※旧国
「ただいま〜」
「おかえりなさいアメリカさん!ご飯できてますよ」
「クンクン…めっちゃいい匂いする!今日は疲れたし、早く食べて日本とイチャイチャしたいな〜♡」
「もう、アメリカさんったら…///」
ごくごく普通のカップルのやりとり。
日本は以前の記憶を覚えていないけど、ずっとラブラブで仲良しだ。
同棲しているし、何度か夜を共にしたし、毎日残業もせずに早く帰ってきてくれる。
本当に世界で一番幸せなカップルだと、2人とも思っている。
「イタダキマス!」
「ふふ、どうぞ召し上がれ」
箸に慣れないアメリカのために、今日はオムライスを作った。
黄色いふわふわな卵がチキンライスを包み込んだ、とっても美味しそうな料理。
日本は料理が得意なので、料理が苦手なアメリカは頼り切っている。
だが日本は決して嫌ではなく、頼ってくれたことに喜びを感じているという。
アメリカがスプーンいっぱいに掬って頬張るたびに、日本もにこにこと心底嬉しそうに笑う。
喜びながらアメリカの目に星が散るたび、日本は限りなく幸せを感じるのだ。
「ゴチソーサマ!」
「お粗末様でした。今日もいい食べっぷりでしたね」
「日本の飯は最高級料理店より美味いからな、完食しなきゃ損だぜ」
「ふふ、そう言ってもらえて嬉しいです」
洗い物をする日本の隣に並んで、水に濡れた食器を丁寧に拭くアメリカ。
家事を任せきりにしているからと、せめて家にいる時はお手伝いをするようにしている。
「そうだ、日本。今日は一緒に風呂に入らないか?」
「えぇ!?///ふふふ、仕方ないですねえ///お背中流してあげます///」
「ありがとな、日本」
にこにこ笑う日本の頬にキスを落とし、2人は洗い物を再開した。
洗い物も終わり、アメリカは日本の腰を抱く。
日本は特に抵抗もせず、そのまま風呂場へ。
きゃっきゃと笑い合いながら、仲良く入った。
いってらっしゃいとおかえりなさいを繰り返し、また1週間が経とうとしている。
今週は短期の出張が入ってしまい、アメリカは家に帰ってくることができなくなっていた。
「来週こそはたっくさん甘えたいなぁ…」
ぬいぐるみの手足を上下に動かしたり裏声でおしゃべりしたりして、アメリカのいない寂しさを埋める日本。
アメリカが休みになったら、ケーキでも買ってたくさん甘えよう。
そうでなくても構ってくれはするけど、たまには自分からおねだりするのもありだろう。
ピロン♪
「!アメリカさんからLINEだ!」
急いで携帯を開き、内容を確認する。
『3日くらい帰れなくなりそうだ…ごめん』
「残念です…今日は1人で寝ましょう」
『終わったら有給取ってるから、外食にでも行こう』
「わっ、それは楽しみです!」
『わかりました。お仕事頑張ってくださいね٩(๑❛ᴗ❛๑)۶』
そんな文面で返信して、とりあえず残りの家事を片付けることにした。
アメリカの分がないので、洗い物は少ない。
今のうちに、お風呂掃除も早くやってしまおう。
「ふぅ…ふぁ〜…もう眠いです…」
全ての家事をやり終えた頃には、時計の針は11を指していた。
外は暗く、アメリカがいなければやることもないので、日本はもう寝ることにした。
「おはよぉございまひゅ…」
1人で使うには大きなダブルベッドから起き上がり、日本はうーんと伸びた。
「はぁ…アメリカさん、早く帰って来ないかなぁ…」
今日は1日ゆっくりして、好きに過ごそう。
日本の行動指針はアメリカが中心だったので、彼がいなければすることはない。
「今日は、今まであまり手がつけられなかったところを掃除しましょうか」
かわいらしい薄ピンクの三角巾とマスクをつけて、日本は掃除道具を引っ張り出した。
日本は形から入るタイプである。
「そういえば、物置のタンスを片付けたことはなかった気がしますね…よし!」
「1番上は手が届かないんですよね…台を持ってきて正解です!」
小さな台に乗って、日本はタンスの1番上の段を開けた。
「?なんでしょう、これ」
中には一冊のアルバムが置かれていた。
随分と古いが、埃一つもない綺麗なものだった。
ここを開けるのはアメリカくらいだろうから、これはアメリカの物になるだろう。
「J.E Observation Album…J.Eが誰かはわかりませんが…観察アルバム?なぜそんなものを…?」
台から降りて、観察アルバムとやらを開く日本。
中の写真も古びていて、モノクロだった。
どうやら、1人の男性が監禁されていて、書かれている日付が進むごとに傷を負っているようだった。
ところどころ英語で「とっても可愛い」とか「明日も頑張ってね」とか、常人では決して思わないであろう感想が書かれている。
「……思い出した」
アメリカは自宅の鍵を開け、ドアの裏側に回れるように開ける
「死ねぇ!!!!」
開けた途端に聞こえてきた怒声と、先程まで自身がいた空間に刺さる包丁。
アメリカは刺そうとしてくる日帝の腕を捉え、組み敷いた。
「はいはい、大人しくしてね〜」
「くそっ…!!この鬼畜米帝が!!離せ!!」
「そんなに騒いじゃ近所迷惑でしょ。こんな物騒なもん持ち出して…あのアルバム、ちゃんとしまっとくべきだったか…」
暴れる日帝を押さえつけ、アメリカは包丁を取り上げた。
そして日帝の首根っこを掴んで持ち上げ、薄い腹を殴りつける。
「かはッ…!!」
ようやく大人しくなった日帝を家に連れ帰り、その場はしんと静かになった。
「貴様…絶対に、許さんぞ…! 」
蹲る日帝を見下ろしながら、アメリカは取り上げた包丁を仕舞う。
「なんで思い出しちゃうのかなー。あのままだったら俺も君も幸せだったのに」
「薬で記憶を奪ったようだが…あの惨状を完全に忘れることなど、出来るはずがないだろう…!」
はぁはぁと息を切らし、日帝はアメリカを睨みつける。
青褪めたその顔では、威圧感など全くない。
「それはもう済んだ話じゃん。日帝って本当にしつこいね」
この2人に何があったのか、それは十数年前に遡る。
アメリカの捕虜になってしまった日帝は、日々耐え難い拷問を受けていた。
足を折られたり、無理矢理行為をさせられたり、実験台にされたり、本当に散々だった。
そんなある日、アメリカはとあるものを見せてきた。
それは白色の錠剤で、怪しさ満点の薬だ。
「これねー、なんだと思う?」
「はッ、はぁ…知るか…鬼畜米帝め…!」
「これねー、脳を麻痺させて記憶喪失を誘発するの。自分の住所や歳、職場とか人間関係を全部忘れさせて、最低限会話ができるくらいまで弱らせるんだ。時には名前も忘れちゃうんだってさ」
淡々と説明するアメリカは 息も絶え絶えの日帝を見つめ、錠剤を日帝の口に押し当てた。
「飲んで?」
「…」
当然飲むわけもなく、日帝は首を振って拒否している。
「飲んでよ〜、わがままだなぁ」
まあわかってたけど、と言って、アメリカは日帝の口元から薬を下げた。
ここで油断する日帝ではないので、意地でも口は開かなかった。
アメリカは水入りのコップを持って戻ると、その中に錠剤を入れた。
何がしたいかよくわからないまま見つめていると、錠剤はすぐ水に溶けて、水溶液が完成。
俺は飲まないぞ、と口を更に固く閉じるが、アメリカは何する様子もなく注射器に液体を移していく。
そこでようやく気づいた愚かな日帝は暴れ始めたが、腕を鷲掴みにされて固定された。
「お注射しましょーねー」
「い、いやだっ!やめろ!!」
ガチャンガチャンと騒がしくなる部屋の中心で、日帝は腕に水溶液を流し込まれる。
ちゅ〜〜っと中の液体が減っていく注射器を見たくなくて、顔を逸らした。
「はい、終わり!お疲れ日帝」
腕の異物がなくなった代わりに、日帝は意識を保つことも難しいほどの眠気に襲われた。
脳を麻痺させるとのことなので、当然起こる副作用だ。
「目覚めたら、俺が助けてあげるからね♡」
そんな甘い甘い声聞いてから、日帝はぐっすりと深い眠りに落ちた。
目が覚めると、そこは知らない部屋だった。
「いたいの、なんで…?寒いよぉ…だれか、助けて…」
弱りきった が小さな声で泣いていると、目の前の扉が開いた。
「誰かいるのか?」
「だ、だれ…?た、助けて…!からだ、痛いの…! 」
「Wow…これはびっくりだ。今助けてあげるよ」
扉を開けた優しい人は の鎖を解くと、優しく頭を撫でてくれた。
「ありがとうございます…身体中いたくて、動けなくて…」
「よしよし、怖かったよな。もう大丈夫だぞ」
ぎゅーっと抱きしめてくれた優しい人は、 をお姫様抱っこで家まで連れて行ってくれた。
綺麗な服をもらって、怪我の治療をしてくれて、名前もくれたその人は、アメリカと名乗った。
「ま、そんなわけでさ、もっかい日本に戻ってくれるかな?」
「はーっ…はーっ…そんなの御免だ!!貴様の恋人だと?気色の悪い!何故俺がママゴトに付き合わねばならんのだ!ここで殺してやる!」
殺意を剥き出しにした日帝は立ち上がり、素手でアメリカに殴りかかる。
元は最強の軍人と名高い彼であるので、ブランクがあるとはいえ身体能力は抜群だ。
ただ、記憶がない十数年間は家事をしてアメリカに甘えていたようなものなので、もちろん身体は鈍りに鈍っている。
現役覇権国であるアメリカに勝てるはずは毛頭なく、多少遊ばれてから蹴り飛ばされた。
「ふぐッ…」
「日帝のお遊びもここまでにしといてね。帰る時に持ってきたからさ、飲んでね」
アメリカは地に伏す日帝に馬乗りになり、片手で口を開かせて錠剤を放り込んだ。
吐き出そうとする日帝に無理矢理キスをして、自身の唾液と共に飲み込ませる。
こくんと上下する喉仏を見て満足したアメリカは、日帝の上から退いた。
青褪める日帝は自ら口に手を突っ込んで吐こうとしているが、アメリカによって両腕をまとめられてしまった。
「今度は永遠にお眠りよ、日帝。次のシナリオは『強盗に襲われて記憶喪失のカワイソウな恋人』にするよ」
霞む視界を最後に、日帝は再び意識を落とした。
「うーん…あれ…ここは…?」
「目覚めたか?大丈夫?」
「えっと…あの、貴方は…」
「俺はアメリカ。“君の恋人だよ”」
コメント
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記憶無しだと、日本に 記憶有りだと、日帝に…… 面白い‼✨好きです( ☆∀☆)
好きです……💕︎︎ 日本=日帝の世界線大好物です!🫶 こういう米日(帝)は存在する(確信)