_2人の刑事__🥀𓈒 𓏸
「……ッ…」
ダレイが打った拳銃はミジに3発放たれた
が……狙いはミジのすぐ目の前の大きめの木の枝だった
枝は大きな音を立て、女の目の前すぐを落ちた
当たれば軽傷では済まないだろう…
咄嗟にとったダレイの行動に言葉を失っていると、ダレイはそのまま叫んだ
「これは刑事としての忠告だ!!これ以上妙な真似をしたらお前ら全員タダでは済まないぞ!!」
顔を手で抑え、困ったように女は笑った
「…フッ……拳銃とは……まさか持ってるなんてね…」
次の瞬間女がダレイ目掛けナイフを投げた
「…!!」
目の前に飛んできたナイフをギリギリで避ける…が、女は居なくなっていた
「近い内にまた会いましょ…ダレイ.パイレント」
どこからが声が聞こえると、そのまま気配すらも無くなってしまった
「…ッ…くっそ…俺は何を…!!!」
手に持っている拳銃を強く握りこんだ…
「…戻った…すまない遅くなった」
BARに戻るが、店内にマイクの姿は無かった
カウンターにあった資料の山が消えている…何かまだやることをやってたのだろうか
「…?……マイク?…」
その直後、奥から物音が1つ…
「……ッはい…ここです………」
グラスの木箱を持ちながら奥から出てきたマイクは_名前を呼ばれたからだろう目線を合わせない
ダレイは眉毛を八の字にさせてそれを見つめた
「……今度からあんたと呼ぶ事にする」
なぜこいつは名前を呼ばれただけで…?
ほんと不思議なやつだ
マイクは素に戻すと、何故か上から言うように俺の決めた事を否定した
「いえそれは無理です。遠くなった気がしますので、」
「なんだ無理って…」
「慣れてないんです!名前で呼ばれることがなかったので、今度から慣れますから」
「変な奴だな………ところでそれは?」
マイクの持ってる木箱がどうも気になったダレイは質問する
マイクは手に持っていた木箱をカウンターに下ろすと,蓋を開ける
そこには高そうなグラスが丁重に詰められていた
「こちらグラスです。元々使っていたものは全て割られていたので……少ないですが、奥から持ってきました」
「そうか…洗うのを手伝おう」
「!!………ありがとうございます」
マイクから許可を貰うと、ダレイはカウンターに入った
グラスを箱から取り出し、大切に.そして丁重に洗い始めた
「…では私は最後の木箱を持ってきます」
「あぁ…分かった」
マイクはカウンターを任せると、奥の扉へと入っていった
マイクが奥の倉庫に入ると、木箱の入ったダンボールから中身を取り出す
どれもこれもマイクにとって大切なグラスだ…
木箱を持ちながら、マイクは丁重に配慮しながらグラスを洗うダレイを思い出す
「初めてお越しに頂いた時の態度は…全く今のような原型では無かったのに……」
マイクは木箱を大切そうに持ち上げた
外から鳥の鳴き声が聞こえる…
「……にしても高そうなグラスだ…一体いくらなんだ?」
そんなことを1人呟きながら、客席側に背を向け、グラスを磨いている
(あいつはいつも…大切そうに磨いてるのか…)
ダレイが1人で磨いていると、BARの外_路地から半透明の男がダレイを睨みつけていた
ギリギリと指の爪を噛みながら、ブツブツと独り言を言っている
グラスを取り、カウンターに背を向けたタイミングで、半透明の男は”透明な”拳銃を扉の窓越しにピッタリくっつける
ダレイを狙う銃口は…真っ黒なモヤを出しながら…やがて実物の拳銃になる
ギリギリと睨みつけ、涙で視界を滲ませながら…ピントを合わせる
「そんなところで何している」
すぐ耳元…声と誰かの気配を感じた男は
ビビりながら銃口を扉から離す
「だッ…誰だ!!?」
フラフラ扉から離れ、ダレイに背を向けた時後ろからナイフを突き立てられる
「あっ……あぁっ……ッ」
ナイフに涙を流しながら男の膝がガクガクと震え出す
それを背後から除くのは紛れもない…マイクだ
水色の目は壊れかけた街灯に照らされ、本来の美しい色を消し、薄暗い色をチラつかせる
冷酷に睨みつけたマイクの目は落ち着いているが、その奥からとてつもない殺意に満ちていた
「刑事だ…下手に動いたらそのまま刺す」
「お、お前…何者だ……!!俺は死んでるんだぞ…!そんなもの…当たるわけない……!!」
ヒクヒクと声を詰まらせる男にマイクは一切の同情も見せない
それどころかナイフを男の首に近付ける
切れ味のいいナイフは男に触れる
血こそは出ないが、感覚があるのか、男は声を上げる
「ひっ!!わ、悪かった!!頼むっ!!許してくれ!!!」
マイクはナイフの手を止めたが、刺さったまま男に質問をした
「殺そうとした理由を応えろ」
「ッ……ある女に……言われたんだ…!あの男が…俺を…俺を殺した……ってッ」
マイクはナイフを下ろす
ナイフから解放された男はその場に崩れ落ちる冷たく…静かに見下ろすマイクに,雨がポツポツと当たる
雨が一気に強くなるが……その場に丸まり情けなく泣き始める男の髪ひとつに掛かることは無かった
マイクだけを…無惨に冷たい雨が降り注いだ
BARのスーツが濡れていく…
それ気付いたのか、先程まで泣いていた男はマイクを見開いた目で見つめる
「ま、、まさかあんた…!このBARの…店主か……??」
頷きもせずじっと男を見下ろすマイクの足元を男は情けなくしがみつく
「な、なぁ頼む!!俺!気付いたら死んでたんだ……!誰に話しかけても…無視で……!!あんただけだ……あんたが頼りなんだ……頼む!!」
「……と言うと……?」
男が顔を上げる
マイクを真っ黒な瞳が捕らえるが、マイクの目にはその男の姿が写っていなかった
ゆがみながら笑うと男はマイクに言う
「あんたの……カクテルが飲みたい……!」
雨音だけが路地の地面に響く__
マイクを掴む力の籠った男の手は酷く震えている
「な、、なぁ頼む……!早くこの地獄から抜けたいんだ……ッッ頼むっ……」
「残念だがお前には呑ませない」
マイクの答えに男は息を詰まらせる
掴んでいた力が緩んだ
その場にまた崩れるとマイクは続けて話す
「なぜお前が店に入れないのか…教えてやる。それはお前は死刑囚だからだ」
「……えっ……えっ?」
男の記憶が戻る__
マイクを掴んでいる手は赤く血が滲み、
身体中に返り血が飛び散っている。
ボロボロの服はやがて囚人服に変わった
「お前は14年前、その手元の拳銃でバスジャックをした。その場にいた乗客7人全員を無惨に打ち殺して_」
マイクが男の説明をすると
みるみる男の顔色が変わっていった
目元が血走り、髪の毛が抜けて行く__
「あぁ…そうだ………俺は…死刑囚だ…」
*男が不気味に笑うと*拳銃をマイクに突きつけ*、2弾……3弾……と…弾が無くなるまで打ち続ける*
「……ッ!?」
「死んでも尚,馬鹿なことしてるんだな」
しかし銃弾はマイクに当たることは無い
それを見た男が立ち上がる
扉に向き直り、グラスを吹き終わりカウンターに座っているダレイに新たに腰に忍ばせていた拳銃を向ける
「どうせ死ぬなら……!!あいつも……!!道連れだ!!」
今度は銃口を向ける前だった
マイクのナイフが半透明の男の首を貫通し、扉ごと突き刺さっている
髪諸共びしょ濡れのマイクは髪から雨の雫が垂れる
「お前を待ってるのは本当の地獄だ」
雨の中を、傘をさしながら1人の大柄な男が歩いてくる
霊が消え切るのを確認したマイクはナイフを扉から思い切り抜きとる
「……いい目だ……マイク…あの時の目だ」
マイクはじっと男を見つめる
「これ以上近付くな」
「……止まっているだろう?」
「俺の友達に、だ」
お互いの間で無言の空間ができる
雨が強く地面に叩きつく音を聞きながら、男は何もせず言わずで、その場から去っていった
1人残ったマイクはナイフを腰に隠すと、
そのままBARの店内へと…入っていった
BARのカウンターに座っていたダレイは、そのまま眠ってしまっていた。
長いまつ毛と力のない眉毛はいつもの風貌とはまた違う姿を見せている
水滴をぽたぽた垂らしながらマイクはそれをじっと見つめる
水色の綺麗な目で__
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