宮舘は渡辺と生まれた病院も同じだという、渡辺にとって奇跡の幼なじみだ。二人ともここまで長く縁が続くとは思っていなかっただろう。
そんな二人だけが生み出す空気感に向井は正直気後れしていた。
普段、渡辺と宮舘が特別一緒にいることはないが、二人にはあまりにも偶然の一致が多い。発言も、好みも。
そのたびになぜか阿部が喜び、メンバーたちもつられて笑う。
そんな時、本人たちは照れ臭そうにしているが、ゆり組と呼ばれる彼らは、ファンにも一番認知されたコンビだ。
向井はいつからか、二人のシンクロに笑えなくなっていた。
番組の収録で9人が集まっている。
向井には渡辺の隣りの席が宮舘なのも気に入らない。二人が近づいて何かを囁き合っているたびに、つい何を話しているのかと気になって聞き耳を立ててしまう。
それに渡辺の宮舘に見せる笑顔は自分と話している時よりも自然に見える。
埋められない歴史がそこにはある感じがして向井は悔しかった。
後からメンバーに加わり、生まれも育ちも違いすぎる自分には、チャンスはないのだろうか。
休憩時間
🖤康二、わかりやすすぎ
向井は目黒に肩をぽん、と叩かれた。
🧡俺、こんなに心狭かったんか…舘さんのことも大好きやのに
心の優しい向井は項垂れている。目黒はなんだか向井が不憫になった。
🖤まあ、それはしょうがないよ。誰だって焼きもち焼いたらそうなるって
🧡せやろか?
🖤そうそう。俺だって同じだよ
🧡め~め~
向井がぎゅっと目黒に抱き着く。目黒は頭をよしよししてやる。
康二は本当にわかりやすい。人懐こい子犬のようにわかりやすくて、素直だ。
もし向井と渡辺が付き合ったら、渡辺は向井が可愛くて仕方がないだろう。微笑ましいカップルだと思うのだが…。
それにしても、と目黒は考える。
しょっぴーの気持ちの在り処はどこにあるんだろう。
康二だといいな、と目黒は思う。
どちらとも仲が良いから、二人がもしそういう関係になったら自分も祝福したいし、見守っていきたい。
逆に二人がうまくいかなくて向井が泣くのを見るのはきっと胸が痛むだろう。
目黒はいつもの元気がない向井を何とも言えない気持ちで見つめていた。
収録が終わり、メンバーは次々と帰って行く。
渡辺もさっさと出て行く。
向井はなんとか話し掛けようと慌てて追いかけるが、間に合わない。
あと一歩のところでエレベーターの扉が閉まり、その閉じかけたドアの中に渡辺と宮舘がいるのを向井は見た。
🧡二人一緒に帰っとる…
ショックだった。
自分の知らない間に一緒に帰る約束でもしていたのだろうか?
向井は気になって次に降りて来たエレベーターに急いで乗り込み、二人がいるであろう駐車場に向かった。
向井が地下にたどり着いた時、遠目に二人は向き合って何かを話していた。
何やら深刻な雰囲気が伝わってくる。
このまま帰ろうか迷うが、怖いもの見たさで近くの柱に身を隠しながら近づいて行った。
少しずつ二人の声が大きくなってくる。
何の話をしてるんやろう?
向井は二人に気づかれないように注意して息を殺しながら距離を詰めた。
すると向井の耳に、次の言葉が飛び込んできたのだった。
❤️俺、翔太のことが好きだ
💙……そんなこと急に言われても
向井の位置からは渡辺の後ろ姿しか見えない。それがもどかしいが、宮舘の目が真剣なのはわかった。
…舘さんに先を越されてしもうた。
向井は苦しかった。
正直こんな会話は聞いていたくない。
でも、渡辺の返事が気になるのも確かだ。このまま帰るという選択肢は思い浮かばなかった。
向井は固唾を飲んで次の言葉を待った。
❤️どう、かな?
💙……悪いけど、涼太のことそういうふうに考えたことない
渡辺は戸惑った様子で答えるが、その口調からなるべく宮舘を傷つけないようにしているのがわかった。
❤️俺だからだめなの?
💙いや、涼太がっていうより、男同士でっていうの…その…想像したことないし
渡辺の言葉に、隠れて聞いていた向井もどきっとする。
やっぱりあかんのかな…
しかし、宮舘は諦めない。
優しい口調で渡辺に語り掛ける。
❤️俺は真剣だよ。翔太に時間が必要なら、俺はいくらでも待つから
💙涼太…
❤️すぐに答えを出さずにちゃんと考えてみてほしいんだ
少し間があく。
渡辺は答えを迷っていたようだったが、意を決したように言った。
💙…わかった。気持ちはありがとう。俺に少し時間を下さい
二人はその後別れて、それぞれ別の方向へと帰って行った。
柱の裏で向井が座り込んだ。ほとんど崩れ落ちるような形で。
🧡俺はどうしたらええんや…
その答えのない呟きはもはや誰もいなくなった駐車場で虚しく響いていた。
コメント
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はわわわわわ…こうじぃ…頑張るんや!
切ない…どうなるんやろう🥹