるかな?」
涼ちゃんはうっすらと目を開けて𓏸𓏸の声に応える。
力のないまま、𓏸𓏸の差し出したスプーンを口に運ぶ。
ほんのひとくち。甘さの中に、妙な苦味も混じって感じられる。
次の瞬間、涼ちゃんの表情が歪み、こみあげるものを抑えきれず――
「っ……!」
𓏸𓏸は慌てて手を差し出した。
涼ちゃんが食べたばかりのプリンを吐き戻してしまう。
温かい液体が𓏸𓏸の手に落ちる。
「大丈夫、気にしないで……!」
𓏸𓏸はすぐに隣のテーブルからタオルを持ってきて、
そっと涼ちゃんの口元をぬぐう。口角や顎に残ったものも、痛くないようにそっと。
額にももう一度、新しい冷えピタを貼りなおす。
涼ちゃんの目には涙が浮かんでいた。
𓏸𓏸は優しく背中を撫で、もう何も言わず、
ただその手でしっかり包み込むように寄り添った。
涼ちゃんの弱々しい呼吸と、𓏸𓏸の手のぬくもりだけが、
部屋の静けさの中にぽつんと残された。