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ライラ からぴち・シクフォニ♡
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「なぁ、りゅうせいとなんかあった? 寝ながらずっと窓の外見てんだけど」
「……珍しいよね、りゅうせいのあのテンション」
俺より先に来ていたバカップルに詰め寄られる。机の脚をガタガタ鳴らしながら問い詰める二人の顔が近い。昨日、俺の部屋で何があったかなんて、口が裂けても言えるわけねぇよ。
「……りゅせ、おはよう」
「……ん」
挨拶をしても、視線は窓の外に向けられたまま。
昨日の帰り際はあんなに笑顔で手を振っていたから、もしかして俺のせいじゃないかも、なんて淡い期待を抱いていたけど。この様子じゃ100パー、いや1000パー俺のせいだ。
「……役立たず」
「おま、…!」
なんでそんなピンポイントで核心を突いてくるんだよ。しゅうとの鋭すぎる眼光を見ていると、こいつはエスパーか何かの類なんじゃないかと思えてくる。
「……あー、ショックだったんだ」
「なんなの、結局二人付き合ったの?」
「大事な友達をあんな風にしておいて、何があったか聞く権利、俺にもあるよな?」
詰め寄る三人の包囲網が怖い。椅子を引く隙間もないくらい囲まれて、逃げ場がない。人には墓場まで持っていかなきゃいけない事情ってのがあるんだよ。
「……はぁ」
りゅうせいの重いため息が教室に響き、全員がそっちを向く。
理由は大体わかってる。だけど、俺はダメだって先に言ってたし、なんならその流れにのれた。喧嘩したわけじゃないし、ワンチャン、原因は俺じゃない可能性だって……。
「……いつきくん、聞いてきてよ。いつきくんなら大丈夫な気がする」
「俺もそう思う。俺もいつきくんなら何でも話せるし」
「……俺も助かる」
「そう?」
満面の笑みで嬉しそうに頷くいつきくん。今の俺たちには、この安心安定の仏様に頼る道しか残されていなかった。
そっと近寄ったいつきくんが声をかける。りゅうせいは少しだけ顔を上げ、いつきくんにだけは酷く優しい笑顔を向けた。
なんだよ、そんな風に笑える話なのかよ。
「……お腹空いてるだけだって」
「いつきくん! 嘘つかれてんじゃん!」
「絶対違うって! それなら『お腹空いた~!』って暴れてるはずやって!」
一斉に突っ込む周りの声をよそに、俺は確信していた。嘘をついているのはいつきくんだ。そんな理由であんな優しい笑顔をするわけがない。
「……放課後、話、聞いてやってよ。りゅうせいには言っとくから」
「……うん、ありがとう」
本当の理由を知っているのは、いつきくんだけ。
放課後まであと何時間あるんだよ。緊張で心臓がバクバクして倒れそうだ。
案の定、次の休み時間からりゅうせいの姿は消えた。いつきくんに聞いても「知らない。けど大丈夫だから」と笑って返されるだけ。
もし、俺のせいでりゅうせいをあんなに追い詰めてるんだとしたら、俺は死ぬ気で謝らなきゃいけない。
そして放課後。
誰もいなくなった教室に、影が長く伸びる。
教室の後ろで立ち尽くす俺の背中に、静かな声がかけられた。
「……ともや、ちょっといい?」
「あ、りゅせ! どこ行ってたんだよ。ずっと心配してたんだぞ」
振り返ると、そこには少しだけバツの悪そうな顔をした、りゅうせいが立っていた。
「……心配してくれてたんだ」
ふっとりゅうせいが柔らかく笑う。その表情を見た瞬間、胸のつかえが少しだけ取れた気がした。昨日俺がしたことで、もし本当にこいつを傷つけてしまったのなら、本気で謝ろう。それでフラれたとしても、もう、しゃあない。
「……うん。めっちゃ、心配した」
「……うれしい」
ふふっ、と照れくさそうに、あまりにも可愛く笑うもんだから。今度は俺の方が耐えられなくなって、真っ赤になっているはずの耳を急いで手で隠した。
「……あの、いつきくんから何か聞いた?」
「ん? 放課後、りゅうせいから話があるって。そのこと?」
「あ……やっぱ、言ってないんだ。流石だね、いつきくん」
いつきくん、何隠してるんだよ。めちゃくちゃ気になる。できれば早くトドメを刺してほしい。……正直、あれからりゅうせいのことしか考えてないんだよ。いや、正確に言えば、ここ最近ずっと、俺の頭はりゅうせいで埋め尽くされている。
「……いつきくんに、なんて言ったの?」
ごくりと、自分の喉が鳴る音がやけに大きく聞こえた。早く、早くしてくれ。心臓がもうもたない。
「……恋をしています」
「え?」
「……いつきくんに、『恋をしています』って言ったの」
「あー……」
だからか。だからいつきくん、あんなに仏みたいな顔で笑ってたのか。俺の悪口を言ってたなら、あんな顔はしないよな。
「……わかってる? 俺が、誰に恋してるか」
「え……いつきくんでしょ?」
だって、本人にそう言ったんだろ? ……そうか。やっぱり俺のことは、暇つぶしだっただけなんだな。いつきくんがいっちゃんのものになっちゃったから、仕方なく俺で我慢しようとしたんだな。
「……相変わらず、ともやはあほだなぁ」
くくくっ、と声を抑えて笑うりゅうせい。何があほなんだよ。自分からそう言ったんだろ?
「……俺さ、ともやが笑うと心臓がぎゅってなってたんだよ。ずっとなんでかなって思ってたけど。それ、『ぎゅ』じゃなくて『きゅん』なんだって。俺、ともやが笑った顔、めちゃくちゃ好きなんだよね」
「え、待って、なんで俺の話? いつきくんじゃねぇのかよ?」
頭の中がパニックでぐちゃぐちゃだ。いつきくんが好きすぎて、名前を間違えてるのか? それとも、俺の「笑顔だけ」が好きって話? え、どゆこと?
「なんでわかんないの? ともやに恋してるって話だよ!」
りゅうせいは少しだけ頬を膨らませて、俺のことを睨みつける。ちょっと待て。いつからそんな話になってたんだ? どこでいつきくんと俺がすり替わったんだよ?
「え……いつから? 全然気づかなかった……」
「……は? 本気で言ってる?! 俺のこと、好きでもないやつとキスするような軽い奴だと思ってたってこと?!」
眉根を寄せたりゅうせいの顔が真っ赤に染まる。