テラーノベル
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握りしめられた指先から伝わる体温が、西日の挿し込む図書室の片隅で静かに熱を帯びていく。
「……先輩」
ゆうの声が、いつもより一段と低く耳元に届いた。
重ねられた手に少しだけ力がこもり、蓮は思わず肩を跳ねさせる。文庫本を目隠しにするように立てかけてはいるものの、隣からの視線が皮膚を焼くように熱い。
「なんだよ……」
「僕のこと、ちゃんと見てください」
拒む隙を与える間もなく、ゆうの空いている方の手が蓮の顎にそっと添えられた。無理な力ではないのに、元ヤンとしての警戒心すらあっけなく擦り抜けるような、巧みな誘導。拒絶するより早く、視線が嫌でも噛み合ってしまう。
間近で見るゆうの瞳は、まるで奥底に暗い炎を灯しているかのように深く、揺るぎない。
「……橘、ここ、学校だぞ」
「分かってます。だから、静かにしてるじゃないですか」
囁くような声と共に、顔がさらに近づく。二人の吐息が交差するほどの距離に、蓮の心臓は警鐘を鳴らすように激しく打ち打った。喧嘩の場数をどれだけ踏んできても、この不意打ちのような攻勢にはまるで耐性がつかない。
「お前……っ」
「逃げないで」
握られた指が強く絡め取られ、逃げ場を完全に塞がれる。
静寂に包まれた図書室で、蓮はただ、後輩の放つ抗いがたい熱量に呑み込まれていくしかなかった。
コメント
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第8話、読みました。図書室の静寂と、ゆうくんの抗えない熱量の対比が本当に巧みで、心臓がきゅっとなりました。特に「逃げないで」の一言と、手を絡め取られる仕草——元ヤンの蓮くんが無防備に呑み込まれていく様子に、甘くて切ない緊張が詰まっていて、何度も読み返したくなる一節でした。次がどうなるのか、ドキドキしながら待っています。