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珠莉と璃都は、ようやくサービスエリアの建物にたどり着いた。暗がりの中、ガラス越しに中の様子がうっすら見える。
自動ドアの向こう側には、ちらちらと明かりが灯り、何人もの人影が動いていた――
大人や子供、あわせて三十人ほどいる。
「……人がいる。璃都、見て……!」
珠莉の声に、璃都も希望を見つけたように曇りがちだった表情を少しだけ明るくした。
珠莉はドアを強く押してみたが、がっちりと閉ざされている。
「……開かない……! すみません、開けて!お願いします!」
ガラス越しに中の人たちのざわめきが広がる。
「だめだ、今は危ない」「どうするの……」「子供だって……!」
不安そうな大人たちの声が交錯する。なかには「かわいそうだよ、開けてあげて」という優しい声もあったが、「ゾンビかもしれないだろ」「開けるな!」という強い反対もあった。
璃都は、不安げに珠莉の手を握る。「お姉ちゃん……」
「大丈夫、絶対、大丈夫だから……!」
珠莉は渾身の力でドアを叩きながら、必死に叫び続けた。
「お願いします、開けてください!外は危ないんです!どうしても……!」
そのとき、建物の周り、死んでいたはずの静寂が再びざわめき始める。
――ズズ……バタン……
薄暗い駐車場のあちこちに、ゾンビたちの姿が次々と現れる。
彼らはゆっくり、しかし確実に二人の方に集まってきた。
珠莉と璃都は、必死にガラスに張りつく。「お願い!お願いだから開けて!!」
中の人たちは悲鳴を上げたり、泣きだす子供もいる。
「だめだ、開けるな!」
「でも、もうすぐ捕まるぞ、助けなきゃ!」
怒号と混乱の声が行き交い、誰一人としてドアの前に近づこうとしない。
ゾンビたちがガラスの外まで集まり、どんどんと不気味にドアを叩き始めた。
璃都は目に涙を浮かべて珠莉にしがみつく。「お姉ちゃん、怖いよ……」
それでも珠莉はあきらめなかった。血が出るほど拳で扉を叩きながら、必死で声をあげる――
「開けて!お願い、開けて!!」
そのとき、中から一人の初老の男性が走ってきた。
「どいて!俺が開ける!」
男性は周囲の制止を振り切り、素早くドアのロックを外した。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
ガラス戸が開き、珠莉と璃都は中に引き入れられた。
すぐに背後でゾンビたちがドアを叩き続ける。
「早く奥へ!」
男性が二人をかばうように叫ぶ。
サービスエリアが、さらなる混乱と恐怖に包まれていく――