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隣で泣いてる君と僕

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隣で泣いてる君と僕

1 - 隣で泣いてる君と僕

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2023年12月11日

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   隣で泣いてる君と僕


   新しい友達ができた。初めての友達だ。

   初めて僕の顔を見た時、あの子はとても驚いた顔をした。でも、すぐに優しく微笑んで、僕の手を握ってくれた。とっても温かくて、とっても嬉しかった。

   あの子のことはまだ全然知らないけど、きっと素敵な子なんだろう。僕の手を引くあの子の姿を、多分ずっと忘れない。


   また、隣で君が泣いていた。

『なんでいつも泣いているの?』

   その言葉が君に届くことはない。僕の手を握る君の手が微かに震えているのを感じながら、僕はただ君の隣で、君の頬を伝う雫を眺めていた。

   君の涙をすくうことはできないけど、君の悲しみをすくうことはできるから、いつでも僕のところへ来て。僕と二人きりの時くらい、我慢なんかしなくていいよ。


   君が嬉しそうに笑う。

   何か良いことでもあったのかな。理由はわからないけど、僕も釣られて嬉しくなった。

   ふと、最近、君の笑顔を見ていなかったことに気づく。それと、最近、遊んでくれないことにも。そう思うとなんだか少し寂しくなって、でも、君の笑顔を見ていると不思議とどうでもよくなった。

   その優しい笑顔だけはずっと変わらないね。僕は昔を懐かしく思うと共に、ちょっぴり遠くにいる君をひとり眺めていた。


   久しぶりに君が泣いていた。

   やっぱり君は泣き虫なんだね。僕は少し笑いそうになったけど、可哀想なので我慢した。今回は何があったのかな。そんなことを想像しながら、いつもどおり、君の隣で君を見ていた。 僕の手を握る君の手はいつもより大きくて、少しだけ冷たかった。

   もうあの頃とは違う。でも、君の泣き虫は変わらないみたいだから、僕も変わらず君の隣にいるね。


   君は今、何をしているのかな。

   狭くて真っ暗なところで、僕はひとり考えていた。もう何年も会えていない君に想いを寄せる。ここは少し退屈だけど、君との楽しい思い出があるから、僕は大丈夫だった。思い出を思い出すたび、また君に会いたくて堪らなくなる。

   いつか君が迎えに来てくれること、ずっと待ってるよ。


   朝が来た。長い長い夜が明ける。漏れる光の中から太陽が顔を出した。

   迎えに来てくれたんだね。君の懐かしい体温が僕に伝わる。僕を見つめる君の瞼から数滴の涙が流れ落ちた。まだ君は泣き虫だった。

   僕は嬉しくても泣けない。でも、君がその分まで泣いてくれるから、僕は満足だった。君が僕を覚えていてくれたから、僕は満足だった。

 君へ。ありがとう、そして、おかえりなさい。


 大人の君と人形の僕

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